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GDBの要約

GDBのようなデバッガの目的は、 実行中のプログラムの内部において何が起こっているのか、 あるいは、 プログラムがクラッシュしたときに何をしていたのかを知ることができるようにすることにあります。 GDBは、 実際のバグを発見できるようにするために4つのこと (さらに、 これらを支援するために他のことも) 行います。 GDBを使ってCおよびC++で記述されたプログラムをデバッグすることができます。 詳細については、 See C and C++

Modula-2とChillのサポートはまだ部分的なものです。 Modula-2に関する情報については、 See Modula-2。 Chillに関するドキュメントはまだありません。

集合、 サブ範囲 (subrange)、 ファイル変数、 入れ子関数を使っているPascalプログラムをデバッグすることは、 現時点ではできません。 Pascalの構文を使って、 式の入力、 変数の値の表示、 およびそれに類することを実行することを、 GDBはサポートしていません。 GDBは、 Fortranで記述されたプログラムのデバッグに使うことができます。 しかし、 Fortranの構文を使って、 式の入力、 変数の値の表示、 およびそれに類する機能を実行することは、 まだサポートされていません。 変数によっては、 末尾にアンダースコアを付けて参照する必要のある場合があります。


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フリー・ソフトウェア

GDBはフリー・ソフトウェアであり、 GNU General Public License (GPL)により保護されています。 あなたは、 GPLによって、 ライセンスされたプログラムをコピーしたり改造したりする自由を与えられます。 しかし、コピーを入手した人は誰でも、 そのコピーとともに、 そのコピーを修正する自由を手に入れますし (つまりソース・コードを入手することができなければならないということです)、 また、 さらにそのコピーを配布する自由も手に入れます。 通常、 ソフトウェア会社は、 著作権によりユーザの自由を妨げます。 Free Software FoundationはGPLを使ってこれらの自由を保護します。

基本的には、 GPLは、 「あなたはこれらの自由を与えられるが、 これらの自由をほかの誰からも奪うことはできない」 と主張するライセンスです。


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GDBに貢献した人々

Richard Stallmanは、 GDB、 および、 その他の多くの GNU プログラムの最初の開発者です。 ほかにも多くの人々がGDBの開発に貢献してきました。 この節では、 主要な貢献者を紹介したいと思います。 フリー・ソフトウェアの素晴らしい点の1つは、 誰もがそれに貢献する自由があるということです。 残念ながら、 ここですべての人を紹介することはできません。 GDB ディストリビューションに含まれる ChangeLog というファイルにおおまかな紹介を載せてあります。

バージョン2.0よりもずっと前の変更内容は、いつのまにか紛失してしまいました。

お願い: このセクションへの追加は大歓迎です。 あなたやあなたの友人 (公平を期すため、あなたの敵も加えておきましょう) が不当にもこのリストから除外されているのであれば、 喜んで名前を付け加えます。

彼らの多大な労働が感謝されていないと思われないように、 最初に、 GDBの主要なリリースを通じて GDBの面倒を見てきた人々に特に感謝します。 その人々とは、 Jim Blandy(リリース4.18)、 Jason Molenda(リリース4.17)、 Stan Shebs(リリース4.14)、 Fred Fish(リリース4.16, 4.15, 4.13, 4.12, 4.11, 4.10, 4.9)、 Stu GrossmanとJohn Gilmore(リリース4.8, 4.7, 4.6, 4.5, 4.4)、 John Gilmore(リリース4.3, 4.2, 4.1, 4.0, 3.9)、 Jim Kingdon(リリース3.5, 3.4, 3.3)、 Randy Smith(リリース3.2, 3.1, 3.0) です。

Richard Stallmanは、様々な機会にPeter TerMaat、Chris Hanson、Richard Mlynarikの支援を受けながら、2.8までのリリースを担当しました。

Michael Tiemannは、 GDBにおけるGNU C++サポートのほとんどを開発してくれました。 C++のサポートについては、 Per Bothnerからも重要な貢献がありました。 James ClarkはGNU C++のデマングラ (demangler) を開発してくれました。 C++についての初期の仕事は Peter TerMaatによるものです (彼はまた、 リリース3.0までの一般的なアップデート作業の多くを担当してくれました)。 GDB 4は、 複数のオブジェクト・ファイル・フォーマットを調べるのに BFD サブルーチン・ライブラリを使用しています。 BFDは、 David V. Henkel-Wallace、 Rich Pixley、 Steve Chamberlain、 John Gilmoreによる共同プロジェクトです。

David Johnsonは、最初のCOFFサポートを開発してくれました。 Pace Willisonは最初のカプセル化されたCOFF (encapsulated COFF) のサポートを開発してくれました。

Harris Computer Systems社のBrent Bensonは、 DWARF 2のサポート部分を提供してくれました。

Adam de BoorとBradley DavisはISI Optimum Vのサポート部分を提供してくれました。 Per Bothner、引地信之、Alessandro Forinは、 MIPSのサポート部分を提供してくれました。 Jean-Daniel FeketeはSun 386iのサポート部分を提供してくれました。 Chris HansonはHP9000サポートを改善してくれました。 引地信之と長谷井智之は、 Sony/News OS 3のサポート部分を提供してくれました。 David JohnsonはEncore Umaxのサポート部分を提供してくれました。 Jyrki KuoppalaはAltos 3068のサポート部分を提供してくれました。 Jeff LawはHP PAとSOMのサポート部分を提供してくれました。 Keith PackardはNS32Kのサポート部分を提供してくれました。 Doug RabsonはAcorn Risc Machineのサポート部分を提供してくれました。 Bob RuskはHarris Nighthawk CX-UXのサポート部分を提供してくれました。 Chris SmithはConvexのサポート (および、Fortranデバッグのサポート) 部分を提供してくれました。 Jonathan StoneはPyramidのサポート部分を提供してくれました。 Michael TiemannはSPARCのサポート部分を提供してくれました。 Tim TuckerはGould NP1とGould Powernodeのサポート部分を提供してくれました。 Pace WillisonはIntel 386のサポート部分を提供してくれました。 Jay VosburghはSymmetryのサポート部分を提供してくれました。

Andreas SchwabはM68K Linuxのサポート部分を提供してくれました。

Rich SchaeferとPeter SchauerはSunOS共用ライブラリのサポートを手伝ってくれました。

Jay FenlasonとRoland McGrathは、 GDBとGASがいくつかのマシン命令セットに関して共通の認識を持つようにしてくれました。

Patrick Duval、Ted Goldstein、Vikram Koka、Glenn Engelはリモート・デバッグ機能の開発を手伝ってくれました。 Intel社、Wind River Systems 社、AMD社、ARM社はそれぞれ、 i960、VxWorks、A29K UDI、RDIターゲット用のリモート・デバッグ・モジュールを提供してくれました。

Brian Foxは、コマンドライン編集やコマンドライン・ヒストリを提供する readlineライブラリの開発者です。

SUNY BuffaloのAndrew Beersは言語切り替えのソース・コード とModula-2サポート を開発し、このマニュアルのプログラミング言語関連 (Languages) の章を提供してくれました。

Fred FishはUnix System Vr4サポートのほとんどを開発してくれました。 彼はまた、 C++のオーバーロードされたシンボルを扱えるようコマンド補完機能を拡張してくれました。

Hitachi America, Ltd.は、 H8/300プロセッサ、 H8/500プロセッサ、 および、 Super-Hプロセッサのサポートを後援してくれました。

NECは、 v850プロセッサ、 Vr4xxxプロセッサ、 および、 Vr5xxxプロセッサのサポートを後援してくれました。

Mitsubishi(三菱)は、 D10Vプロセッサ、 D30Vプロセッサ、 および、 M32R/Dプロセッサのサポートを後援してくれました。

Toshiba(東芝)は、 TX39 Mipsプロセッサのサポートを後援してくれました。

Matsushita(松下)は、 MN10200プロセッサとMN10300プロセッサのサポートを後援してくれました。

Fujitsu(富士通)は、 SPARCliteプロセッサとFR30プロセッサのサポートを後援してくれました。

Kung Hsu、Jeff Law、Rick Sladkeyはハードウェア・ウォッチポイントのサポートを追加してくれました。

Michael Snyderはトレースポイントのサポートを追加してくれました。

Stu Grossmanはgdbserverを開発してくれました。

Jim Kingdon、Peter Schauer、Ian Taylor、Stu GrossmanはGDB全体にわたって、 ほとんど数えることができないほどのバグ・フィックスとソース・コードの整理を行ってくれました。

Hewlett-Packard社のBen Krepp、 Richard Title、 John Bishop、 Susan Macchia、 Kathy Mann、 Satish Pai、 India Paul、 Steve Rehrauer、 Elena Zannoniは、 PA-RISC 2.0アーキテクチャ、 HP-UX 10.20、10.30、11.0(narrow mode)、 HPによるカーネル・スレッドの実装、 HP aC++コンパイラ、 および、 端末ユーザ・インターフェイスの各サポート部分を提供してくれました。 また、 このマニュアルの中のHP固有の情報は、 Kim Haaseにより提供されたものです。

Cygnus Solutions社は、 1991年以降、 GDBの保守作業とGDBの多くの開発作業を後援しています。 フルタイムでGDBに関わる仕事をしたCygnusのエンジニアは、 Mark Alexander、 Jim Blandy、 Per Bothner、 Edith Epstein、 Chris Faylor、 Fred Fish、 Martin Hunt、 Jim Ingham、 John Gilmore、 Stu Grossman、 Kung Hsu、 Jim Kingdon、 John Metzler、 Fernando Nasser、 Geoffrey Noer、 Dawn Perchik、 Rich Pixley、 Zdenek Radouch、 Keith Seitz、 Stan Shebs、 David Taylor、 Elena Zannoniです。 さらに、 Dave Brolley、 Ian Carmichael、 Steve Chamberlain、 Nick Clifton、 JT Conklin、 Stan Cox、 DJ Delorie、 Ulrich Drepper、 Frank Eigler、 Doug Evans、 Sean Fagan、 David Henkel-Wallace、 Richard Henderson、 Jeff Holcomb、 Jeff Law、 Jim Lemke、 Tom Lord、 Bob Manson、 Michael Meissner、 Jason Merrill、 Catherine Moore、 Drew Moseley、 Ken Raeburn、 Gavin Romig-Koch、 Rob Savoye、 Jamie Smith、 Mike Stump、 Ian Taylor、 Angela Thomas、 Michael Tiemann、 Tom Tromey、 Ron Unrau、 Jim Wilson、 David Zuhnは、 大小様々な貢献をしてくれました。


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GDBセッションのサンプル

その気になれば、 このマニュアルを使ってGDBのすべてを学習することももちろん可能ですが、 GDBを使い始めるには、 いくつかのコマンドを知っていれば十分です。 本章では、そのようなコマンドについて説明します。

汎用的なマクロ・プロセッサであるGNU m4には、 かつて、 まだ正式なバージョンがリリースされる以前に、 次のような不具合がありました。 引用を表わす文字列をデフォルトとは異なるものに変更すると、 あるマクロ定義の内部に入れ子状態になっている他のマクロ定義を取り出すために使われるコマンドが、 正しく動作しなくなることがある、 という不具合です。 以下の短いm4セッションでは、 0000に展開されるマクロfooを定義しています。 さらに、 m4の組み込みコマンドdefnを使って、 マクロbarに同一の定義を与えています。 ところが、 引用の開始文字列を<QUOTE>に、 引用の終了文字列を<UNQUOTE>にそれぞれ変更すると、 全く同一の手順で新しい同義語bazを定義しようとしても、 うまくいかないのです。

$ cd gnu/m4
$ ./m4
define(foo,0000)

foo
0000
define(bar,defn(`foo'))

bar
0000
changequote(<QUOTE>,<UNQUOTE>)

define(baz,defn(<QUOTE>foo<UNQUOTE>))
baz
C-d
m4: End of input: 0: fatal error: EOF in string

ここでGDBを使って、 何が起こっているのか調べてみましょう。

$ gdb m4
GDB is free software and you are welcome to distribute copies
 of it under certain conditions; type "show copying" to see
 the conditions.
There is absolutely no warranty for GDB; type "show warranty"
 for details.

GDB 4.18, Copyright 1999 Free Software Foundation, Inc...
(gdb)
GDBは、 必要なときに他のシンボルを見つけるのに最低限必要となるシンボル情報しか読み込みません。 その結果、 最初のプロンプトが表示されるまでの時間が極めて短いのです。 ここで、 出力情報がこのマニュアルの紙幅に収まるようにするために、 GDBに対して表示幅を通常よりも狭くするよう指示を出してみましょう。
(gdb) set width 70

m4の組み込みコマンドであるchangequoteがどのように動作するのかを調べてみる必要があります。 ソースを見ると、 関連するサブルーチンがm4_changequoteであることがわかります。 そこで、 GDBのbreakコマンドでブレイクポイントを設定してみます。

(gdb) break m4_changequote
Breakpoint 1 at 0x62f4: file builtin.c, line 879.

runコマンドを使って、 GDBの管理下でm4を走らせます。 m4_changequoteサブルーチンに到達するまでは、 プログラムは通常どおりの動作をします。

(gdb) run
Starting program: /work/Editorial/gdb/gnu/m4/m4
define(foo,0000)

foo
0000

ブレイクポイントでプログラムを停止させるためにchangequoteを実行すると、 GDBはm4の実行を停止し、 停止した箇所のコンテキスト情報を表示します。

changequote(<QUOTE>,<UNQUOTE>)

Breakpoint 1, m4_changequote (argc=3, argv=0x33c70)
    at builtin.c:879
879         if (bad_argc(TOKEN_DATA_TEXT(argv[0]),argc,1,3))

次にnnext)コマンドを実行すると、 現在停止している関数の中で1行だけ処理が実行されます。

(gdb) n
882         set_quotes((argc >= 2) ? TOKEN_DATA_TEXT(argv[1])\
 : nil,

set_quotesというのは、 いわくありげなサブルーチンです。 nextコマンドの代わりにsstep)コマンドを使うことで、 このサブルーチンの中に入ることができます。 stepコマンドは、 それがどのサブルーチンの中にあるかということにかかわりなく、 次の1行に移動します。 この場合、 次の1行はset_quotesの中ですから、 そこへ移動することになります。

(gdb) s
set_quotes (lq=0x34c78 "<QUOTE>", rq=0x34c88 "<UNQUOTE>")
    at input.c:530
530         if (lquote != def_lquote)

m4がその中で現在停止しているサブルーチン (および、そのサブルーチンへの引数) が表示されています。 これをスタック・フレーム表示と呼びます。 それは、 スタックの状態を要約した情報を表示しています。 backtraceコマンド (あるいは、 btと省略することもできます) を使って、 現在、 スタック全体の中のどこにいるかを知ることもできます。 backtraceコマンドは、 アクティブなサブルーチンのスタック・フレームを表示します。

(gdb) bt
#0  set_quotes (lq=0x34c78 "<QUOTE>", rq=0x34c88 "<UNQUOTE>")
    at input.c:530
#1  0x6344 in m4_changequote (argc=3, argv=0x33c70)
    at builtin.c:882
#2  0x8174 in expand_macro (sym=0x33320) at macro.c:242
#3  0x7a88 in expand_token (obs=0x0, t=209696, td=0xf7fffa30)
    at macro.c:71
#4  0x79dc in expand_input () at macro.c:40
#5  0x2930 in main (argc=0, argv=0xf7fffb20) at m4.c:195

次に、2、3行先に進んで、 何が起こっているのかを見てみましょう。 最初の2回は、 sコマンドを使います。 続く2回は、 xstrdupサブルーチンの中に入ってしまうのを防ぐために、 nコマンドを使います。

(gdb) s
0x3b5c  532         if (rquote != def_rquote)
(gdb) s
0x3b80  535         lquote = (lq == nil || *lq == '\0') ?  \
def_lquote : xstrdup(lq);
(gdb) n
536         rquote = (rq == nil || *rq == '\0') ? def_rquote\
 : xstrdup(rq);
(gdb) n
538         len_lquote = strlen(rquote);

最後に表示された行は、少し妙な感じがします。 2つの変数lquoterquoteを調べて、 本当にそれが、 新たに指定された引用開始文字列、 引用終了文字列であるかどうか確認することができます。 値を調べるにはpprint)コマンドを使用します。

(gdb) p lquote
$1 = 0x35d40 "<QUOTE>"
(gdb) p rquote
$2 = 0x35d50 "<UNQUOTE>"

lquoterquoteは確かに引用開始文字列、 引用終了文字列のようです。 前後関係を調べるには、 llist)コマンドを使って、 現在停止している行を中心にその前後10行を表示します。

(gdb) l
533             xfree(rquote);
534
535         lquote = (lq == nil || *lq == '\0') ? def_lquote\
 : xstrdup (lq);
536         rquote = (rq == nil || *rq == '\0') ? def_rquote\
 : xstrdup (rq);
537
538         len_lquote = strlen(rquote);
539         len_rquote = strlen(lquote);
540     }
541
542     void

len_lquotelen_rquoteに値を設定している行を実行させてから、 それらの値を調べてみましょう。

(gdb) n
539         len_rquote = strlen(lquote);
(gdb) n
540     }
(gdb) p len_lquote
$3 = 9
(gdb) p len_rquote
$4 = 7

len_lquotelen_rquoteが、 それぞれlquoterquoteの長さであるとすると、 ここに表示されている値は明らかに誤りです。 pコマンドを使って、 正しい値を設定することができます。 pコマンドによって任意の式の値を表示することができますが、 ここでいう「式」には、 サブルーチンの呼び出しや、 値の割り当ても含まれます。

(gdb) p len_lquote=strlen(lquote)
$5 = 7
(gdb) p len_rquote=strlen(rquote)
$6 = 9

新しい引用文字列をセットした状態で、 m4の組み込みコマンドdefnを使用しようとすると発生する問題を修正するには、 これだけで十分でしょうか? ccontinue)コマンドを使えば、 m4に処理を継続させて、 実際に問題を発生させていた例を実行することができます。

(gdb) c
Continuing.

define(baz,defn(<QUOTE>foo<UNQUOTE>))

baz
0000

今度はうまくいきました。 新たにセットされた引用文字列は、 デフォルトの引用文字列と同じように機能しました。 問題の原因は、 プログラム内の2箇所のタイプ・ミスで、 長さの設定が正しく行われていないことにあったようです。 EOFを入力して、 m4を終了させましょう。

C-d
Program exited normally.

Program exited normally.というメッセージは、 GDBが出力したもので、 m4の実行が終了したことを意味しています。 GDBの quitコマンドで、 GDBセッションを終了することができます。

(gdb) quit


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GDBの起動・終了

本章では、 GDBの起動方法、 終了方法を説明します。 基本は、 以下の2つです。


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GDBの起動

gdbというプログラムを実行することで、 GDBが起動されます。 ひとたび起動されると、 GDBは終了を指示されるまで、 端末からのコマンド入力を受け付けます。

あるいは、 最初からGDBのデバッグ環境を指定するために、 様々な引数やオプションを指定して gdbプログラムを実行することもできます。

ここで説明するコマンドライン・オプションは、 様々な状況に対応するために設計されたものです。 環境によっては、 ここで説明するオプションのいくつかは、 事実上使用できない場合もあります。 GDBの最も基本的な起動方法は、 デバッグされる実行プログラムの名前を引数に指定することです。

gdb program

起動時に、 実行プログラム名とともに、 コア・ファイルの名前を指定することもできます。

gdb program core

あるいは、 既に実行中のプロセスをデバッグする場合には、 そのプロセスIDを第2引数に指定することもできます。

gdb program 1234

ここでは、 GDBはプロセスID 1234のプロセスにアタッチします (ただし、 1234という名前のファイルが存在しないというのが条件です。 GDBは、 まずコア・ファイルの存在を確認します)。

このような第2引数の利用が可能であるためには、 かなり完成されたオペレーティング・システムが必要になります。 ボード・コンピュータに接続して、 リモート・デバッガとしてGDBを使用する場合には、 そもそも「プロセス」という概念がないかもしれませんし、 多くの場合、 コア・ダンプというものもないでしょう。

gdbを起動すると、 GDBの無保証性を説明する文章が表示されますが、 -silentオプションを指定することで、 これを表示しないようにすることもできます。

gdb -silent

コマンドライン・オプションを指定することで、 GDBの起動方法をさらに制御することができます。 GDB自身に、 使用可能なオプションを表示させることができます。

gdb -help

のようにgdbプログラムを実行することで、 使用可能なオプションがすべて、 その使用方法についての簡単な説明付きで表示されます (短縮して、 gdb -hという形で実行しても同じ結果が得られます)。

ユーザの指定したすべてのオプションと引数は、 順番に処理されます。 -xオプションが指定されている場合は特別で、 順序の違いに意味がでてきます。


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ファイルの選択

起動されたGDBは、 指定された引数のうちオプション以外のものは、 実行ファイル名およびコア・ファイル名 (あるいはプロセスID) であると解釈します。 これは、 -seオプションと-cオプションが指定されたのと同じことです (GDBは、 対応するオプション・フラグを持たない最初の引数を-seオプション付きと同等とみなし、 同じく対応するオプション・フラグを持たない第2の引数があれば、 これを-cオプション付きと同等とみなします)。

多くのオプションには、 完全形と短縮形があります。 以下の一覧では、 その両方を示します。 オプション名は、 他のオプションと区別がつけば、 最後まで記述しなくても、 GDBによって正しく認識されます (オプション名には-ではなく--を使うことも可能ですが、 ここでは一般的な慣例にしたがうこととします)。

-symbols file
-s file
fileで指定されるファイルからシンボル・テーブルを読み込みます。
-exec file
-e file
可能であれば、 fileで指定されるファイルを、 実行ファイルとして使います。 また、 このファイルを、 コア・ダンプとともにデータを解析するために使います。
-se file
fileで指定されるファイルからシンボル・テーブルを読み込み、 かつ、 このファイルを実行ファイルとして使います。
-core file
-c file
fileで指定されるファイルを解析すべきコア・ダンプとして使います。
-c number
numberで指定されるプロセスIDを持つプロセスに接続します。 これは、 attachコマンドを実行するのと同等です (ただし、 numberで指定される名前のコア・ダンプ形式のファイルが存在する場合は、 そのファイルをコア・ダンプとして読み込みます)。
-command file
-x file
fileで指定されるファイル内に記述されたGDBコマンドを実行します。 See Command files
-directory directory
-d directory
ソース・ファイルを検索するパスにdirectoryで指定されるディレクトリを追加します。
-m
-mapped
注意: このオプションは、 すべてのシステムでサポートされているわけではない、 オペレーティング・システムのある機能に依存しています。
システム上で、 mmapシステム・コールによるファイルのメモリへのマッピングが使用可能である場合、 このオプションを使うことで、 プログラムのシンボル情報を再利用可能なファイルとしてカレント・ディレクトリに書き出させることができます。 仮にデバッグ中のプログラム名が/tmp/fredであるとすると、 マップされたシンボル・ファイルは./fred.symsとなります。 この後のGDBデバッグ・セッションは、 このファイルの存在を検出し、 そこから迅速にシンボル情報をマップします。 この場合、 実行プログラムからシンボル情報を読み込むことはありません。

.symsファイルは、 GDBが実行されるホスト・マシンに固有のものです。 このファイルは、 内部のGDBシンボル・テーブルのイメージをそのまま保存したものです。 これを、 複数のホスト・プラットフォーム上において、 共有することはできません。

-r
-readnow
シンボル・ファイル内のシンボル・テーブル全体をただちに読み込みます。 デフォルトの動作では、 シンボル情報は必要になるたびに徐々に読み込まれます。 このオプションを使うと起動までに時間がかかるようになりますが、 その後の処理は速くなります。

-mappedオプションと-readnowオプションは、 完全なシンボル情報を含む.symsファイルを作成するために、 通常は一緒に指定されます (.symsファイルに関する詳細については、 See Commands to specify files)。 後に使用する目的で.symsを作成するだけで、 それ以外には何もしないようにするためのGDBの単純な起動方法は、 以下のとおりです。

	gdb -batch -nx -mapped -readnow programname


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モードの選択

GDBを様々なモードで実行することが可能です。 例えば、 batchモードやquietモードなどがあります。
-nx
-n
初期化ファイルに記述されたコマンドを実行しません (通常、 初期化ファイルは.gdbinitという名前です。 ただし、 PC上ではgdb.iniとなります)。 通常は、 すべてのコマンド・オプションと引数が処理された後に、 初期化ファイル内のコマンドが実行されます。 See Command files
-quiet
-q
紹介メッセージおよびコピーライト・メッセージを表示しません。 これらのメッセージは、 batchモードでも表示されません。
-batch
batchモードで実行されます。 -xオプションで指定されたすべてのコマンド・ファイルを処理した後、 終了コード0で終了します (-nオプションによって禁止されていなければ、 初期化ファイル内に記述されているすべてのコマンドも実行されます)。 コマンド・ファイルに記述されたGDBコマンドの実行中にエラーが発生した場合には、 0以外の終了コードで終了します。

batchモードはGDBをフィルタとして実行する場合に便利です。 例えば、 あるプログラムを別のコンピュータ上にダウンロードして実行する場合などです。 このような使い方の邪魔にならないよう、

Program exited normally.

というメッセージは、 batchモードでは表示されません (通常このメッセージは、 GDBの管理下で実行中のプログラムが終了するときに、 必ず表示されます)。

-cd directory
カレント・ディレクトリではなく、 directoryで指定されたディレクトリを作業ディレクトリとして、 GDBを実行します。
-fullname
-f
GNU EmacsがGDBをサブ・プロセスとして起動するとき、 このオプションを指定します。 このオプションは、 スタック・フレームを表示するときには、 必ず完全なファイル名と行番号を標準的な認識可能な書式で出力するようGDBに対して指示するものです (スタック・フレームは、 例えば、 プログラムの実行が停止されたときに必ず表示されます)。 認識可能な書式とは、 先頭に2つの\032文字、 続いてコロンで区切られたファイル名、 行番号、 桁位置、 最後に改行、 というものです。 Emacs-GDBインターフェイス・プログラムは、 フレームに対応するソース・コードを表示させる命令として、 2つの\032文字を使用します。
-b bps
GDBによってリモート・デバッグ用に使用されるシリアル・インターフェイスの回線速度 (ボーレートあるいはBPS) を設定します。
-tty device
プログラムの標準入力および標準出力としてdeviceを使用して実行します。


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GDBの終了

quit
GDBを終了するためには、 quitコマンド (省略形はq) を使用するか、 あるいは、 ファイルの終端文字 (通常はC-d) を入力します。 expressionを指定しない場合、 GDBは正常終了します。 expressionが指定された場合、 expressionの評価結果をエラー・コードとして終了します。

割り込み (多くの場合C-c) はGDBを終了させません。 割り込みは通常、 実行中のGDBコマンドを終了させ、 GDBのコマンド・レベルに復帰させます。 割り込み文字は、 いつ入力しても安全です。 というのは、 割り込みの発生が危険である間は、 GDBが割り込みの発生を抑止するからです。

アタッチされたプロセスやデバイスを制御するために GDBを使用していた場合、 detachコマンドでそれを解放することができます (see Debugging an already-running process)。


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シェル・コマンド

デバッグ・セッションの途中でシェル・コマンドを実行する必要がある場合、 GDBを終了したり一時停止させたりする必要はありません。 shellコマンドを使用することができます。

shell command string
command stringで指定されるコマンド文字列を実行するために標準シェルを起動します。 SHELL環境変数が設定されていれば、 その値が実行されるべきシェルを決定します。 SHELL環境変数が設定されていなければ、 GDBは/bin/shを実行します。

開発環境ではしばしばmakeユーティリティが必要とされます。 GDB内部でmakeユーティリティを使用する場合は、 shellコマンドを使用する必要はありません。

make make-args
make-argsで指定される引数とともにmakeプログラムを実行します。 これは、 shell make make-argsを実行するのと同じことです。


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GDB コマンド

GDBコマンドの名前は、 最初の2、 3文字に省略することができます。 ただし、 省略されたコマンド名があいまいであってはなりません。 さらに、 同じGDBコマンドを連続して使用する場合には、 <RET>キーを押すだけで十分です。 また、 <TAB>キーを押すことで、 途中まで入力されたコマンド名を補完させることができます (複数の補完候補がある場合には、 その一覧を表示します)。


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コマンドの構文

GDBコマンドは1行で入力されます。 1行の長さには上限がありません。 行は、 コマンド名で始まり、 コマンド名によって意味が決まる引数がそれに続きます。 例えば、 stepコマンドはstepを実行する回数を引数に取ります。 例えば、 step 5のようになります。 stepコマンドは引数なしでも実行可能です。 コマンドによっては、 全く引数を受け付けないものもあります。 GDBコマンド名は省略可能です。 ただし、 省略された名前があいまいなものではあってはなりません。 省略形は、 それぞれのコマンドのドキュメント内に記載されています。 場合によっては、 あいまいな省略形も許されることがあります。 例えば、 sは、 文字sで始まるコマンドがほかにも存在するにもかかわらず、 stepコマンドの省略形として特別に定義されています。 ある省略形が使用可能か否かは、 それをhelpコマンドへの引数として使用することで判定可能です。 GDBへの入力として空行を与える (<RET>キーだけを押す) ことは、 1つ前に実行したコマンドを繰り返すということを意味します。 ただし、 いくつかのコマンド (例えば、runコマンド)は、 この方法で実行を繰り返すことはできません。 意図に反して再実行してしまうと問題を引き起こす可能性があるため、 繰り返し実行してほしくないようなコマンドの場合です。

listコマンドとxコマンドは、 <RET>キーにより繰り返し実行すると、 新たに引数が生成されて実行されるので、 前回実行されたときと全く同様の状態で繰り返し実行されるわけではありません。 こうすることで、 ソース・コードの内容やメモリの内容を容易に調べることができます。 GDBは、 別の用途でも<RET>キーを使用します。 moreユーティリティと同様の方法で、 長い出力を分割して表示する場合です (see Screen size)。 このような場合、 <RET>キーを余分に押してしまうことは往々にしてありえるので、 GDBはこのような表示方法を使用しているコマンドについては、 <RET>キーによる繰り返し実行を行いません。

テキストの中に#記号があると、 そこから行末まではコメントになります。 コメントの部分は実行されません。 これは、 特にコマンド・ファイルの中で便利です (see Command files)。


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コマンド名の補完

途中まで入力されたコマンド名は、 それがあいまいでなければ、 GDBが残りの部分を補完してくれます。 また、 いつでも、 コマンド名の補完候補の一覧を表示してくれます。 この機能は、 GDBコマンド名、 GDBサブ・コマンド名、 ユーザ・プログラムのシンボル名に対して有効です。 GDBに単語の残りの部分を補完させたい場合には、 <TAB>キーを押します。 補完候補が1つしか存在しない場合、 GDBは残りの部分を補完し、 ユーザがコマンドを (<RET>キーを押すことで) 完結させるのを待ちます。 例えば、 ユーザが以下のように入力したとしましょう。

(gdb) info bre <TAB>
GDBはbreakpointsという単語の残りの部分を補完します。 なぜなら、 infoコマンドのサブ・コマンドのうち、 breで始まるのはこの単語だけだからです。
(gdb) info breakpoints

この時点で、 ユーザは<RET>キーを押してinfo breakpointsコマンドを実行するか、 あるいはbreakpointsコマンドが実行したいコマンドではなかった場合には、 バックスペース・キーを押してこれを消去してから、 他の文字を入力することができます (最初からinfo breakpointsコマンドを実行するつもりであれば、 コマンド名補完機能ではなくコマンド名の省略形を利用して、 info breと入力した後、 ただちに<RET>キーを押してもいいでしょう)。

<TAB>キーが押されたときに、 2つ以上の補完候補が存在する場合、 GDBはベル音を鳴らします。 さらにいくつか文字を入力してから補完を再度試みることも可能ですし、 単に続けて<TAB>キーを押すことも可能です。 後者の場合、 GDBは補完候補の全一覧を表示します。 例えば、 make_で始まる名前を持つサブルーチンにブレイクポイントを設定したいような場合に、 b make_まで入力して<TAB>キーを入力したところベル音が鳴ったとしましょう。 ここで続けて<TAB>キーを入力すると、 プログラム内のmake_で始まるすべてのサブルーチン名が表示されます。 例えば、 以下のように入力したとします。

(gdb) b make_ <TAB>

ここでGDBはベル音を鳴らします。 もう一度<TAB>キーを入力すると、 以下のように表示されます。

make_a_section_from_file     make_environ
make_abs_section             make_function_type
make_blockvector             make_pointer_type
make_cleanup                 make_reference_type
make_command                 make_symbol_completion_list
(gdb) b make_

補完候補を表示した後、 ユーザが続きを入力できるよう、 GDBは途中まで入力された文字列 (ここではb make_) を再表示します。

最初から補完候補の一覧を表示したいのであれば、 <TAB>キーを2回押す代わりにM-?を入力することもできます。 ここで、 M-?というのは<META> ?を意味します。 これを入力するには、 キーボード上に<META>シフト・キーとして指定されたキーがあれば、 それを押しながら?を入力します。 <META>シフト・キーがない場合には、 <ESC>キーを押した後、 ?を入力します。

ときには、 入力したい文字列が、 論理的には『単語』であっても、 GDBが通常は単語の一部に含めない括弧のような文字を含む場合があります。 このような場合に単語の補完機能を使用するためには、 GDBコマンド内において、 そのような単語を' (単一引用符) で囲みます。

このようなことが必要になる可能性が最も高いのは、 C++関数名を入力するときでしょう。 これは、 C++が関数のオーバーローディング (引数の型の違いによって識別される、 同一の名前を持つ関数の複数の定義) をサポートしているからです。 例えば、 関数nameにブレイクポイントを設定する場合、 それがint型のパラメータを取るname(int)なのか、 それともfloat型のパラメータを取るname(float)なのかをはっきりさせる必要があります。 このような場合に単語の補完機能を使用するには、 単一引用符'を関数名の前に入力します。 こうすることによって、 <TAB>キーまたはM-?キーが押されて単語補完が要求されたときに、 補完候補の決定には通常よりも多くのことを検討する必要のあることがGDBに通知されます。

(gdb) b 'bubble( <M-?>
bubble(double,double)    bubble(int,int)
(gdb) b 'bubble(

場合によっては、 名前の補完をするには引用符を使用する必要があるということを、 GDBが自分で認識できることもあります。 このような場合、 ユーザが引用符を入力していなくても、 GDBが (可能な限り補完を行いつつ) 引用符を挿入してくれます。

(gdb) b bub <TAB>

GDBは入力された1行を以下のように変更し、
ベル音を鳴らします。 (gdb) b 'bubble(

一般的には、 オーバーロードされたシンボルに対して補完が要求された際に引数リストがまだ入力されていないと、 GDBは、 引用符が必要であると判断します (そして実際に挿入します)。

オーバーロードされた関数に関する情報については、 see C++ expressions。 コマンドset overload-resolution offを使用すれば、 オーバーロードの解決を無効化することができます。 see GDB features for C++


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ヘルプの表示

helpコマンドを使うことで、 GDBコマンドに関するヘルプ情報をGDB自身に表示させることができます。

help
h
helpコマンド (省略形はh) を引数なしで実行することで、 コマンドのクラス名の簡単な一覧を表示させることができます。
(gdb) help
List of classes of commands:

running -- Running the program
stack -- Examining the stack
data -- Examining data
breakpoints -- Making program stop at certain points
files -- Specifying and examining files
status -- Status inquiries
support -- Support facilities
user-defined -- User-defined commands
aliases -- Aliases of other commands
obscure -- Obscure features

Type "help" followed by a class name for a list of
commands in that class.
Type "help" followed by command name for full
documentation.
Command name abbreviations are allowed if unambiguous.
(gdb)

help class
一般的なクラス名を引数に指定することで、 そのクラスに属するコマンドの一覧を表示させることができます。 statusクラスを指定した場合の表示例を以下に示します。
(gdb) help status
Status inquiries.

List of commands:

show -- Generic command for showing things set
 with "set"
info -- Generic command for printing status

Type "help" followed by command name for full
documentation.
Command name abbreviations are allowed if unambiguous.
(gdb)

help command
helpの引数にコマンド名を指定することで、 そのコマンドの使用法に関する簡単な説明が表示されます。
complete args
complete argsコマンドにコマンド名の先頭の部分を指定すると、 コマンド名の補完候補の一覧を表示します。 argsには、 補完されるべきコマンド名の先頭の文字列を指定します。 例えば、
complete i

は、以下のような結果を表示します。

info
inspect
ignore

これは、 GNU Emacsでの使用を想定したものです。

helpコマンドに加えて、 GDBのinfoコマンドおよびshowコマンドを使用することで、 ユーザ・プログラムの状態やGDBの状態を問い合わせることができます。 どちらのコマンドも、 多くの観点からの問い合わせをサポートしています。 このマニュアルでは、 それぞれを適切と思われる箇所で紹介しています。 索引のinfoshowの部分に、 それぞれのサブ・コマンドの紹介されているページが示されています。 See Index

info
このコマンド (省略形はi) は、 ユーザ・プログラムの状態を表わす情報を表示するものです。 例えば、 info argsによってユーザ・プログラムに与えられた引数を、 info registersによって現在使用中のレジスタの一覧を、 info breakpointsによってユーザが設定したブレイクポイントの一覧を、 それぞれ表示することができます。 help infoによって、 infoコマンドのサブ・コマンドの完全な一覧が表示されます。
set
setコマンドによって、 ある式の評価結果を環境変数に割り当てることができます。 例えば、 GDBのプロンプト文字列を$記号に変更するには、 set prompt $を実行します。
show
infoコマンドとは異なり、 showコマンドはGDB自身の状態を表わす情報を表示するものです。 showコマンドで表示可能な状態はすべて、 対応するsetコマンドで変更可能です。 例えば、 数値の表示に使用する基数は set radixコマンドで制御できます。 現在どの基数が使用されているかを単に知るためには、 show radixコマンドを使用します。

変更可能なすべてのパラメータとそれらの現在の値を表示するためには、 showコマンドを引数なしで実行します。 また、 info setコマンドを使用することもできます。 どちらのコマンドも、 同じ情報を出力します。

以下に、 対応するsetコマンドを持たないという意味で例外的である、 3つのshowサブ・コマンドを示します。

show version
実行中のGDBのバージョンを表示します。 GDBに関する障害レポートには、 この情報を含める必要があります。 もしも異なるバージョンのGDBを複数使用しているのであれば、 ときには現在実行しているGDBのバージョンをはっきりさせたいこともあるでしょう。 GDBのバージョンが上がるにつれ、 新しいコマンドが導入され、 古いコマンドはサポートされなくなるかもしれません。 バージョン番号は、 GDBの起動の際にも表示されます。
show copying
GDBのコピー作成許可に関する情報が表示されます。
show warranty
GNUの『無保証 (NO WARRANTY)』声明文が表示されます。


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GDB配下でのプログラムの実行

プログラムをGDB配下で実行するには、 コンパイル時にデバッグ情報を生成する必要があります。 ユーザが選択した環境で、 必要に応じて引数を指定して、 GDBを起動することができます。 プログラムの入力元と出力先をリダイレクトすること、 既に実行中のプロセスをデバッグすること、 子プロセスを終了させることもできます。


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デバッグのためのコンパイル

プログラムを効率的にデバッグするためには、 そのプログラムのコンパイル時にデバッグ情報を生成する必要があります。 このデバッグ情報はオブジェクト・ファイルに格納されます。 この情報は、 個々の変数や関数の型、 ソース・コード内の行番号と実行形式コードのアドレスとの対応などを含みます。

デバッグ情報の生成を要求するには、 コンパイラの実行時に-gオプションを指定します。

多くのCコンパイラでは、 -gオプションと-Oオプションを同時に指定することができません。 このようなコンパイラでは、 デバッグ情報付きの最適化された実行ファイルを生成することができません。

GNUのCコンパイラであるGCCは、 -Oオプションの有無にかかわらず、 -gオプションが指定できます。 したがって、 最適化されたコードをデバッグすることが可能です。 プログラムをコンパイルするときには、 常に-gオプションを指定することをお勧めします。 自分のプログラムは正しいと思うかもしれませんが、 自分の幸運を信じて疑わないというのは無意味なことです。

-g -Oオプションを指定してコンパイルされたプログラムをデバッグするときには、 オプティマイザがコードを再調整していることを忘れないでください。 デバッガは、 実際に存在するコードの情報を表示します。 実行されるパスがソース・ファイルの記述と一致していなくても、 あまり驚かないでください。 これは極端な例ですが、 定義されているが実際には使われていない変数を、 GDBは認識しません。 なぜなら、 コンパイラの最適化処理により、 そのような変数は削除されるからです。

命令スケジューリング機能を持つマシンなどでは、 -gを指定してコンパイルされたプログラムでは正しく動作することが、 -g -Oを指定してコンパイルされたプログラムでは正しく動作しないということがあります。 -g -Oを指定してコンパイルされたプログラムのデバッグで何かおかしな点があれば、 -gだけを指定してコンパイルしてみてください。 これで問題が解決するようであれば、 (再現環境と一緒に) 障害として私たちに報告してください。

古いバージョンのGNU Cコンパイラは、 デバッグ情報の生成のためのオプションの1つとして -ggをサポートしていました。 現在のGDBはこのオプションをサポートしていません。 お手元のGNU Cコンパイラにこのオプションがあるようであれば、 それは使わないでください。


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ユーザ・プログラムの起動

run
r
GDB配下でユーザ・プログラムの実行を開始するにはrunコマンドを使用してください。 (VxWorks以外の環境では) 最初にプログラム名を指定する必要があります。 これには、 GDBへの引数を使用する方法 (see Getting In and Out of GDB) と、 fileコマンドまたはexec-fileコマンドを使用する方法 (see Commands to specify files) とがあります。

プロセスをサポートする環境でプログラムを実行している場合、 runコマンドは下位プロセスを生成し、 そのプロセスにプログラムを実行させます (プロセスをサポートしていない環境では、 runコマンドはプログラムの先頭アドレスにジャンプします)。

プログラムの実行は、 上位プロセスから受け取る情報によって影響されます。 GDBはこの情報を指定する手段を提供しています。 これは、 ユーザ・プログラムが起動されるに実行されていなければなりません (ユーザ・プログラムの実行後にその情報を変更することも可能ですが、 その変更結果は、 次にプログラムを実行したときに初めて有効になります)。 この情報は、 4つに分類することができます。

引数
ユーザ・プログラムに与える引数を、 runコマンドへの引数として指定します。 ターゲット上でシェルが使用可能であれば、 引数を表現するのに通常使用する手法 (例えば、 ワイルドカード拡張や変数による代替など) が利用できるよう、 シェルを経由して引数を渡します。 UNIXシステムでは、 SHELL環境変数によって、 使用されるシェルを選択することができます。 See Your program's arguments
環境
ユーザ・プログラムは通常、 GDBの環境を継承します。 GDBのset environmentコマンドと unset environmentコマンドを使用して、 ユーザ・プログラムの実行に影響する環境の一部を変更することができます。 See Your program's environment
作業ディレクトリ
ユーザ・プログラムはGDBの作業ディレクトリを継承します。 GDBの作業ディレクトリは、 GDBのcdコマンドで設定可能です。 See Your program's working directory
標準入力、標準出力
ユーザ・プログラムは通常、 GDBが標準入力、 標準出力として使用しているのと同一のデバイスを、 標準入力、 標準出力として使用します。 runコマンドのコマンド・ライン上で、 標準入力、 標準出力をリダイレクトすることも可能です。 また、 ttyコマンドによって別のデバイスを割り当てることも可能です。 See Your program's input and output

注意: 入出力のリダイレクトは機能しますが、 デバッグ中のプログラムの出力を、 パイプを使用して他のプログラムに渡すことはできません。 このようなことをすると、 GDBは誤って、 別のプログラムのデバッグを開始してしまうでしょう。

runコマンドを実行すると、 ユーザ・プログラムはすぐに実行を始めます。 プログラムを停止させる方法については、 See Stopping and continuing。 プログラムが停止すると、 printコマンドまたはcallコマンドを使用して、 プログラム内の関数を呼び出すことができます。 See Examining Data。 GDBが最後にシンボル情報を読み込んだ後に、 シンボル・ファイルの修正タイムスタンプが変更されている場合、 GDBはシンボル・テーブルを破棄し再読み込みを行います。 この場合、 GDBは、 その時点におけるブレイクポイントの設定を保持しようと試みます。


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ユーザ・プログラムの引数

ユーザ・プログラムへの引数は、 runコマンドへの引数によって指定可能です。 それはまずシェルに渡され、 ワイルドカードの展開やI/Oのリダイレクトの後、 プログラムに渡されます。 SHELL環境変数によって、 GDBの使用するシェルが指定されます。 SHELL環境変数が定義されていないと、 GDBは/bin/shを使用します。

引数を指定せずに runコマンドを実行すると、 前回runコマンドを実行したときの引数、 または、 set argsコマンドでセットされた引数が使用されます。

set args
ユーザ・プログラムが次に実行されるときに使用される引数を指定します。 set argsが引数なしで実行された場合、 runコマンドは、 ユーザ・プログラムを引数なしで実行します。 一度プログラムに引数を指定して実行すると、 次にプログラムを引数なしで実行する唯一の方法は、 runコマンドを実行する前に set argsコマンドを実行することです。
show args
ユーザ・プログラムが実行されるときに渡される引数を表示します。


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ユーザ・プログラムの環境

環境とは、 環境変数とその値の集合のことです。 環境変数は、 慣例として、 ユーザ名、 ユーザのホーム・ディレクトリ、 端末タイプ、 実行プログラムのサーチ・パスなどを記録します。 通常、 環境変数はシェル上で設定され、 ユーザの実行するすべてのプログラムによって継承されます。 デバッグ時には、 GDBを終了・再起動せずに環境を変更して、 ユーザ・プログラムを実行できると便利でしょう。

path directory
directoryで指定されるディレクトリを環境変数PATH (実行ファイルのサーチ・パス) の先頭に追加します。 これは、 GDBとユーザ・プログラムの両方に対して有効です。 : (コロン) またはスペースで区切られた複数のディレクトリを指定することもできます。 環境変数PATHの中に既にdirectoryが含まれている場合には、 directoryは環境変数PATHの先頭に移動されます。 これにより、 directoryはより早く検索されることになります。

文字列$cwdによって、 GDBがパスを検索する時点における作業ディレクトリを参照することができます。 . (ピリオド) を使用すると、 pathコマンドを実行したディレクトリを参照することになります。 directory引数に. (ピリオド) が含まれていると、 GDBはまずそれを (カレント・ディレクトリに) 置き換えてから、 サーチ・パスに追加します。

show paths
実行ファイルを検索するパスの一覧 (環境変数PATHの値)を表示します。
show environment [varname]
ユーザ・プログラム起動時に渡される環境変数varnameの値を表示します。 varnameが指定されない場合は、 プログラムに渡されるすべての環境変数の名前と値が表示されます。 environmentenvに省略可能です。
set environment varname [=] value
環境変数varnameの値としてvalueをセットします。 値の変更はユーザ・プログラムに対してのみ有効で、 GDBに対しては無効です。 valueには任意の文字列が指定可能です。 環境変数の値は単なる文字列であり、 その解釈はユーザ・プログラムに委ねられています。 valueは必須パラメータではありません。 省略された場合には、 変数には空文字列がセットされます。

例えば、 以下のコマンドは、 後にUNIXプログラムが実行されるときのユーザ名としてfooをセットします (=の前後のスペースは見やすくするためのもので、 実際には必要ありません)。

set env USER = foo

unset environment varname
ユーザ・プログラムに渡される環境から、 環境変数varnameを削除します。 これは、 set env varname =とは異なります。 unset environmentは、 環境変数の値として空文字列をセットするのではなく、 環境変数そのものを環境から削除します。

注意: GDBは、 環境変数SHELLにより指定されるシェル (環境変数SHELLが設定されていない場合には/bin/sh) を使用してプログラムを実行します。 SHELL環境変数の指定するシェルが初期化ファイルを実行するものである場合 (例えば、 C-shellの.cshrc、 BASHの.bashrc)、 初期化ファイルの中で設定された環境変数はユーザ・プログラムに影響を与えます。 環境変数の設定は、 .login.profileのように、 ユーザがシステム内に入るときに実行されるファイルに移したほうがよいでしょう。


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ユーザ・プログラムの作業ディレクトリ

runコマンドで実行されるユーザ・プログラムは、 実行時のGDBの作業ディレクトリを継承します。 GDBの作業ディレクトリは、 もともと親プロセス (通常はシェル) から継承したものですが、 cdコマンドによって、 GDBの中から新しい作業ディレクトリを指定することができます。 GDBの作業ディレクトリは、 GDBによって操作されるファイルを指定するコマンドに対して、 デフォルト・ディレクトリとして機能します。 See Commands to specify files

cd directory
GDBの作業ディレクトリをdirectoryにします。
pwd
GDBの作業ディレクトリを表示します。


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ユーザ・プログラムの入出力

GDB配下で実行されるプログラムは、 デフォルトでは、 GDBと同一の端末に対して入出力を行います。 GDBは、 ユーザとのやりとりのために、 端末モードをGDB用に変更します。 このとき、 ユーザ・プログラムが使用していた端末モードは記録され、 ユーザ・プログラムを継続実行すると、 そのモードに戻ります。
info terminal
ユーザ・プログラムが使用している端末モードに関してGDBが記録している情報を表示します。

runコマンドにおいてシェルのリダイレクト機能を使用することによって、 ユーザ・プログラムの入出力をリダイレクトすることが可能です。 例えば、

run > outfile

はユーザ・プログラムの実行を開始し、 その出力をファイルoutfileに書き込みます。

ユーザ・プログラムの入出力先を指定する別の方法に、 ttyコマンドがあります。 このコマンドはファイル名を引数として取り、 そのファイルを後に実行されるrunコマンドのデフォルトの入出力先とします。 このコマンドはまた、 後のrunコマンドにより生成される子プロセスを制御する端末を変更します。 例えば、

tty /dev/ttyb

は、 それ以降に実行されるrunコマンドによって起動されるプロセスの デフォルトの入出力先および制御端末を/dev/ttyb端末とします。

runコマンド実行時に明示的にリダイレクト先を指定することで、 ttyコマンドで指定された入出力装置を変更することができますが、 制御端末の設定は変更できません。

ttyコマンドを使用した場合も、 runコマンドで入力をリダイレクトした場合も、 ユーザ・プログラムの入力元だけが変更されます。 これらのコマンドを実行しても、 GDBの入力元は、ユーザの使用している端末のままです。


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既に実行中のプロセスのデバッグ

attach process-id
GDBの外で起動され、 既に実行中のプロセスにアタッチします (info filesコマンドで、 現在デバッグ対象となっているプログラムの情報が表示されます)。 このコマンドは、 プロセスIDを引数に取ります。 UNIXプロセスのプロセスIDを知るのに通常使用する方法は、 psユーティリティ、 または、 シェル・コマンドのjobs -lの実行です。

attachコマンドを実行後<RET>キーを押しても、 コマンドは再実行されません。

attachコマンドを使用するには、 プロセスをサポートする環境でユーザ・プログラムを実行する必要があります。 例えば、 オペレーティング・システムの存在しないボード・コンピュータのような環境で動作するプログラムに対して、 attachコマンドを使うことはできません。 さらに、 ユーザは、 プロセスに対してシグナルを送信する権利を持っている必要があります。

attachコマンドを使用すると、 デバッガは、 まずカレントな作業ディレクトリの中で、 プロセスにより実行されているプログラムを見つけようとします。 (プログラムが見つからなければ) 次に、 ソース・ファイルのサーチ・パス (see Specifying source directories) を使用して、 プログラムを見つけようとします。 fileコマンドを使用して、 プログラムをロードすることも可能です。 See Commands to Specify Files

指定されたプロセスをデバッグする準備が整った後に、 GDBが最初にすることは、 そのプロセスを停止することです。 runコマンドを使用してプロセスを起動した場合は、 通常使用可能なすべてのGDBコマンドを使用して、 アタッチされたプロセスの状態を調べたり変更したりすることができます。 ブレイクポイントの設定、 ステップ実行、 継続実行、 記憶域の内容の変更が可能です。 プロセスの実行を継続したいのであれば、 GDBがプロセスにアタッチした後に、 continueコマンドを使用することができます。

detach
アタッチされたプロセスのデバッグが終了した場合には、 detachコマンドを使用してそのプロセスをGDBの管理から解放することができます。 プロセスからディタッチしても、 そのプロセスは実行を継続します。 detachコマンド実行後は、 ディタッチされたプロセスと GDBは互いに完全に依存関係がなくなり、 attachコマンドによる別のプロセスへのアタッチや、 runコマンドによる別のプロセスの起動が可能になります。 detachコマンドを実行後<RET>キーを押しても、 detachコマンドは再実行されません。

プロセスがアタッチされている状態で、 GDBを終了したりrunコマンドを使用したりすると、 アタッチされたプロセスを終了させてしまいます。 デフォルトの状態では、 このようなことを実行しようとすると、 GDBが確認を求めてきます。 この確認処理を行うか否かは、 set confirmコマンドで設定可能です (see Optional warnings and messages)。


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子プロセスの終了

kill
GDB配下で実行しているユーザ・プログラムのプロセスを終了させます。

このコマンドは、 実行中のプロセスではなく、 コア・ダンプをデバッグしたいときに便利です。 GDBは、 ユーザ・プログラムの実行中は、 コア・ダンプ・ファイルを無視します。

いくつかのオペレーティング・システム上では、 GDBの管理下でブレイクポイントを設定されている状態のプログラムを、 GDBの外で実行することができません。 このような場合、 killコマンドを使用することで、デバッガの外でのプログラムの実行が可能になります。

killコマンドは、 プログラムを再コンパイル、 再リンクしたい場合にも便利です。 というのは、 多くのシステムでは、 プロセスとして実行中の実行ファイルを更新することはできないからです。 次にrunコマンドを実行したときに、 GDBは、 実行ファイルが変更されていることを認識し、 シンボル・テーブルを再度読み込みます (この際、その時点でのブレイクポイントの設定を維持しようと試みます)。


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プロセス情報

いくつかのオペレーティング・システムは、 /procと呼ばれる便利な機能を提供しています。 これは、 ファイル・システム関連のサブルーチンを使用して、 実行中プロセスのイメージを調べるのに使用することができます。 GDBが、 この機能を持つオペレーティング・システム用に構成されていれば、 info procコマンドを使用することで、 ユーザ・プログラムを実行しているプロセスに関するいくつかの情報を知ることができます。 info procは、 procfsをサポートするSVR4システム上でのみ機能します。

info proc
プロセスに関して入手可能な情報を要約して出力します。
info proc mappings
プログラムがアクセスすることのできるアドレス範囲を表示します。 出力情報には、 それぞれのアドレス範囲に対してユーザ・プログラムが持つ読み込み権、 書き込み権、 実行権の情報が含まれます。
info proc times
ユーザ・プログラムおよびその子 (プロセス) の起動時刻、 ユーザ・レベルのCPU消費時間、 システム・レベルのCPU消費時間を表示します。
info proc id
ユーザ・プログラムに関連のあるプロセスのID情報を表示します。 ユーザ・プログラムのプロセスID、 親(プロセス)のプロセスID、 プロセス・グループID、 セッションIDを出力します。
info proc status
プロセスの状態に関する一般的な情報を出力します。 プロセスが停止している場合は、 停止した理由、 (シグナルを受信した場合には) 受信したシグナルが出力情報に含まれます。
info proc all
プロセスに関する上記の情報をすべて表示します。


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マルチスレッド・プログラムのデバッグ

HP-UXやSolarisのようなオペレーティング・システムにおいては、 1つのプログラムが複数のスレッドを実行することができます。 「スレッド」の正確な意味は、 オペレーティング・システムによって異なります。 しかし、 一般的には、 1つのアドレス空間を共有するという点を除けば、 プログラム内のマルチスレッドは、 マルチプロセスと類似しています (アドレス空間の共有とは、 複数のスレッドが同一の変数の値を参照したり変更したりすることが可能であるということです)。 その一方で、 個々のスレッドは自分用のレジスタ、 実行スタック、 そしておそらくはプライベート・メモリを持ちます。 GDBは、 マルチスレッド・プログラムのデバッグ用に、 以下のような便利な機能を提供しています。

注意: これらの機能は、 スレッドをサポートするオペレーティング・システム用に構成された すべてのGDBで使用可能なわけではありません。 GDBがスレッドをサポートしていない環境では、 これらのコマンドは無効です。 例えば、 スレッドをサポートしていないシステム上で GDBのinfo threadsコマンドを実行しても何も表示されませんし、 threadコマンドの実行は常に拒絶されます。
(gdb) info threads
(gdb) thread 1
Thread ID 1 not known.  Use the "info threads" command to
see the IDs of currently known threads.
GDBのスレッド・デバッグ機能により、 ユーザ・プログラムの実行中に、 すべてのスレッドを観察することができます。 ただし、 GDBに制御権のある状態では、 特定の1つのスレッドだけがデバッグの対象となります。 このスレッドは、 カレント・スレッドと呼ばれます。 デバッグ用のコマンドは、 カレント・スレッドの立場から見たプログラムの情報を表示します。

ユーザ・プログラム内部において新しいスレッドの存在を検出すると、 GDBは、 [New systag]という形式で、 ターゲット・システム上におけるこのスレッドのIDを表示します。 ここでsystagとはスレッドのIDで、 その形式はシステムによって異なります。 例えば、 LynxOS上では、 GDBが新しいスレッドを検出すると、

[New process 35 thread 27]

のように表示されます。 一方、 SGIのシステム上では、 systagは単にprocess 368のような形式で、 これ以外の情報は含まれません。 GDBは、 ユーザ・プログラム内の個々のスレッドに対して、 デバッグ用の整数値のスレッド番号を独自に割り当てます。

info threads
その時点においてユーザ・プログラム中に存在するすべてのスレッドに関する要約を表示します。 個々のスレッドに関して、 以下の情報が (列挙された順に) 表示されます。

  1. GDBにより割り当てられたスレッド番号
  2. ターゲット・システムのスレッドID(systag
  3. スレッドのカレントなスタック・フレームの要約
GDBにより割り当てられたスレッド番号の左のアスタリスク*は、 そのスレッドがカレント・スレッドであることを意味しています。

以下に例を示します。

(gdb) info threads
  3 process 35 thread 27  0x34e5 in sigpause ()
  2 process 35 thread 23  0x34e5 in sigpause ()
* 1 process 35 thread 13  main (argc=1, argv=0x7ffffff8)
    at threadtest.c:68
thread threadno
スレッド番号threadnoを割り当てられたスレッドをカレント・スレッドとします。 このコマンドの引数threadnoは、 info threadsコマンドの出力の最初のフィールドに表示される、 GDB内部のスレッド番号です。 GDBは、 指定されたスレッドのシステム上のIDとカレントなスタック・フレームの要約を表示します。
(gdb) thread 2
[Switching to process 35 thread 23]
0x34e5 in sigpause ()

[New ...]メッセージと同様、 Switching toの後ろに表示される情報の形式は、 そのシステムにおけるスレッドの識別方法に依存します。

thread apply [threadno] [all] args
thread applyコマンドにより、 1つのコマンドを1つ以上のスレッドに対して実行することができます。 実行対象となるスレッドのスレッド番号を、 引数threadnoに指定します。 threadnoは、 info threadsコマンドの出力の最初のフィールドに表示される、 GDB内部のスレッド番号です。 すべてのスレッドに対してコマンドを実行するには、 thread apply all argsコマンドを使用してください。
GDBがユーザ・プログラムを停止させるとき、 その理由がブレイクポイントであれシグナルの受信であれ、 ブレイクポイントに到達したスレッド、 または、 シグナルを受信したスレッドが自動的に選択されます。 GDBは、 [Switching to systag]という形式のメッセージでそのスレッドを示し、 コンテキスト切り替えの発生に注意を促します。

複数スレッドを持つプログラムの停止時や起動時のGDBの動作の詳細については、 See Stopping and starting multi-thread programs

また、 複数スレッドを持つプログラムの中におけるウォッチポイントについては、 See Setting watchpoints


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マルチプロセス・プログラムのデバッグ

fork関数を使用して新たにプロセスを生成するプログラムのデバッグに関しては、 GDBは特別な機能を提供していません。 プログラムがforkを実行するとき、 GDB は引き続き親プロセスのデバッグを継続し、 子プロセスは妨げられることなく実行を続けます。 子プロセスが実行するコードにブレイクポイントを設定してあると、 子プロセスはSIGTRAPシグナルを受信し、 (そのシグナルをキャッチする処理がなければ) 子プロセスは終了してしまいます。

しかし、 子プロセスをデバッグしたい場合には、 それほど困難ではない回避策があります。 forkの呼び出し後に子プロセスが実行するソース・コードの中に、 sleep関数の呼び出しを加えてください。 GDBに子プロセスのデバッグをさせる理由がないときに遅延が発生することのないように、 特定の環境変数が設定されているときのみ、 あるいは、 特定のファイルが存在するときのみ、 sleep関数を呼び出すようにするとよいでしょう。 子プロセスがsleepを呼び出している間に、 psユーティリティを使用して子プロセスのプロセスIDを獲得します。 次に、 GDBに対して (親プロセスもデバッグするのであれば、 新たにGDBを起動して、 そのGDBに対して)、 子プロセスにアタッチするよう指示してください (see Attach)。 これ以降は、 通常の方法でプロセスにアタッチした場合と全く同様に、 子プロセスのデバッグが可能です。


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停止と継続

デバッガを使用する主な目的は、 プログラムが終了してしまう前に停止させたり、 問題のあるプログラムを調査して何が悪いのかを調べたりすることにあります。 GDB内部においてプログラムが停止する原因はいくつかあります。 例えば、 シグナルの受信、 ブレイクポイントへの到達、 stepコマンドのようなGDBコマンドの実行後の新しい行への到達などです。 プログラムが停止すると、 変数の値の調査や設定、 新しいブレイクポイントの設定、 既存のブレイクポイントの削除などを行った後に、 プログラムの実行を継続することができます。 通常、 GDBが表示するメッセージは、 ユーザ・プログラムの状態について多くの情報を提供してくれます。 ユーザはいつでも明示的にこれらの情報を要求することができます。

info program
ユーザ・プログラムの状態に関する情報を表示します。 表示される情報は、 そのプログラムの実行状態 (実行中か否か)、 そのプログラムのプロセス、 プログラムが停止した理由です。


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ブレイクポイント、ウォッチポイント、キャッチポイント

ブレイクポイントによって、 プログラム内のある特定の箇所に到達するたびに、 プログラムを停止することができます。 個々のブレイクポイントについて、 そのブレイクポイントにおいてプログラムを停止させるためには満足されなければならない、 より詳細な条件を設定することができます。 ブレイクポイントの設定は、 いくつかあるbreakコマンドのいずれかによって行います (see Setting breakpoints)。 行番号、 関数名、 プログラム内における正確なアドレスを指定することで、 プログラムのどこで停止するかを指定することができます。

HP-UX、 SunOS 4.x、 SVR4、 Alpha OSF/1上では、 実行開始前に共用ライブラリ内にブレイクポイントを設定することもできます。 HP-UXシステムでは、 ちょっとした制約があります。 プログラムによって直接呼び出されるのではない共用ライブラリ・ルーチン (例えば、 pthread_createの呼び出しにおいて、 引数として指定されるルーチン) にブレイクポイントをセットするためには、 そのプログラムの実行が開始されるまで待たなければなりません。

ウォッチポイントは、 ある式の値が変化したときにユーザ・プログラムを停止させる、 特別なブレイクポイントです。 ウォッチポイントは、 他のブレイクポイントと同じように管理することができますが、 設定だけは特別なコマンドで行います (see Setting watchpoints)。 有効化、 無効化、 および削除を行うときに使用する各コマンドは、 対象がブレイクポイントであってもウォッチポイントであっても同一です。

ブレイクポイントでGDBが停止するたびに、 常に自動的にユーザ・プログラム内のある値を表示させるようにすることができます。 See Automatic display

キャッチポイントは、 C++の例外の発生やライブラリのローディングのようなある種のイベントが発生したときに、 ユーザ・プログラムを停止させる、 また別の特殊なブレイクポイントです。 ウォッチポイントと同様、 キャッチポイントを設定するために使用する特別なコマンドがあります。 (see Setting catchpoints)。 しかし、 この点を除けば、 キャッチポイントを他のブレイクポイントと同様に管理することができます。 (ユーザ・プログラムがシグナルを受信したときに停止するようにするためには、 handleコマンドを使用します。 see Signals)。

ユーザが新規に作成した個々のブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントに対して、 GDBは番号を割り当てます。 この番号は1から始まる連続する整数値です。 ブレイクポイントの様々な側面を制御するコマンドの多くにおいて、 変更を加えたいブレイクポイントを指定するのにこの番号を使用します。 個々のブレイクポイントを有効化無効化することができます。 無効化されたブレイクポイントは、 再度有効化されるまで、 ユーザ・プログラムの実行に影響を与えません。


Node:Set Breaks, Next:, Previous:Breakpoints, Up:Breakpoints

ブレイクポイントの設定

ブレイクポイントは、 breakコマンド (省略形はb) によって設定されます。 デバッガのコンビニエンス変数$bpnumに、 最後に設定されたブレイクポイントの番号が記録されます。 コンビニエンス変数の使用方法については、 See Convenience variables

ブレイクポイントの設定箇所を指定する方法はいくつかあります。

break function
関数functionのエントリにブレイクポイントを設定します。 ソース言語が (例えばC++のように) シンボルのオーバーロード機能を持つ場合、 functionは、 プログラムを停止させる可能性を持つ1つ以上の箇所を指すことがあります。 このような状況に関する説明については、 See Breakpoint menus
break +offset
break -offset
その時点において選択されているフレームにおいて実行が停止している箇所から、 指定された行数だけ先または手前にブレイクポイントを設定します。
break linenum
カレントなソース・ファイル内のlinenumで指定される行番号を持つ行に、 ブレイクポイントを設定します。 ここで「カレントなソース・ファイル」とは、 最後にソース・コードが表示されたファイルを指します。 このブレイクポイントは、 その行に対応するコードが実行される直前に、 ユーザ・プログラムを停止させます。
break filename:linenum
filenameで指定されるソース・ファイルのlinenumで指定される番号の行に、 ブレイクポイントを設定します。
break filename:function
filenameで指定されるソース・ファイル内のfunctionで指定される関数エントリにブレイクポイントを設定します。 同じ名前の関数が複数のファイルに存在する場合以外は、 ファイル名と関数名を同時に指定する必要はありません。
break *address
addressで指定されるアドレスにブレイクポイントを設定します。 これは、 プログラムの中の、 デバッグ情報やソース・ファイルが手に入らない部分にブレイクポイントを設定するのに使用できます。
break
引数なしで実行されると、 breakコマンドは、 選択されたスタック・フレーム内において次に実行される命令にブレイクポイントを設定します (see Examining the Stack)。 最下位にあるスタック・フレーム以外のフレームが選択されていると、 このブレイクポイントは、 制御がそのフレームに戻ってきた時点で、 ユーザ・プログラムを停止させます。 これが持つ効果は、 選択されたフレームの下位にあるフレームにおいて finishコマンドを実行するのと似ています。 ただし、 1つ異なるのは、 finishコマンドがアクティブなブレイクポイントを残さないという点です。 最下位のスタック・フレームにおいて引数なしで breakコマンドを実行した場合、 そのときに停止していた箇所に次に到達したときに、 GDBはユーザ・プログラムを停止させます。 これは、 ループの内部では便利でしょう。 GDBは通常、 実行を再開したときに、 最低でも1命令が実行されるまでの間は、 ブレイクポイントの存在を無視します。 そうでなければ、 ブレイクポイントで停止した後、 そのブレイクポイントを無効にしない限り、 先へ進めないことになってしまいます。 この規則は、 ユーザ・プログラムが停止したときに、 既にそのブレイクポイントが存在したか否かにかかわらず、 適用されます。
break ... if cond
condで指定される条件式付きでブレイクポイントを設定します。 そのブレイクポイントに達すると、 必ず条件式condが評価されます。 評価結果がゼロでない場合、 すなわち、 評価結果が真である場合のみ、 ユーザ・プログラムを停止します。 ...の部分には、 これまでに説明してきた停止箇所を指定するための引数のいずれかが入ります (...は省略も可能です)。 ブレイクポイントの条件式の詳細については、 See Break conditions
tbreak args
プログラムを1回だけ停止させるブレイクポイントを設定します。 argsの部分はbreakコマンドと同様であり、 ブレイクポイントも同じように設定されますが、 tbreakにより設定されたブレイクポイントは、 プログラムが最初にそこで停止した後に自動的に削除されます。 See Disabling breakpoints
hbreak args
ハードウェアの持つ機能を利用したブレイクポイントを設定します。 argsの部分はbreakコマンドと同様であり、 ブレイクポイントも同じように設定されますが、 hbreakにより設定されるブレイクポイントは、 ハードウェアによるサポートを必要とします。 ターゲット・ハードウェアによっては、 このような機能を持たないものもあるでしょう。 これの主な目的は、 EPROM/ROMコードのデバッグであり、 ユーザはある命令にブレイクポイントを設定するのに、 その命令を変更する必要がありません。 これは、 SPARClite DSUの提供するトラップ発生機能と組み合わせて使用することができます。 DSUは、 デバッグ・レジスタに割り当てられた データ・アドレスまたは命令アドレスをプログラムがアクセスすると、 トラップを発生させます。 ハードウェアの提供するブレイクポイント・レジスタは、 データ・ブレイクポイントを2つまでしか取れないので、 3つ以上使用しようとすると、 GDBはそれを拒絶します。 このような場合、 不要になったハードウェア・ブレイクポイントを削除または無効化してから、 新しいハードウェア・ブレイクポイントを設定してください。 See Break conditions
thbreak args
ハードウェアの機能を利用して、 プログラムを1回だけ停止させるブレイクポイントを設定します。 argsの部分はhbreakコマンドと同様であり、 ブレイクポイントも同じように設定されます。 しかし、 tbreakコマンドの場合と同様、 最初にプログラムがそこで停止した後に、 このブレイクポイントは自動的に削除されます。 また、 hbreakコマンドの場合と同様、 このブレイクポイントはハードウェアによるサポートを必要とするものであり、 ターゲット・ハードウェアによっては、 そのような機能がないこともあるでしょう。 See Disabling breakpoints。 また、 See Break conditions
rbreak regex
regexで指定される正規表現にマッチするすべての関数にブレイクポイントを設定します。 このコマンドは、 正規表現にマッチしたすべての関数に無条件ブレイクポイントを設定し、 設定されたすべてのブレイクポイントの一覧を表示します。 設定されたブレイクポイントは、 breakコマンドで設定されたブレイクポイントと同様に扱われます。 他のすべてのブレイクポイントと同様の方法で、 削除、 無効化、 および条件の設定が可能です。

C++プログラムのデバッグにおいて、 あるオーバーロードされたメンバ関数が、 特別なクラスだけが持つメンバ関数というわけではない場合、 そのメンバ関数にブレイクポイントを設定するのに、 rbreakコマンドは便利です。

info breakpoints [n]
info break [n]
info watchpoints [n]
設定された後、 削除されていない、 すべてのブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントの一覧を表示します。 個々のブレイクポイントについて、 以下の情報が表示されます。
ブレイクポイント番号
タイプ
ブレイクポイント、 ウォッチポイント、 または、 キャッチポイント
廃棄
ブレイクポイントに次に到達したときに、 無効化または削除されるべくマークされているか否かを示します。
有効/無効
有効なブレイクポイントをy、 有効でないブレイクポイントをnで示します。
アドレス
ユーザ・プログラム内のブレイクポイントの位置をメモリ・アドレスとして示します。
対象
ユーザ・プログラムのソース内におけるブレイクポイントの位置を、 ファイル名および行番号で示します。

ブレイクポイントが条件付きのものである場合、 info breakコマンドは、 そのブレイクポイントに関する情報の次の行に、 その条件を表示します。 ブレイクポイント・コマンドがあれば、 続いてそれが表示されます。

info breakコマンドに引数としてブレイクポイント番号nが指定されると、 その番号に対応するブレイクポイントだけが表示されます。 コンビニエンス変数$_、 および、 xコマンドのデフォルトの参照アドレスには、 一覧の中で最後に表示されたブレイクポイントのアドレスが設定されます (see Examining memory)。

info breakコマンドは、 ブレイクポイントに到達した回数を表示します。 これは、 ignoreコマンドと組み合わせると便利です。 まず、 ignoreコマンドによってブレイクポイントへの到達をかなりの回数無視するよう設定します。 プログラムを実行し、 info breakコマンドの出力結果から何回ブレイクポイントに到達したかを調べます。 再度プログラムを実行し、 今度は前回の実行時に到達した回数より1だけ少ない回数だけ無視するように設定します。 こうすることで、 前回の実行時にそのブレイクポイントに最後に到達したときと同じ状態でプログラムを停止させることが簡単にできます。

GDBでは、 ユーザ・プログラム内の同一箇所に何度でもブレイクポイントを設定することができます。 これは、 くだらないことでも、 無意味なことでもありません。 設定されるブレイクポイントが条件付きのものである場合、 これはむしろ有用です (see Break conditions)。 GDB自身が、 特別な目的でユーザ・プログラム内部にブレイクポイントを設定することがあります。 例えば、 (Cプログラムにおける) longjmpを適切に処理するためなどです。 これらの内部的なブレイクポイントには-1から始まる負の番号が割り当てられます。 info breakpointsコマンドは、 このようなブレイクポイントを表示しません。

これらのブレイクポイントは、 GDBの保守コマンドmaint info breakpointsで表示することができます。

maint info breakpoints
info breakpointsコマンドと同様の形式で呼び出され、 ユーザが明示的に設定したブレイクポイントと、 GDBが内部的な目的で使用しているブレイクポイントの両方を表示します。 内部的なブレイクポイントは、 負のブレイクポイント番号で示されます。 タイプ欄にブレイクポイントの種類が表示されます。
breakpoint
明示的に設定された普通のブレイクポイント
watchpoint
明示的に設定された普通のウォッチポイント
longjmp
longjmpが呼び出されたときに正しくステップ処理ができるように、 内部的に設定されたブレイクポイント
longjmp resume
longjmpのターゲットとなる箇所に内部的に設定されたブレイクポイント
until
GDBのuntilコマンドで一時的に使用される内部的なブレイクポイント
finish
GDBのfinishコマンドで一時的に使用される内部的なブレイクポイント


Node:Set Watchpoints, Next:, Previous:Set Breaks, Up:Breakpoints

ウォッチポイントの設定

ウォッチポイントを設定することで、 ある式の値が変化したときに、 プログラムの実行を停止させることができます。 その値の変更が、 プログラムのどの部分で行われるかをあらかじめ知っている必要はありません。

システムによって、 ウォッチポイントがソフトウェアによって実装されていることもあれば、 ハードウェアによって実装されていることもあります。 GDBは、 ユーザ・プログラムをシングル・ステップ実行して、 そのたびに変数の値をテストすることによって、 ソフトウェア・ウォッチポイントを実現しています。 これは、 通常の実行と比較すると、 何百倍も遅くなります。 (それでも、 プログラムのどの部分が問題を発生させたのか全く手掛りのない誤りを見つけることができるのであれば、 十分価値のあることかもしれません)。

HP-UXやLinuxのようなシステム上のGDBには、 ハードウェア・ウォッチポイントのサポートも組み込まれています。 これを使用すれば、 ユーザ・プログラムの実行が遅くなることはありません。

watch expr
exprで指定される式に対してウォッチポイントを設定します。 プログラムが式の値を書き換えるときに、 GDBはプログラムの実行を停止させます。
rwatch expr
exprで指定される対象が読み込みアクセスされるときにプログラムを停止させるウォッチポイントを設定します。 2つめのウォッチポイントとして設定するのであれば、 1つめのウォッチポイントもrwatchコマンドで設定されていなければなりません。
awatch expr
exprで指定される対象が読み込みアクセス、 書き込みアクセスされるときにプログラムを停止させるウォッチポイントを設定します。 2つめのウォッチポイントとして設定するのであれば、 1つめのウォッチポイントもawatchコマンドで設定されていなければなりません。
info watchpoints
ウォッチポイント、 ブレイクポイント、 キャッチポイントの一覧を表示します。 これは、 info breakと同じです。
GDBは、 可能であれば、 ハードウェア・ウォッチポイントを設定します。 ハードウェア・ウォッチポイントをセットした場合は高速な実行が可能であり、 デバッガは、 変更を引き起こした命令のところで、 値の変更を報告することができます。 ハードウェア・ウォッチポイントを設定できない場合、 GDBは、 ソフトウェア・ウォッチポイントを設定します。 これは、 実行速度も遅く、 値の変更は、 その変更が実際に発生した後に、 その変更を引き起こした命令のところではなく、 1つ後ろの文のところで報告されます

watchコマンドを実行すると、 ハードウェア・ウォッチポイントの設定が可能な場合には、 GDBは、 以下のような報告を行います。

Hardware watchpoint num: expr

SPARClite DSUは、 デバッグ・レジスタに割り当てられた データ・アドレスや命令アドレスにプログラムがアクセスすると、 トラップを発生させます。 データ・アドレスについては、 DSUがwatchコマンドを支援しています。 しかし、 ハードウェアの提供するブレイクポイント・レジスタは、 データ・ウォッチポイントを2つまでしか取れず、 その2つは同じ種類のウォッチポイントでなければなりません。 例えば、 2つのウォッチポイントを、 両方ともwatchコマンドで設定すること、 両方ともrwatchコマンドで設定すること、 あるいは、 両方ともawatchコマンドで設定することは可能ですが、 それぞれを異なるコマンドで設定することはできません。 異なる種類のウォッチポイントを同時に設定しようとしても、 コマンドの実行をGDBが拒否します。 このような場合、 使用しないウォッチポイント・コマンドを削除または無効化してから、 新しいウォッチポイント・コマンドを設定してください。

printcallを使用して関数を対話的に呼び出すと、 それまでにセットされていたウォッチポイントはいずれも、 GDBが別の種類のブレイクポイントに到達するか、 あるいは、 関数の呼び出しが終了するまでの間は、 効果を持たなくなります。

注意: マルチスレッド・プログラムでは、 ウォッチポイントの有用性は限定されます。 現在のウォッチポイントの実装では、 GDBは、 単一スレッドの中 でしか式の値を監視することができません。 カレント・スレッドの処理の結果としてのみ、 その式の値が変更されること (かつ、 他のスレッドがカレント・スレッドにはならないこと) が確実であれば、 通常どおり、 ウォッチポイントを使用することができます。 しかし、 カレント・スレッド以外のスレッドが式の値を変更することがあると、 GDBは、 その変更に気付かないかもしれません。


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キャッチポイントの設定

キャッチポイントを使用することによって、 C++例外や共用ライブラリのローディングのような、 ある種のプログラム・イベントが発生したときに、 デバッガを停止させることができます。 キャッチポイントを設定するには、 catchコマンドを使用します。

catch event
eventで指定されるイベントが発生したときに 停止します。 eventは、 以下のいずれかです。
throw
C++例外の発生。
catch
C++例外のキャッチ。
exec
execの呼び出し。 現在これは、 HP-UXにおいてのみ利用可能です。
fork
forkの呼び出し。 現在これは、 HP-UXにおいてのみ利用可能です。
vfork
vforkの呼び出し。 現在これは、 HP-UXにおいてのみ利用可能です。
load
load libname
任意の共用ライブラリの動的なローディング、 あるいは、 libnameで指定されるライブラリのローディング。 現在これは、 HP-UXにおいてのみ利用可能です。
unload
unload libname
動的にロードされた任意の共用ライブラリのアンローディング、 あるいは、 libnameで指定されるライブラリのアンローディング。 現在これは、 HP-UXにおいてのみ利用可能です。

tcatch event
1回だけ停止させるキャッチポイントを設定します。 最初にイベントが捕捉された後に、 キャッチポイントは自動的に削除されます。

カレントなキャッチポイントの一覧を表示するには、 info breakコマンドを使用します。

現在、 GDBにおけるC++の例外処理 (catch throwcatch catch) にはいくつかの制限があります。

catchコマンドが、 例外処理をデバッグする手段としては最適なものではないような場合もあります。 どこで例外が発生したのかを正確に知りたい場合、 例外ハンドラが呼び出されるにプログラムを停止させた方がよいでしょう。 なぜなら、 スタック・ポインタの調整が行われる前のスタックの状態を見ることができるからです。 例外ハンドラの内部にブレイクポイントを設定してしまうと、 どこで例外が発生したのかを調べるのは簡単ではないでしょう。

例外ハンドラが呼び出される直前で停止させるには、 実装に関する知識が若干必要になります。 GNU C++の場合、 以下のようなANSI Cインターフェイスを持つ __raise_exceptionというライブラリ関数を呼び出すことで例外を発生させます。

    /* addrは例外識別子が格納される領域
       idは例外識別子 */
    void __raise_exception (void **addr, void *id);

スタック・ポインタの調整が行われる前に、 すべての例外をデバッガにキャッチさせるには、 __raise_exceptionにブレイクポイントを設定します (see Breakpoints; watchpoints; and exceptions)。

idの値に依存する条件を付けたブレイクポイント (see Conditions) を使用することで、 特定の例外が発生したときにだけユーザ・プログラムを停止させることができます。 複数の条件付きブレイクポイントを設定することで、 複数の例外の中のどれかが発生したときにユーザ・プログラムを停止させることもできます。


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ブレイクポイントの削除

ブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントがプログラムを1回停止させた後、 同じところで再びプログラムを停止させたくない場合、 それらを取り除くことがしばしば必要になります。 これが、 ブレイクポイントの削除と呼ばれるものです。 削除されたブレイクポイントはもはや存在しなくなり、 それが存在したという記録も残りません。

clearコマンドを使用する場合、 ブレイクポイントを、 それがプログラム内部のどこに存在するかを指定することによって削除します。 deleteコマンドの場合は、 ブレイクポイント番号を指定することで、 個々のブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントを削除することができます。

ブレイクポイントで停止した後、 先へ進むために、 そのブレイクポイントを削除する必要はありません。 ユーザが実行アドレスを変更することなく継続実行する場合、 最初に実行される命令に設定されているブレイクポイントを、 GDBは自動的に無視します。

clear
選択されているスタック・フレーム内において次に実行される命令に設定されているブレイクポイントを削除します (see Selecting a frame)。 最下位にあるフレームが選択されている場合、 ユーザ・プログラムが停止した箇所に設定されているブレイクポイントを削除するのに便利な方法です。
clear function
clear filename:function
functionで指定される関数のエントリに設定されているブレイクポイントを削除します。
clear linenum
clear filename:linenum
指定された行、 または、 その行内に記述されたコードに設定されたブレイクポイントを削除します。
delete [breakpoints] [bnums...]
引数で指定された番号を持つブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントを削除します。 引数が指定されない場合、 すべてのブレイクポイントを削除します (set confirm offコマンドが事前に実行されていない場合、 GDBは、 削除してもよいかどうか確認を求めてきます)。 このコマンドの省略形は dです。


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ブレイクポイントの無効化

ブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントを削除するのではなく、 無効化したい場合もあるでしょう。 無効化によって、 ブレイクポイントは、 それがあたかも削除されたかのように機能しなくなりますが、 後に再度有効化することができるよう、 そのブレイクポイントに関する情報は記憶されます。

ブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントは、 enableコマンドとdisableコマンドによって有効化、 無効化されます。 これらのコマンドには、 引数として1つ以上のブレイクポイント番号を指定することも可能です。 指定すべき番号が分からない場合は、 info breakコマンド、 または、 info watchコマンドによってブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントの一覧を表示させてください。

ブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントは、 有効/無効という観点から見て、 4つの異なる状態を持つことができます。

以下のコマンドを使用することで、 ブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントの有効化、 無効化が可能です。

disable [breakpoints] [bnums...]
指定されたブレイクポイントを無効化します。 番号が1つも指定されない場合は、 すべてのブレイクポイントが無効化されます。 無効化されたブレイクポイントは何ら影響力を持ちませんが、 そのブレイクポイントに関する情報まで削除されるわけではありません。 そのブレイクポイントを無視する回数、 ブレイクポイント成立の条件、 ブレイクポイント・コマンドなどのオプションは、 後にそのブレイクポイントが有効化される場合に備えて、 記憶されています。 disableコマンドは disと省略することができます。
enable [breakpoints] [bnums...]
指定されたブレイクポイント (または、 すべての定義済みブレイクポイント) を有効化します。 有効化されたブレイクポイントは、 再びユーザ・プログラムを停止させることができるようになります。
enable [breakpoints] once bnums...
指定されたブレイクポイントを一時的に有効化します。 このコマンドで有効化されたブレイクポイントはどれも、 最初にプログラムを停止させた直後に、 GDBによって無効化されます。
enable [breakpoints] delete bnums...
1回だけプログラムを停止させ、 その直後に削除されるような設定で、 指定されたブレイクポイントを有効化します。 このコマンドで有効化されたブレイクポイントはどれも、 最初にプログラムを停止させた直後に、 GDBによって削除されます。

tbreakコマンド (see Setting breakpoints) で設定されたブレイクポイントを除き、 ユーザによって設定されたブレイクポイントの初期状態は有効状態です。 その後、 ユーザが上記のコマンドのいずれかを使用した場合に限り、 無効化されたり有効化されたりします (untilコマンドは、 独自にブレイクポイントを設定、 削除することができますが、 ユーザの設定した他のブレイクポイントの状態は変更しません。 see Continuing and stepping)。


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ブレイクポイントの成立条件

最も単純なブレイクポイントは、 指定された箇所にプログラムが到達するたびに、 プログラムの実行を停止させます。 ブレイクポイントに対して条件を指定することも可能です。 ここで、 「条件」とは、 プログラムが記述された言語で表現された真偽値を表す式のことです (see Expressions)。 条件付きのブレイクポイントにプログラムが到達するたびに、 その式が評価されます。 そして、 その結果がであった場合だけ、 プログラムは停止します。

これは、 プログラムの正当性を検査するために診断式を使用するのとは逆になります。 診断式の場合は、 成立しないとき、 すなわち条件が偽であるときに、 プログラムを停止させます。 C言語でassertという診断式をテストするためには、 しかるべきブレイクポイントにassertという条件を設定します。

ウォッチポイントに対して条件を設定することもできます。 もともとウォッチポイントは、 ある式の値を検査するものですから、 これは必要ないかもしれません。 しかし、 ある変数の新しい値がある特定の値に等しいか否かを検査するのは条件式のほうに任せて、 ウォッチポイントの対象そのものは単にその変数の名前にしてしまうという設定の方が簡単でしょう。

ブレイクポイントの成立条件に副作用を持たせたり、 場合によってはプログラム内部の関数を呼び出させたりすることもできます。 プログラムの進行状況をログに取る関数を呼び出したり、 特別なデータ構造をフォーマットして表示するユーザ定義の関数を使用したい場合などに便利です。 この効果は、 同じアドレスに有効なブレイクポイントが別に設定されていない限り、 完全に予測可能です (別のブレイクポイントが設定されていると、 GDBはこのブレイクポイントを先に検出し、 他のブレイクポイントで設定した条件式をチェックすることなくプログラムを停止させてしまうかもしれません)。 あるブレイクポイントに到達したときに、 副作用を持つ処理を実行させるためには、 ブレイクポイント・コマンドの方がより便利であり、 より柔軟でしょう (see Breakpoint command lists)。

ブレイクポイントの成立条件は、 ブレイクポイントを設定する際に、 breakコマンドの引数にifを使用することによって、 設定できます。 See Setting breakpoints。 ブレイクポイントの成立条件は、 conditionコマンドによっていつでも変更できます。 watchコマンドは、 ifキーワードを認識しません。 ウォッチポイントに対して条件を追加設定する唯一の方法は、 conditionコマンドを使うことです。

condition bnum expression
bnumで指定される番号のブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントの成立条件として、 expressionを指定します。 条件を設定した後、 番号bnumのブレイクポイントは、 expressionの値が真 (C言語の場合はゼロ以外の値) であるときのみ、 ユーザ・プログラムを停止させます。 conditionコマンドを使用すると、 GDBはただちにexpressionの構文の正当性、 および、 expressionの中で使用されるシンボル参照の、 ブレイクポイントのコンテキストにおける有効性をチェックします。 しかし、 conditionコマンドが実行されるときに、 expressionの値がGDBによって実際に評価されるわけではありません。 See Expressions
condition bnum
bnumで指定される番号のブレイクポイントから条件を削除します。 実行後、 それは通常の無条件ブレイクポイントになります。

ブレイクポイント成立条件の特別なものに、 ブレイクポイントに到達した回数がある数に達したときにプログラムを停止させるというものがあります。 これは大変便利なので、 それを実現するための特別な方法が提供されています。 それは、 ブレイクポイントの通過カウント (ignore count) を使用する方法です。 すべてのブレイクポイントは、 通過カウントと呼ばれる整数値を持っています。 ほとんどの場合、 この通過カウントの値はゼロであり、 何ら影響力を持ちません。 しかし、 通過カウントとして正の値を持つブレイクポイントに到達すると、 ユーザ・プログラムはそこで停止せず、 単に通過カウントの値を1減少させて処理を継続します。 したがって、 通過カウントがnであると、 ユーザ・プログラムがそのブレイクポイントに到達した回数がn以下の間は、 そのブレイクポイントにおいてプログラムは停止しません。

ignore bnum count
bnumで指定される番号のブレイクポイントの通過カウントをcountで指定される値に設定します。 ブレイクポイントへの到達回数がcount以下の間、 ユーザ・プログラムは停止しません。 この間、 GDBは、 通過カウントの値を1減少させる以外には何もしません。

次にブレイクポイントに到達したときにプログラムを停止させるには、 countにゼロを指定してください。

ブレイクポイントで停止した後にcontinueコマンドを使用して実行を再開する場合、 ignoreコマンドを使用することなく、 直接continueコマンドの引数に通過カウントを指定することができます。 See Continuing and stepping

ブレイクポイントが通過カウントとして正の値を持ち、 かつ、 成立条件を持つ場合、 成立条件はチェックされません。 通過カウントが0に達すると、 GDBは成立条件のチェックを再開します。

$foo-- <= 0のように、 評価のたびに値の減少するコンビニエンス変数を使用した評価式によって、 通過カウントと同様の効果を達成することができます。 See Convenience variables

通過カウントは、 ブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントに適用されます。


Node:Break Commands, Next:, Previous:Conditions, Up:Breakpoints

ブレイクポイント・コマンド・リスト

ブレイクポイント (あるいは、 ウォッチポイント、 キャッチポイント) に対して、 それによってプログラムが停止したときに実行される一連のコマンドを指定することができます。 例えば、 ある特定の式の値を表示したり、 他のブレイクポイントを有効化したりできると便利なこともあるでしょう。

commands [bnum]
... command-list ...
end
bnumで指定される番号を持つブレイクポイントに対して一連のコマンドを指定します。 コマンド自体は、 次の行以下に記述します。 コマンドの記述を終了するには、 endだけから成る1行を記述します。

ブレイクポイントからすべてのコマンドを削除するには、 commands行に続いて (コマンドを1つも指定せずに) endを記述します。

引数bnumが指定されない場合、 commandsは、 最後に設定されたブレイクポイント、 ウォッチポイント、 キャッチポイントを対象とします (最後に到達したブレイクポイントではありません)。

command-listの記述中は、 <RET>キーが持つ、 最後に実行されたコマンドを繰り返し実行する機能は無効です。

ブレイクポイント・コマンドを使用してプログラムの実行を再開することができます。 continuestep、 または、 実行を再開させるその他の任意のコマンドを使用してください。

コマンド・リストの中で、 実行を再開するコマンドの後に記述されているものは無視されます。 というのは、 プログラムが実行を再開すると (たとえそれがnextコマンドやstepコマンドによるものであっても) 別のブレイクポイントに到達する可能性があり、 そのブレイクポイントがコマンド・リストを持っていると、 どちらのリストを実行するべきかあいまいになるからです。

コマンド・リストの先頭に指定されたコマンドがsilentであると、 ブレイクポイントで停止したときに通常出力されるメッセージは表示されません。 これは、 ある特定のメッセージを出力して実行を継続するようなブレイクポイントを設定するのに望ましいでしょう。 コマンド・リスト中の後続のコマンドがどれもメッセージを出力しない場合、 ブレイクポイントに到達したことをユーザに示す情報は何も表示されないことになります。 silentはブレイクポイント・コマンド・リストの先頭においてのみ意味を持ちます。

echooutputprintfの各コマンドを使用することで、 細かく管理された出力を表示することができます。 これらのコマンドは、 silent指定のブレイクポイントで使うと便利です。 See Commands for controlled output

例えば、 ブレイクポイント・コマンドを使用して、 fooへのエントリにおいて xが正の値を持つときに、 その値を表示するには以下のようにします。

break foo if x>0
commands
silent
printf "x is %d\n",x
cont
end

ブレイクポイント・コマンドの1つの応用として、 あるバグの持つ影響を取り除いて、 他のバグを見つけるためにテストを継続することができます。 誤りのある行の次の行にブレイクポイントを設定し、 その条件の中で誤りの発生を検査し、 ブレイクポイント・コマンドの中で修正の必要な変数に正しい値を割り当てます。 コマンド・リストの最後にはcontinueコマンドを記述して、 プログラムが停止しないようにします。 また、 プログラムの先頭にはsilentコマンドを記述し、 何も出力されないようにします。 以下に例を挙げます。

break 403
commands
silent
set x = y + 4
cont
end


Node:Breakpoint Menus, Previous:Break Commands, Up:Breakpoints

ブレイクポイント・メニュー

プログラミング言語によっては (特にC++の場合)、 異なるコンテキストにおいて使用するために、 同一の関数名を複数回定義することが可能です。 これは、 オーバーローディングと呼ばれます。 関数名がオーバーロードされている場合、 break functionだけでは、 どこにブレイクポイントを設定したいのかをGDBに正しく指定するのに十分ではありません。 このような場合には、 ブレイクポイントを設定したい関数がどれであるかを正確に指定するために、 break function(types)のような形式を使用することができます。 このような形式を使用しないと、 GDBは候補となりえるブレイクポイントの一覧を番号付きのメニューとして表示し、 プロンプト>によってユーザの選択を待ちます。 先頭の2つの選択肢は常に、 [0] cancel[1] allです。 1を入力すると、 候補となるすべての関数のそれぞれの定義に対してブレイクポイントを設定します。 また、 0を入力すると、 新たにブレイクポイントを設定することなく breakコマンドを終了します。

例えば、 以下に示すセッションの抜粋は、 オーバーロードされたシンボルString::afterに対してブレイクポイントを設定しようとした場合を示しています。 ここでは、 この関数名を持つ関数定義の中から3つを選択しています。

(gdb) b String::after
[0] cancel
[1] all
[2] file:String.cc; line number:867
[3] file:String.cc; line number:860
[4] file:String.cc; line number:875
[5] file:String.cc; line number:853
[6] file:String.cc; line number:846
[7] file:String.cc; line number:735
> 2 4 6
Breakpoint 1 at 0xb26c: file String.cc, line 867.
Breakpoint 2 at 0xb344: file String.cc, line 875.
Breakpoint 3 at 0xafcc: file String.cc, line 846.
Multiple breakpoints were set.
Use the "delete" command to delete unwanted
 breakpoints.
(gdb)


Node:Continuing and Stepping, Next:, Previous:Breakpoints, Up:Stopping

継続実行とステップ実行

継続実行とは、 ユーザ・プログラムの実行を再開して、 それが正常に終了するまで実行させることを指します。 一方、 ステップ実行とは、 ユーザ・プログラムを1「ステップ」だけ実行することを指します。 ここで「ステップ」とは、 (使用されるコマンドによって) 1行のソース・コードを指すこともありますし、 1マシン命令を指すこともあります。 継続実行の場合でもステップ実行の場合でも、 ブレイクポイントやシグナル が原因となって、 正常終了する前にユーザ・プログラムが停止することがあります (シグナルによってプログラムが停止した場合、 実行を再開するには handleコマンドまたはsignal 0 コマンドを使用するとよいでしょう。 See Signals) 。

continue [ignore-count]
c [ignore-count]
fg [ignore-count]
ユーザ・プログラムが最後に停止した箇所から、 プログラムの実行を再開します。 停止箇所に設定されているブレイクポイントは無視されます。 オプションの引数ignore-countによって、 停止箇所のブレイクポイントを無視する回数を指定することができます。 これはignoreコマンドと似た効果を持ちます (see Break conditions)。

引数ignore-countは、 ユーザ・プログラムがブレイクポイントによって停止した場合にのみ意味を持ちます。 これ以外の場合には、 continueコマンドへの引数は無視されます。

cおよびfgは、 簡便さのためだけに提供されている同義コマンドで、 continueコマンドと全く同様の動作をします。

別の箇所で実行を再開するには、 呼び出し関数に戻るreturnコマンド (see Returning from a function)、 または、 ユーザ・プログラム内の任意の箇所へ移動するjumpコマンド (see Continuing at a different address) を使用することができます。

ステップ実行を使用する典型的なテクニックは、 問題があると思われる関数やプログラム部分の先頭にブレイクポイント (see Breakpoints; watchpoints; and catchpoints) を設定し、 ブレイクポイントで停止するまでプログラムを実行させた後、 問題が再現するまで、 関連しそうな変数の値を調べながら、 疑わしい部分を1行ずつ実行することです。

step
異なるソース行に到達するまでユーザ・プログラムを継続実行した後、 プログラムを停止させ、 GDBに制御を戻します。 このコマンドの省略形はsです。
注意: デバッグ情報なしでコンパイルされた関数の内部にいるときにstepコマンドを使用すると、 デバッグ情報付きの関数に達するまでプログラムの実行は継続されます。 同様に、 stepコマンドがデバッグ情報なしでコンパイルされた関数の内部へ入って、 停止することはありません。 デバッグ情報を持たない関数の内部でステップ実行を行うには、 後述のstepiコマンドを使用してください。

stepコマンドは、 ソース・コード行の最初の命令においてのみ停止するようになりました。 これにより、 以前のバージョンで発生していた、 switch文やfor文などにおいて複数回停止してしまうという問題が回避されています。 同じ行の中にデバッグ情報を持つ関数への呼び出しがあると、 stepコマンドは続けて停止します。

さらに、 stepコマンドは、 サブルーチンが行番号情報を持つ場合に限り、 サブルーチンの内部に入り込むようになりました。 サブルーチンが行番号情報を持たない場合、 stepコマンドはnextコマンドと同様の動作をします。 これにより、 MIPSマシン上でcc -glを使用した場合に発生していた問題が回避されています。 以前のバージョンでは、 サブルーチンが何らかのデバッグ情報を持っていれば、 その内部に入り込んでいました。

step count
stepコマンドによるステップ実行をcount回繰り返します。 ステップ実行をcount回繰り返し終わる前に、 ブレイクポイントに到達する か、 あるいは、 ステップ実行とは関連のないシグナルが発生した 場合には、 ただちにステップ実行を中断して停止します。
next [count]
カレントな (最下位の) スタック・フレーム上において、 ソース・コード上の次の行まで実行します。 これはstepコマンドと似ていますが、 nextコマンドは、 ソース・コード上に関数呼び出しが存在すると、 その関数を停止することなく最後まで実行します。 プログラムが停止するのは、 nextコマンドを実行したときと同一のスタック・フレーム上において、 ソース・コード上の異なる行まで実行が継続されたときです。 このコマンドの省略形はnです。

引数countは、 stepコマンドの場合と同様、 繰り返し回数です。

nextコマンドは、 ソース・コード行の最初の命令においてのみ停止するようになりました。 これにより、 以前のバージョンで発生していた、 switch文やfor文などにおいて複数回停止してしまうという問題が回避されています。

finish
選択されているスタック・フレーム上の関数が復帰するまで、 実行を継続します。 戻り値があれば、 それを表示します。

returnコマンド (see Returning from a function) と比較してみてください。

until
u
カレントなスタック・フレーム上において、 カレント行よりも後ろにある行に到達するまで実行を継続します。 このコマンドは、 ループ内において複数回ステップ実行をするのを回避するために使用されます。 これはnextコマンドに似ていますが、 唯一の相違点は、 untilコマンドによってジャンプ命令が実行された場合、 プログラム・カウンタの値がジャンプ命令のアドレスより大きくなるまで、 プログラムが継続実行されるという点です。

これは、 ステップ実行によってループ内の最後の行に到達した後にuntilコマンドを実行することで、 ループから抜け出るまでプログラムを継続実行させることができるということを意味しています。 これに対して、 ループ内の最後の行でnextコマンドを実行すると、 プログラムはループの先頭に戻ってしまうので、 ループ内の処理を繰り返すことを余儀なくされます。

untilコマンドの実行により、 プログラムがカレントなスタック・フレームから抜け出ようとすると、 そこでuntilコマンドはプログラムを停止します。

実行されるマシン・コードの順序がソース行の順序と一致しない場合、 untilコマンドは直観にいくらか反するような結果をもたらすかもしれません。 例えば、 以下に挙げるデバッグ・セッションからの抜粋では、 fframe) コマンドによって、 プログラムが206行めにおいて停止していることが示されています。 ところが、 untilコマンドを実行すると、 195行めで停止してしまいます。

(gdb) f
#0  main (argc=4, argv=0xf7fffae8) at m4.c:206
206                 expand_input();
(gdb) until
195             for ( ; argc > 0; NEXTARG) {

これは、 コンパイラが、 実行の効率を高めるために、 C言語では forループ本体の前に記述されているループ終了のための条件判定を、 ループの先頭ではなく末尾で行うコードを生成したためです。 この判定式にまで処理が進んだとき、 untilコマンドはあたかもループの先頭に戻ったかのように見えます。 しかしながら、 実際のマシン・コードのレベルでは、 前の命令に戻ったわけではありません。

引数のないuntilコマンドは、 1命令ごとのステップ実行によって実現されるため、 引数付きの untilコマンドに比べて処理性能が劣ります。

until location
u location
locationで指定される箇所に到達するか、 カレントなスタック・フレームを抜け出るまで、 ユーザ・プログラムを継続実行します。 locationbreakコマンドの受け付ける形式の引数です (see Setting breakpoints)。 この形式によるuntilコマンドはブレイクポイントを使用するため、 引数のないuntilコマンドより処理性能が優れています。
stepi
si
1マシン命令を実行した後、停止してデバッガに戻ります。

マシン命令単位でステップ実行する場合、 display/i $pcを使用すると便利なことがしばしばあります。 これは、 ユーザ・プログラムが停止するたびに、 次に実行される命令をGDBに自動的に表示させます。 See Automatic display

引数として、 stepコマンドと同様、 繰り返し回数を取ります。

nexti
ni
1マシン命令を実行しますが、 それが関数の呼び出しである場合は、 関数から復帰するまで実行を継続します。

引数として、nextコマンドと同様、 繰り返し回数を取ります。


Node:Signals, Next:, Previous:Continuing and Stepping, Up:Stopping

シグナル

シグナルは、 プログラム内で発生する非同期イベントです。 オペレーティング・システムによって、 使用可能なシグナルの種類が定義され、 それぞれに名前と番号が割り当てられます。 例えば、 UNIXにおいては、 割り込み (通常は、Ctrlキーを押しながらCを押す) を入力したときにプログラムが受信する SIGINT、 その使用領域からかけ離れたメモリ域を参照したときにプログラムが受信するSIGSEGV、 アラームのタイムアウト時に発生する (プログラムからアラームを要求した場合にのみ発生する) SIGALRMシグナルなどがあります。

SIGALRMなど、 いくつかのシグナルは、 プログラムの正常な機能の一部です。 SIGSEGVなどの他のシグナルは、 エラーを意味します。 これらのシグナルは、 プログラムが事前にそれを処理する何らかの方法を指定しないと、 致命的な (プログラムを即座に終了させる) ものとなります。 SIGINTはユーザ・プログラム内部のエラーを意味するものではありませんが、 通常は致命的なものであり、 割り込みの目的であるプログラムの終了を実現することができます。 GDBは、 ユーザ・プログラム内部における任意のシグナル発生を検出することができます。 ユーザは、 個々のシグナルの発生時に何を実行するかを、 GDBに対して事前に指定することができます。

通常GDBは、 SIGALRMのようなエラーではないシグナルを無視するよう (これらのシグナルがユーザ・プログラムの中で持っている役割を妨害することのないよう) 設定されています。 その一方で、 エラーのシグナルが発生した場合にはすぐにユーザ・プログラムを停止させるよう設定されています。 これらの設定はhandleコマンドによって変更することができます。

info signals
すべてのシグナルを一覧にして表示します。 また、 個々のシグナルについて、 GDBがそれをどのように処理するよう設定されているかを表示します。 このコマンドを使用して、 定義済みのすべてのシグナルのシグナル番号を知ることができます。

info handleは、 info signalsに対して設定された新しい別名です。

handle signal keywords...
GDBがsignalで指定されるシグナルを処理する方法を変更します。 signalには、 シグナル番号またはシグナル名称 (先頭のSIGは省略可能) を指定します。 キーワードkeywordsによって、 どのように変更するかを指定します。

handleコマンドが受け付けるキーワードには省略形を使用することができます。 省略しない場合、 キーワードは以下のようになります。

nostop
GDBに対して、 このシグナルが発生してもユーザ・プログラムを停止しないよう指示します。 GDBは、 シグナルを受信したことをメッセージ出力によってユーザに通知することができます。
stop
GDBに対して、 このシグナルが発生するとユーザ・プログラムを停止するよう指示します。 これは、 printキーワードを暗黙のうちに含みます。
print
GDBに対して、 このシグナルが発生するとメッセージを表示するよう指示します。
noprint
GDB に対して、 このシグナルが発生したことを知らせないよう指示します。 これは、 nostopキーワードを暗黙のうちに含みます。
pass
GDBに対して、 このシグナルの発生をユーザ・プログラムが検出できるようにするよう指示します。 ユーザ・プログラムはシグナルを処理することができます。 致命的で処理できないシグナルが発生した場合、 ユーザ・プログラムは停止するかもしれません。
nopass
GDBに対して、 このシグナルの発生をユーザ・プログラムが検出できないようにするよう指示します。

シグナルによってユーザ・プログラムが停止した場合、 実行を継続するまでそのシグナルは検出されません。 その時点において、 そのシグナルに対してpassキーワードが有効であれば、 ユーザ・プログラムは、 実行継続時にシグナルを検出します。 言い換えれば、 GDBがシグナルの発生を報告してきたとき、 handleコマンドにpassキーワードまたはnopassキーワードを指定することで、 実行を継続したときにプログラムにそのシグナルを検出させるか否かを制御することができます。

また、 signalコマンドを使用することによって、 ユーザ・プログラムがシグナルを検出できないようにしたり、 通常は検出できないシグナルを検出できるようにしたり、 あるいは任意の時点で任意のシグナルをユーザ・プログラムに検出させたりすることができます。 例えば、 ユーザ・プログラムが何らかのメモリ参照エラーによって停止した場合、 ユーザは、 さらに実行を継続しようとして、 問題のある変数に正しい値を設定して継続実行しようとするかもしれません。 しかし、 実行継続直後に検出される致命的なシグナルのために、 おそらくユーザ・プログラムはすぐに終了してしまうでしょう。 このようなことを回避したければ、 signal 0コマンドによって実行を継続することができます。 See Giving your program a signal


Node:Thread Stops, Previous:Signals, Up:Stopping

マルチスレッド・プログラムの停止と起動

ユーザ・プログラムが複数のスレッド (see Debugging programs with multiple threads) を持つ場合、 すべてのスレッドにブレイクポイントを設定するか、 特定のスレッドにブレイクポイントを設定するかを選択することができます。

break linespec thread threadno
break linespec thread threadno if ...
linespecはソース行を指定します。 記述方法はいくつかありますが、 どの方法を使っても結果的にはソース行を指定することになります。

breakコマンドに修飾子thread threadnoを使用することで、 ある特定のスレッドがこのブレイクポイントに到達したときだけGDBがプログラムを停止するよう、 指定することができます。 ここでthreadnoは、 GDBによって割り当てられるスレッド識別番号で、 info threadsコマンドによる出力の最初の欄に表示されるものです。

ブレイクポイントを設定する際にthread threadnoを指定しなければ、 そのブレイクポイントはユーザ・プログラム内部のすべてのスレッドに適用されます。

条件付きのブレイクポイントに対してもthread識別子を使用することができます。 この場合、 以下のようにthread threadnoをブレイクポイント成立条件の前に記述してください。

(gdb) break frik.c:13 thread 28 if bartab > lim

いかなる理由によるのであれGDB配下においてユーザ・プログラムが停止した場合、 カレント・スレッドだけではなく、 すべての実行スレッドが停止します。 これにより、 知らないうちに状態の変化が発生することを心配することなく、 スレッドの切り替えも含めて、 プログラム全体の状態を検査することができます。

逆に、 プログラムの実行を再開したときには、 すべてのスレッドが実行を開始します。 これは、 stepコマンドやnextコマンドによるシングル・ステップ実行の場合でも同様です。

特にGDBは、 すべてのスレッドの歩調を合わせてシングル・ステップ実行することはできません。 スレッドのスケジューリングは、 デバッグ対象のマシンのオペレーティング・システムに依存する (GDBが管理するわけではない) ので、 カレント・スレッドがシングル・ステップの実行を完了する前に、 他のスレッドは複数の文を実行してしまうかもしれません。 また、 プログラムが停止するとき、 他のスレッドは2つの文の間の境界のところでぴったり停止するよりも、 文の途中で停止してしまう方が一般的です。

また、 継続実行やステップ実行の結果、 プログラムが別のスレッド内で停止してしまうこともありえます。 最初のスレッドがユーザの要求した処理を完了する前に、 他のスレッドがブレイクポイントに到達した場合、 シグナルを受信した場合、 例外が発生した場合には、 常にこのようなことが発生します。

OSによっては、 OSスケジューラをロックすることによって、 ただ1つのスレッドだけが実行されるようにすることができます。

set scheduler-locking mode
スケジューラのロッキング・モード(locking mode)を設定します。 offの場合は、 ロックのメカニズムは機能せず、 任意の時点において、 どのスレッドも実行される可能性を持ちます。 onの場合は、 再始動(resume)されるスレッドの優先順位が低い場合には、 カレント・スレッドだけが実行を継続することができます。 stepモードでは、 シングル・ステップ実行のための最適化が行われます。 ステップ実行をしている間、 他のスレッドが「プロンプトを横取りする」ことがないよう、 カレント・スレッドに占有権が与えられます。 また、 ステップ実行をしている間、 他のスレッドはきわめて稀にしか (あるいは、 まったく) 実行するチャンスを与えられません。 nextコマンドによって関数呼び出しの次の行まで処理を進めると、 他のスレッドが実行される可能性は高くなります。 また、 continueuntilfinishのようなコマンドを使用すると、 他のスレッドは 完全に自由に実行されることができます。 しかし、 そのタイムスライスの中でブレイクポイントに到達しない限り、 他のスレッドが、 デバッグの対象となっているスレッドから、 GDBプロンプトを横取りすることはありません。
show scheduler-locking
スケジューラの現在のロッキング・モードを表示します。


Node:Stack, Next:, Previous:Stopping, Up:Top

スタックの検査

ユーザ・プログラムが停止したとき、 まず最初に、 どこで停止したのか、 そして、 どのようにしてそこに到達したのかを知る必要があるでしょう。

ユーザ・プログラムが関数呼び出しを行うたびに、 その呼び出しに関する情報が生成されます。 その情報には、 ユーザ・プログラム内においてその呼び出しが発生した場所、 関数呼び出しの引数、 呼び出された関数内部のローカル変数などが含まれます。 その情報は、 スタック・フレームと呼ばれるデータ・ブロックに保存されます。 スタック・フレームは、 呼び出しスタックと呼ばれるメモリ域に割り当てられます。

ユーザ・プログラムが停止すると、 スタックを検査するGDBコマンドを使用して、 この情報をすべて見ることができます。 GDBは1つのスタック・フレームを選択していて、 多くのGDBコマンドはこの選択されたフレームを暗黙のうちに参照します。 特に、 GDBに対してユーザ・プログラム内部の変数の値を問い合わせると、 GDBは選択されたフレームの内部においてその値を探そうとします。 関心のあるフレームを選択するための特別なGDBコマンドが提供されています。 See Selecting a frame

ユーザ・プログラムが停止すると、 GDBはその時点において実行中のフレームを自動的に選択し、 frameコマンド (see Information about a frame) のように、 そのフレームに関する情報を簡潔に表示します。


Node:Frames, Next:, Previous:Stack, Up:Stack

スタック・フレーム

呼び出しスタックは、 スタック・フレーム、 または短縮してフレームと呼ばれる、 連続した小部分に分割されます。 個々のフレームは、 ある関数に対する1回の呼び出しに関連するデータです。 フレームには、 関数への引数、 関数のローカル変数、 関数の実行アドレスなどの情報が含まれます。

ユーザ・プログラムが起動されたとき、 スタックにはmain関数のフレームが1つ存在するだけです。 これは、 初期フレームまたは「最上位のフレーム」と呼ばれます。 関数が呼び出されるたびに、 新たにフレームが作成されます。 関数が復帰すると、 その関数を呼び出したときに生成されたフレームが取り除かれます。 関数が再帰的に呼び出される場合、 1つの関数に対して多くのフレームが生成されるということもありえます。 実際に実行中の関数に対応するフレームは、 「最下位のフレーム」と呼ばれます。 これは、 存在するすべてのスタック・フレームの中で、 最も新しく作成されたものです。

ユーザ・プログラムの内部においては、 スタック・フレームはアドレスによって識別されます。 スタック・フレームは多くのバイトから構成され、 それぞれがそれ自身のアドレスを持っています。 そのアドレスがフレームのアドレスとなるような1バイトを選択する慣習的な方法を、 すべての種類のコンピュータが提供しています。 通常、 あるフレーム内部で実行中は、 そのフレームのアドレスがフレーム・ポインタ・レジスタと呼ばれるレジスタに格納されています。 GDBは、 既存のスタック・フレームのすべてに番号を割り当てます。 最下位のフレームは0で、 それを呼び出したフレームは1となります。 以下、 最下位のフレームを起点として、 順番に値を割り当てていきます。 これらの番号はユーザ・プログラム内部には実際には存在しません。 これらの番号は、 GDBコマンドでスタック・フレームを指定することができるように、 GDBによって割り当てられたものです。

コンパイラによっては、 スタック・フレームを使用しなくても実行可能なように関数をコンパイルする方法を提供しているものもあります (例えば、 gccのオプション-fomit-frame-pointerを指定すると、 フレームを持たない関数が生成されます)。 これは、 フレームをセットアップする時間を節約するために、 頻繁に利用されるライブラリ関数に対してしばしば適用されます。 これらの関数の呼び出しを処理するためにGDBが提供する機能は限られています。 最下位のフレームの関数呼び出しがスタック・フレームを持たない場合、 GDBは、 あたかもそれが通常どおりに番号0のフレームを持つものとみなして、 関数呼び出しの連鎖を跡づけることができるようにします。 しかしながら、 最下位以外のスタック位置に存在する、 フレームを持たない関数に対しては、 GDBは特別な処置を取りません。

frame args
frameコマンドによって、 あるスタック・フレームから別のスタック・フレームに移動し、 選択したスタック・フレームを表示させることができます。 argsは、 フレームのアドレスまたはスタック・フレーム番号です。 引数なしで実行すると、 frameコマンドはカレントなスタック・フレームを表示します。
select-frame
select-frameコマンドによって、 フレームを表示することなく、 あるスタック・フレームから別のスタック・フレームに移動することができます。 これは、 frameコマンドから、 表示処理を取り除いたものです。


Node:Backtrace, Next:, Previous:Frames, Up:Stack

バックトレース

バックトレースとは、 ユーザ・プログラムが現在いる箇所にどのようにして到達したかを示す要約情報です。 複数のフレームが存在する場合、 1フレームの情報を1行に表示します。 現在実行中のフレーム (番号0のフレーム) を先頭に、 それを呼び出したフレーム (番号1のフレーム) を次行に、 以降、 同様にスタックをさかのぼって情報を表示します。

backtrace
bt
全スタックのバックトレースを表示します。 スタック内のすべてのフレームが、 1行に1フレームずつ表示されます。

システムの割り込み文字 (通常は、Ctrlキーを押しながらCを押す) によって、 いつでもバックトレースを停止することができます。

backtrace n
bt n
引数のないbacktraceコマンドと似ていますが、 最下位のフレームから数えてn個のフレームだけが表示されます。
backtrace -n
bt -n
引数のないbacktraceコマンドと似ていますが、 最上位のフレームから数えてn個のフレームだけが表示されます。

backtraceの別名としては、 ほかにwhereinfo stack (省略形はinfo s) があります。

backtraceコマンドの出力結果の各行に、 フレーム番号と関数名が表示されます。 set print address offコマンドを実行していなければ、 プログラム・カウンタの値も表示されます。 backtraceコマンドの出力結果では、 関数への引数に加えて、 ソース・ファイル名や行番号も表示されます。 プログラム・カウンタが、 行番号で指定される行の最初のコードを指している場合、 その値は省略されます。

以下にbacktraceの例を示します。 これは、 bt 3の出力であり、 したがって最下位のフレームから3フレームが表示されています。

#0  m4_traceon (obs=0x24eb0, argc=1, argv=0x2b8c8)
    at builtin.c:993
#1  0x6e38 in expand_macro (sym=0x2b600) at macro.c:242
#2  0x6840 in expand_token (obs=0x0, t=177664, td=0xf7fffb08)
    at macro.c:71
(More stack frames follow...)

番号0のフレームを表示する行の先頭には、 プログラム・カウンタの値がありません。 これは、 builtin.c993行めの最初のコードにおいて ユーザ・プログラムが停止したことを表わしています。


Node:Selection, Next:, Previous:Backtrace, Up:Stack

フレームの選択

スタックやユーザ・プログラム内の他のデータを調べるためのほとんどのコマンドは、 それが実行された時点において選択されているスタック・フレーム上で動作します。 以下に、 スタック・フレームを選択するためのコマンドを列挙します。 どのコマンドも、 それによって選択されたスタック・フレームに関する簡単な説明を最後に表示します。

frame n
f n
番号nのフレームを選択します。 最下位の (現在実行中の) フレームが番号0のフレーム、 最下位のフレームを呼び出したフレームが番号1のフレーム、 以下同様となります。 最も大きい番号を持つフレームはmainのフレームです。
frame addr
f addr
アドレスaddrのフレームを選択します。 スタック・フレームの連鎖がバグのために破壊されてしまって、 GDBがすべてのフレームに正しく番号を割り当てられないような場合に、 この方法が役に立ちます。 さらに、 ユーザ・プログラムが複数のスタックを持ち、 スタックの切り替えを行うような場合にも有効です。

SPARCアーキテクチャでは、 フレームを任意に選択するには、 フレーム・ポインタ、 スタック・ポインタの2つのアドレスをframeに指定する必要があります。

MIPS、 Alphaの両アーキテクチャでは、 スタック・ポインタ、 プログラム・カウンタの2つのアドレスが必要です。

29kアーキテクチャでは、 レジスタ・スタック・ポインタ、 プログラム・カウンタ、 メモリ・スタック・ポインタの3つのアドレスが必要です。

up n
スタックをnフレームだけ上へ移動します。 nが正の値の場合、 最上位のフレームに向かって移動します。 これは、 より大きいフレーム番号を持ち、 より長く存在しているフレームへの移動です。 nのデフォルト値は、 0です。
down n
スタックをnフレームだけ下へ移動します。 nが正の値の場合、 最下位のフレームに向かって移動します。 これは、 より小さいフレーム番号を持ち、 より最近作成されたフレームへの移動です。 nのデフォルト値は1です。 downの省略形はdoです。

これらのコマンドはいずれも、 最後にフレームに関する情報を2行で表示します。 1行めには、 フレーム番号、 関数名、 引数、 ソース・ファイル名、 そのフレーム内において実行停止中の行番号が表示されます。 2行めには、 実行停止中のソース行が表示されます。

以下に、 例を示します。

(gdb) up
#1  0x22f0 in main (argc=1, argv=0xf7fffbf4, env=0xf7fffbfc)
    at env.c:10
10              read_input_file (argv[i]);

この情報が表示された後で、 listコマンドを引数なしで実行すると、 フレーム内で実行停止中の行を中心に10行のソース行が表示されます。 See Printing source lines

up-silently n
down-silently n
これら2つのコマンドは、 それぞれ、 upコマンド、 downコマンドの変種です。 相違点は、 ここに挙げた2つのコマンドが、 新しいフレームに関する情報を表示することなく実行されるという点にあります。 これらは、 情報の出力が不必要で邪魔ですらある、 GDBのコマンド・スクリプトの中での使用を主に想定したものです。


Node:Frame Info, Next:, Previous:Selection, Up:Stack

フレームに関する情報

既に挙げたもの以外にも、 選択されたフレームに関する情報を表示するコマンドがいくつかあります。

frame
f
このコマンドは、 引数なしで実行されると、 別のフレームを選択するのではなく、 その時点において選択中のフレームに関する簡単な説明を表示します。 このコマンドの省略形はfです。 引数付きの場合、 このコマンドはスタック・フレームを選択するのに使用されます。 See Selecting a frame
info frame
info f
このコマンドは、 選択されたフレームに関する詳細な情報を表示します。 表示される情報には、 以下のようなものがあります。

これらの詳細な情報は、 何か問題が発生して、 スタックの形式が通常の慣習に合致しなくなった場合に、 役に立ちます。

info frame addr
info f addr
アドレスaddrのフレームに関する詳細な情報を、 そのフレームを選択することなく表示します。 このコマンドによって、 その時点において選択されていたフレームとは異なるフレームが選択されてしまうことはありません。 このコマンドでは、 frameコマンドに指定するのと同様のアドレスを (アーキテクチャによっては複数) 指定する必要があります。 See Selecting a frame
info args
選択中のフレームの引数を、 1行に1つずつ表示します。
info locals
選択中のフレームのローカル変数を、 1行に1つずつ表示します。 これらはすべて、 選択中のフレームの実行箇所においてアクセス可能な (静的変数または自動変数として宣言された) 変数です。
info catch
選択中のスタック・フレームの実行箇所においてアクティブな状態にある、 すべての例外ハンドラの一覧を表示します。 他の例外ハンドラを参照したい場合は、 関連するフレームに (upコマンド、 downコマンド、 frameコマンドを使用して) 移動してから、 info catchを実行します。 See Setting catchpoints


Node:Alpha/MIPS Stack, Previous:Frame Info, Up:Stack

MIPS/Alphaマシンの関数スタック

AlphaベースのコンピュータとMIPSベースのコンピュータは、 変わったスタック・フレームを使用しています。 そのため、 関数の先頭を見つけるために、 GDBはときどきオブジェクト・コードを逆方向に検索する必要があります。

応答時間を改善するために (特に、 このような検索を実行するのに、 速度の遅いシリアル回線を使用するほかない、 組み込みアプリケーションの場合)、 以下に列挙するコマンドを使用して検索量を制限するとよいでしょう。

set heuristic-fence-post limit
関数の先頭を検索するためにGDBが検査するバイト数を、 最高でlimitバイトに制限します。 limit0 (デフォルト) を指定すると、 無制限に検索することを意味します。 limit0以外の値を指定すると、 その値が大きければ大きいほど検索バイト数も多くなり、 したがって検索の実行により長い時間がかかります。
show heuristic-fence-post
現在の検索制限値を表示します。

これらのコマンドは、 GDBが、 Alphaプロセッサ上、 または、 MIPSプロセッサ上においてプログラムをデバッグするよう構成されている場合に のみ使用することができます。


Node:Source, Next:, Previous:Stack, Up:Top

ソース・ファイルの検査

GDBは、 ユーザ・プログラムのソース・コードの一部を表示することができます。 これは、 プログラムの中に記録されているデバッグ情報によって、 そのプログラムをビルドするのに使用されたソース・ファイルを GDBが知ることができるからです。 ユーザ・プログラムが停止すると、 GDBは自発的にプログラムが停止した行を表示します。 同様に、 ユーザがあるスタック・フレーム (see Selecting a frame) を選択すると、 そのフレームにおいて実行が停止している行をGDBは表示します。 明示的にコマンドを使用することで、 ソース・ファイルの他の部分を表示することも可能です。

GNU Emacsインターフェイス経由でGDBを使用しているユーザは、 Emacsの提供する機能を使ってソース・ファイルを参照する方を好むかもしれません。 これについては、 See Using GDB under GNU Emacs


Node:List, Next:, Previous:Source, Up:Source

ソース行の表示

ソース・ファイル内の行を表示するには、 listコマンド (省略形はl) を使用します。 デフォルトでは、 10行が表示されます。 ソース・ファイルのどの部分を表示するかを指定する方法がいくつかあります。

最もよく使われるlistコマンドの形式を以下に示します。

list linenum
現在のソース・ファイルの行番号linenumを中心に、 その前後の行を表示します。
list function
関数functionの先頭を中心に、 その前後の行を表示します。
list
ソース・ファイル行の続きを表示します。 既に表示された最後の行がlistコマンドによって表示されたのであれば、 その最後の行の次の行以降が表示されます。 しかし、 既に表示された最後の行が、 スタック・フレーム (see Examining the Stack) の表示の一部として1行だけ表示されたのであれば、 その行の前後の行が表示されます。
list -
前回表示された行の前に位置する行を表示します。

listコマンドを上記の形式のいずれかによって実行すると、 GDBはデフォルトでは10行のソース行を表示します。 これはset listsizeコマンドによって変更することができます。

set listsize count
listコマンドで表示される行数をcountに設定します (listコマンドの引数で他の値が明示的に指定された場合は、 この設定は効力を持ちません)。
show listsize
listコマンドが表示する行数を表示します。

listコマンドを実行後、 <RET>キーによってlistコマンドを実行した場合、 引数は破棄されます。 したがって、 これは単にlistと入力して実行したのと同じことになります。 同じ行が繰り返し表示されるよりも、 この方が役に立つでしょう。 ただし、 引数-は例外となります。 この引数は繰り返し実行の際にも維持されるので、 繰り返し実行することで、 ソース・ファイルの内容がさかのぼって表示されていきます。

一般的には、 listコマンドは、 ユーザによって0個、 1個、 または2個の行指定linespec)が与えられることを期待しています。 ここで行指定とは、 ソース行を指定するものです。 いくつかの記述方法がありますが、 いずれも結果的には何らかのソース行を指定するものです。 listコマンドの引数として使用できる引数の完全な説明を以下に示します。

list linespec
linespecによって指定される行を中心に、 その前後の行を表示します。
list first,last
first行からlast行までを表示します。 両引数はいずれも行指定です。
list ,last
last行までを表示します。
list first,
first行以降を表示します。
list +
最後に表示された行の次の行以降を表示します。
list -
最後に表示された行の前の行以前を表示します。
list
前述のとおり。

以下に、 ソースの特定の1行を指定する方法を示します。 これは、 いずれも行指定です。

number
現在のソース・ファイルの行番号numberの行を指定します。 listコマンドの引数に2つの行指定がある場合、 2つめの行指定は、 最初の行指定と同一のソース・ファイルを指定します。
+offset
最後に表示された行からoffsetで指定される行数だけ下にある行を指定します。 2つの行指定を引数として持つlistコマンドにおいて、 これが2つめの行指定として使用される場合、 最初の行指定からoffsetで指定される行数だけ下の行を指定します。
-offset
最後に表示された行からoffsetで指定される行数だけ上にある行を指定します。
filename:number
ソース・ファイルfilenameの行番号numberの行を指定します。
function
関数functionの本体の先頭行を指定します。 例えばC言語では、 左括弧 ({) のある行を指します。
filename:function
ファイルfilename内の関数functionの本体を開始する左括弧 ({) のある行を指定します。 異なるソース・ファイルの中に同一の名前の関数が複数ある場合にのみ、 あいまいさを回避するために、 関数名とともにファイル名を指定する必要があります。
*address
プログラム・アドレスaddressを含む行を指定します。 addressには任意の式を指定することができます。


Node:Search, Next:, Previous:List, Up:Source

ソース・ファイル内の検索

カレントなソース・ファイル内において正規表現による検索を行うためのコマンドが2つあります。

forward-search regexp
search regexp
forward-search regexpコマンドは、 最後にlistコマンドによって表示された行の1つ下の行から、 1行ずつ正規表現regexpによる検索を行います。 正規表現にマッチするものが見つかると、 その行を表示します。 search regexpという同義のコマンドを使うこともできます。 コマンド名は、 省略してfoとすることができます。
reverse-search regexp
reverse-search regexpコマンドは、 最後にlistコマンドによって表示された行の1つ上の行から、 1行ずつ逆方向に向かって正規表現regexpによる検索を行います。 正規表現にマッチするものが見つかると、 その行を表示します。 コマンド名は、 省略してrevとすることができます。


Node:Source Path, Next:, Previous:Search, Up:Source

ソース・ディレクトリの指定

実行形式プログラムは、 それがコンパイルされたソース・ファイルの名前だけを記録して、 ソース・ファイルの存在するディレクトリ名を記録しないことがあります。 また、 ディレクトリ名が記録された場合でも、 コンパイル時とデバッグ時との間に、 そのディレクトリが移動してしまっている可能性があります。 GDBは、 ソース・ファイルを検索すべきディレクトリの一覧を持っています。 これは、 ソース・パスと呼ばれます。 GDBは、 ソース・ファイルが必要なときにはいつでも、 それが見つかるまで、 このリストの中のすべてのディレクトリを、 リストの中に記述されている順に探します。 実行ファイルのサーチ・パスは、 この目的では使用されないことに気をつけてください。 またカレントな作業ディレクトリも、 それがたまたまソース・パスの中にある場合を除けば、 この目的で使用されることはありません。 GDBがソース・パスの中でソース・ファイルを見つけることができない場合、 プログラムがディレクトリ名を記録してあれば、 そのディレクトリも検索されます。 ソース・パスにディレクトリの指定がなく、 コンパイルされたディレクトリの名前も記録されていない場合、 GDBは最後の手段としてカレント・ディレクトリを探します。

ソース・パスを空にした場合、 または、 再調整した場合、 ソース・ファイルを見つけた場所や個々の行のファイル内の位置のような、 GDBが内部でキャッシュしている情報は消去されます。 GDBを起動した時点では、 ソース・パスにはディレクトリの指定がありません。 ディレクトリをソース・パスに追加するには、 directoryコマンドを使用してください。

directory dirname ...
dir dirname ...
ディレクトリdirnameをソース・パスの先頭に追加します。 個々のディレクトリをコロン:または空白で区切ることによって、 複数のディレクトリをこのコマンドに渡すことができます。 ソース・パスの中に既に存在するディレクトリを指定することもできます。 この場合、 そのディレクトリの、 ソース・パスの中での位置が前に移動するので、 GDBはそのディレクトリの中を以前よりも早く検索することになります。

(コンパイル時のディレクトリが記録されていれば) それを指すのに文字列$cdirを使うことができます。 また、 カレントな作業ディレクトリを指すには、 文字列$cwdを使うことができます。 $cwd. (ピリオド) とは同じではありません。 前者は、 GDBセッション内においてカレントな作業ディレクトリが変更された場合、 変更されたディレクトリを指します。 これに対して後者は、 ソース・パスへの追加を行ったときに、 その時点におけるカレント・ディレクトリに展開されてしまいます。

directory
ソース・パスの内容を再び空にします。 ソース・パスを空にする前に、 確認を求めてきます。
show directories
ソース・パスを表示します。 ソース・パスに含まれるディレクトリ名を見ることができます。

ソース・パスの中に、 不要となってしまったディレクトリが混在していると、 GDBが誤ったバージョンのソースを見つけてしまい、 混乱をもたらすことがあります。 以下の手順によって、 正常な状態にすることができます。

  1. ソース・パスを空にするために、 directoryコマンドを引数なしで実行します。
  2. ソース・パス中に含めたいディレクトリが組み込まれるよう、 directoryコマンドに適切な引数を指定して実行します。 すべてのディレクトリを、 1回のコマンド実行で追加することができます。


Node:Machine Code, Previous:Source Path, Up:Source

ソースとマシン・コード

info lineコマンドを使用してソース行をプログラム・アドレスに (あるいは、 プログラム・アドレスをソース行に) 対応付けすることができます。 また、 disassembleコマンドを使用して、 あるアドレス範囲をマシン命令として表示することもできます。 GNU Emacsモードで実行されている場合、 現在のinfo lineコマンドは、 指定された行を示す矢印を表示します。 また、 info lineコマンドは、 アドレスを16進形式だけではなくシンボリック形式でも表示します。

info line linespec
ソース行linespecに対応するコンパイル済みコードの開始アドレス、 終了アドレスを表示します。 listコマンド (see Printing source lines) が理解できる任意の形式によってソース行を指定することができます。

例えば、 info lineコマンドによって、 関数m4_changequoteの最初の行に対応するオブジェクト・コードの位置を知ることができます。

(gdb) info line m4_changecom
Line 895 of "builtin.c" starts at pc 0x634c and ends at 0x6350.

また、 (linespecの形式として*addrを使用することで) ある特定のアドレスがどのソース行に含まれているのかを問い合わせることができます。

(gdb) info line *0x63ff
Line 926 of "builtin.c" starts at pc 0x63e4 and ends at 0x6404.

info lineの実行後、 xコマンドのデフォルト・アドレスは、 その行の先頭アドレスに変更されます。 これにより、 マシン・コードの調査を開始するにはx/iを実行するだけで十分となります (see Examining memory)。 また、 このアドレスはコンビニエンス変数$_の値として保存されます (see Convenience variables)。

disassemble
この特殊コマンドは、 あるメモリ範囲をマシン命令としてダンプ出力します。 デフォルトのメモリ範囲は、 選択されたフレームにおいてプログラム・カウンタが指している箇所を含む関数です。 このコマンドに引数を1つ渡すと、 それはプログラム・カウンタ値を指定することになります。 GDBは、 その値が指す箇所を含んでいる関数をダンプ出力します。 2つの引数を渡すと、 ダンプ出力するアドレス範囲 (1つめのアドレスは含まれますが、 2つめのアドレスは含まれません) を指定することになります。

以下の例は、 あるアドレス範囲のHP PA-RISC 2.0コードを逆アセンブルした結果を示しています。

(gdb) disas 0x32c4 0x32e4
Dump of assembler code from 0x32c4 to 0x32e4:
0x32c4 <main+204>:      addil 0,dp
0x32c8 <main+208>:      ldw 0x22c(sr0,r1),r26
0x32cc <main+212>:      ldil 0x3000,r31
0x32d0 <main+216>:      ble 0x3f8(sr4,r31)
0x32d4 <main+220>:      ldo 0(r31),rp
0x32d8 <main+224>:      addil -0x800,dp
0x32dc <main+228>:      ldo 0x588(r1),r26
0x32e0 <main+232>:      ldil 0x3000,r31
End of assembler dump.

アーキテクチャによっては、 一般に使用される命令ニーモニックを複数持つものや、 異なる構文を持つものがあります。

set assembly-language instruction-set
disassembleコマンドまたはx/iコマンドによってプログラムの逆アセンブルを行う際に使用する 命令セットを選択します。

現在のところ、 このコマンドは、 Intel x86ファミリに対してのみ定義されています。 instruction-setは、 i386i8086のいずれかにセットすることができます。 デフォルトはi386です。


Node:Data, Next:, Previous:Source, Up:Top

データの検査

ユーザ・プログラムの中のデータを調べる通常の方法は、 printコマンド (省略形はp)、 またはそれと同義のコマンドである inspectコマンドを使用することです。 これは、 ユーザ・プログラムが記述された言語 (see Using GDB with Different Languages) による式を評価し、 その値を出力するものです。

print exp
print /f exp
expは (ソース言語による) 式です。 デフォルトでは、 expの値は、 expのデータ型にとって適切な形式で表示されます。 /fを指定することで、 他の形式を選択することも可能です。 /ffは形式を指定する文字です。 see Output formats
print
print /f
expを省略すると、 GDBは値ヒストリ (see Value history) の最後の値を再表示します。 これは、 同じ値を異なる形式で調べるのに便利です。

データを調べるためのより低レベルの方法は、 xコマンドを使うことです。 これは、 指定されたアドレスのメモリ上のデータを、 指定された形式で表示するものです。 See Examining memory

型に関する情報に関心があるとき、 また、 構造体 やクラス のフィールドがどのように宣言されているかという点に関心があるときは、 printコマンドではなくptype expコマンドを使用してください。 See Examining the Symbol Table


Node:Expressions, Next:, Previous:Data, Up:Data

printコマンド、 および、 ほかの多くのGDBコマンドは、 式を受け取って、 その値を評価します。 ユーザの使用しているプログラミング言語によって定義されている定数、 変数、 演算子は、 いずれもGDBにおける式の中で有効です。 これには、 条件式、 関数呼び出し、 キャスト、 文字列定数が含まれます。 しかし、 プリプロセッサの#defineコマンドによって定義されるシンボルは、 残念ながら含まれません。

現在のGDBは、 ユーザの入力する式において配列定数をサポートします。 その構文は、 {element, element...}です。 例えば、 コマンドprint {1, 2, 3}を使用して、 ターゲット・プログラム内でmalloc()によって獲得されたメモリ内に配列を作成することができます。

C言語は大変広汎に使用されているので、 このマニュアルの中で示される例の中の式はC言語で記述されています。 他の言語での式の使い方に関する情報については、 See Using GDB with Different Languages

この節では、 プログラミング言語によらずGDBの式で使用できる演算子を説明します。

キャストは、 C言語のみならず、 すべての言語でサポートされています。 これは、 メモリ内のあるアドレスにある構造体を調べるのに、 数値をポインタにキャストするのが大変便利であるからです。

プログラミング言語によらず共通に使用可能な演算子に加えて、 GDBは以下の演算子をサポートしています。

@
@は、 メモリの一部を配列として処理するための2項演算子です。 詳細については、 See Artificial arrays
::
::によって、 それを定義している関数またはファイルを特定して、 変数を指定することができます。 See Program variables
{type} addr
addrで示されるメモリ上のアドレスに格納されている、 typeで示される型のオブジェクトを参照します。 addrには、 評価結果が整数値またはポインタになるような任意の式を指定することができます (ただし、 2項演算子の前後には、 キャストを使う場合と同様の括弧が必要です)。 これは、 addrの位置に通常存在するデータの型がいかなるものであろうとも、 使用することができます。


Node:Variables, Next:, Previous:Expressions, Up:Data

プログラム変数

最も一般的に使用される式は、 ユーザ・プログラム内部の変数名です。

式の中の変数は、 選択されたスタック・フレーム (see Selecting a frame) 内において解釈されます。 これは、 以下の2つのいずれかとなります。

あるいは

つまり、 以下の例において、 ユーザ・プログラムが関数fooを実行中は、 変数aを調べたり使用したりすることができますが、 変数bを使用したり調べたりすることができるのは、 bが宣言されているブロックの内部をユーザ・プログラムが実行中である場合に限られます。

foo (a)
     int a;
{
  bar (a);
  {
    int b = test ();
    bar (b);
  }
}

ただし、 これには1つ例外があります。 特定の1ソース・ファイルをスコープとする変数や関数は、 たとえ現在の実行箇所がそのファイルの中ではなくても、 参照することができます。 しかし、 このような変数または関数が (異なるソース・ファイル中に) 同じ名前で複数個存在するということがありえます。 このような場合、 その名前を参照すると予期できない結果をもたらします。 2つのコロンを並べる記法によって、 特定の関数またはファイルの中の静的変数を指定することができます。

file::variable
function::variable

ここでfileまたはfunctionは、 静的変数variableのコンテキスト名です。 ファイル名の場合は、 引用符を使用することによって、 GDBがファイル名を確実に1つの単語として解釈するようにさせることができます。 例えば、 ファイルf2.cの中で定義されたグローバル変数xの値を表示するには、

(gdb) p 'f2.c'::x

のようにします。

このような::の用途が、 これと非常によく似ているC++における::の用途と衝突することは非常に稀です。 GDBは、 式の内部においてC++のスコープ解釈演算子の使用もサポートしています。

注意: ときどき、 新しいスコープに入った直後やスコープから出る直前に、 関数内部の特定の箇所から見ると、 ローカル変数の値が正しくないように見えることがあります。
マシン命令単位でステップ実行を行っているときに、 このような問題を経験することがあるかもしれません。 これは、 ほとんどのマシンでは、 (ローカル変数定義を含む) スタック・フレームのセットアップに複数の命令が必要となるからです。 マシン命令単位でステップ実行を行う場合、 スタック・フレームが完全に構築されるまでの間は、 変数の値が正しくないように見えることがあります。 スコープから出るときには、 スタック・フレームを破棄するのに、 通常複数のマシン命令が必要とされます。 それらの命令群の中をステップ実行し始めた後には、 ローカル変数の定義は既に存在しなくなっているかもしれません。

このようなことは、 コンパイラが重要な最適化を実施する場合にも、 発生する可能性があります。 常に正確な値が見えることを確実にするためには、 コンパイルの際に、 すべての最適化を行わないようにします。


Node:Arrays, Next:, Previous:Variables, Up:Data

人工配列

メモリ内に連続的に配置されている同一型のオブジェクトを表示することが役に立つことがよくあります。 配列の一部や動的にサイズの決定される配列にアクセスするのに、 そこへのポインタしかプログラム内部に存在しないような場合です。

これは、 2項演算子@を使用して、 連続したメモリ範囲を人工配列として参照することで可能です。 @の左側のオペランドは、 参照したい配列の最初の要素で、 かつ、 1個のオブジェクトでなければなりません。 また、 右側のオペランドは、 その配列の中の参照したい部分の長さでなければなりません。 結果は、 その要素がすべて左側の引数と同型である配列の値です。 第1の要素は左側の引数そのものです。 第2の要素は、 第1の要素を保持するメモリ域の直後のメモリ上から取られます。 これ以降の要素も同様です。 以下に例を示します。 プログラムが以下のようになっているとしましょう。

int *array = (int *) malloc (len * sizeof (int));

以下を実行することで、 arrayの内容を表示することができます。

p *array@len

@の左側のオペランドは、 メモリ上に実在するものでなければなりません。 このような方法で@によって作成された配列の値は、 配列の添字付けの見地からは他の配列と同様に振る舞い、 式の中で使用された場合は強制的にポインタとして扱われます。 人工配列は、 一度表示された後、 値ヒストリ (see Value history) を通して式の中に現れることがよくあります。

人工配列を作成するもう1つの方法は、 キャストを使用することです。 これによって、 ある値を配列として解釈し直します。 この値は、 メモリ上に実在するものでなくてもかまいません。

(gdb) p/x (short[2])0x12345678
$1 = {0x1234, 0x5678}

ユーザの便宜を考慮して、 (例えば、 (type[])valueのように) 配列の長さが省略された場合 その値を満たすサイズを (sizeof(value)/sizeof(type)のように) GDBが計算します。

(gdb) p/x (short[])0x12345678
$2 = {0x1234, 0x5678}

ときには、 人工配列の機構では十分でないことがあります。 かなり複雑なデータ構造では、 関心のある要素が連続的に並んでいないことがあります。 例えば、 配列の中のポインタの値に関心がある場合です。 このような状況において役に立つ回避策の1つに、 関心のある値のうち最初のものを表示する式の中のカウンタとしてコンビニエンス変数 (see Convenience variables) を使用し、 <RET>キーによってその式を繰り返し実行することです。 例えば、 構造体へのポインタの配列dtabがあり、 個々の構造体のフィールドfvの値に関心があるとしましょう。 以下に、 この場合の例を示します。

set $i = 0
p dtab[$i++]->fv
<RET>
<RET>
...


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出力フォーマット

デフォルトでは、 GDBはデータの型にしたがって値を表示します。 ときには、 これが望ましくない場合もあります。 例えば、 数値を16進で表示したい場合やポインタを10進で表示したい場合があるでしょう。 あるいは、 メモリ内のある特定のアドレスのデータを文字列や命令として表示させたい場合もあるでしょう。 このようなことをするためには、 値を表示するときに出力フォーマットを指定します。

出力フォーマットの最も単純な使用方法は、 既に評価済みの値の表示方法を指定することです。 これは、 printコマンドの最初の引数をスラッシュとフォーマット文字で開始することで行います。 サポートされているフォーマット文字は、 以下のとおりです。

x
値を整数値とみなし、 16進で表示します。
d
値を符号付き10進の整数値として表示します。
u
値を符号なし10進の整数値として表示します。
o
値を8進の整数値として表示します。
t
値を2進の整数値として表示します。 tはtwoを省略したものです。 1
a
値を、 16進の絶対アドレス、 および、 そのアドレスより前にあるシンボルのうち最も近い位置にあるものからのオフセット・アドレスとして表示します。 このフォーマットを使用することで、 未知のアドレスがどこに (どの関数の中に) あるのかを知ることができます。
(gdb) p/a 0x54320
$3 = 0x54320 <_initialize_vx+396>

c
値を整数値とみなし、 文字定数として表示します。
f
値を浮動小数点数値とみなし、 典型的な浮動小数点の構文で出力します。

例えば、 プログラム・カウンタの値を16進数で表示する (see Registers) には、 以下を実行してください。

p/x $pc

スラッシュの前にはスペースが必要ではないことに注意してください。 これは、 GDBのコマンド名にはスラッシュを含めることができないからです。

値ヒストリの最後の値を異なる形式で再表示するには、 printコマンドに対して式を指定せずにフォーマットだけを指定して実行します。 例えば、 p/xを実行すると最後の値を16進で再表示します。


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メモリの調査

コマンドx (examineのx) を使用することで、 ユーザ・プログラム内のデータ型にかかわらず、 メモリ上の値をいくつかの形式で調べることができます。

x/nfu addr
x addr
x
メモリ上の値を調べるにはxコマンドを使用してください。

nfuはいずれも、 どれだけのメモリをどのようにフォーマットして表示するかを指定するための、 必須ではないパラメータです。 addrは、 メモリの表示を開始するアドレスを指定する式です。 nfuの部分にデフォルトを使用するのであれば、 スラッシュ/は必要ありません。 いくつかのコマンドによって、 addrに対して便利なデフォルト値を指定することができます。

n(繰り返し回数)
繰り返し回数は10進の整数値です。 デフォルトは1です。 これによって、 (単位uの) メモリをどれだけ表示するかを指定します。
f(表示フォーマット)
表示フォーマットには、 printコマンドによって使用されるフォーマット、 s(NULL文字で終了する文字列)、 i(マシン命令) のいずれかを指定します。 初期状態では、 デフォルトはx (16進) です。 デフォルトは、 xコマンドまたはprintコマンドを実行するたびに変更されます。
u(メモリ・サイズの単位)
単位の大きさは以下のいずれかになります。
b
バイト
h
ハーフ・ワード(2バイト)
w
ワード(4バイト)--これが初期状態のデフォルトです。
g
ジャイアント・ワード(8バイト)

xコマンド実行時に単位の大きさを指定するたびに、 その大きさが、 次にxコマンドを実行する際のデフォルトになります (フォーマットsおよび iについては、 単位の大きさは無視されます。 これらについては、 通常、 単位の大きさを指定しません)。

addr(表示を開始するアドレス)
addrは、 GDBにメモリの表示を開始させたいアドレスです。 この式は、 必ずしもポインタ値を持つ必要はありません (ポインタ値を持つことも可能です)。 これは常に、 メモリ内のある1バイトを指す整数値のアドレスとして解釈されます。 式に関する詳細については、 See Expressionsaddrのデフォルトは通常、 最後に調べられたアドレスの次のアドレスになります。 しかし、 ほかのコマンドによってもデフォルトのアドレスが設定されます。 該当するコマンドは、 info breakpoints (デフォルトは、 最後に表示されたブレイクポイントのアドレスに設定されます)、 info line (デフォルトは、 行の先頭アドレスに設定されます)、 およびprintコマンド (メモリ内の値を表示するのに使用した場合) です。

例えば、 x/3uh 0x54320は、 先頭アドレス0x54320から始めて、 メモリ上の3個のハーフ・ワード (h) の値を、 符号なし10進整数値 (u) としてフォーマットして表示するよう求める要求です。 また、 x/4xw $spは、 スタック・ポインタ ($spについては、 see Registers) の上位4ワード (w) のメモリの内容を16進 (x) で表示します。

単位の大きさを示す文字と出力フォーマットを指定する文字とは異なるので、 単位の大きさとフォーマットのどちらが前にくるべきかを記憶しておく必要はありません。 どちらを先に記述しても動作します。 4xwという出力指定と4wxという出力指定とは、 全く同一の意味を持ちます (ただし、 繰り返し回数nは最初に指定しなければなりません。 wx4ではうまく動きません)。

単位の大きさuは、 フォーマットsおよびiについては無視されますが、 繰り返し回数nを使用したいことがあるかもしれません。 例えば、 3iはオペランドも含めて3つのマシン命令を表示したいということを指定しています。 disassembleコマンドは、 マシン命令を調べる別の方法を提供してくれます。 See Source and machine code

xコマンドへの引数のデフォルトはすべて、 xコマンドを使用してメモリ上を連続的に参照するために最少の情報だけを指定すればよいように設計されています。 例えば、 x/3i addrによってマシン命令を調べた後、 x/7とするだけで、 続く7個のマシン命令を調べることができます。 <RET>キーによってxコマンドを繰り返し実行する場合は、 前回の繰り返し回数nが再度使用されます。 その他の引数も、 後続のxコマンド使用時のデフォルトになります。

xコマンドによって表示されるアドレスや内容は、 値ヒストリに保存されません。 これらの数がしばしば膨大になり、 邪魔になるからです。 その代わりにGDBは、 これらの値をコンビニエンス変数$_および$__の値として、 後続の式の内部で使用できるようにします。 xコマンドを実行後、 最後に調べられたアドレスは、 コンビニエンス変数$_の値として式の中で使用することができます。 また、 GDBによって調べられたそのアドレスの内容は、 コンビニエンス変数$__の値として使用可能です。

xコマンドに繰り返し回数が指定されている場合、 保存されるのは、 最後に表示されたメモリ単位のアドレスとその内容です。 これは、 最後の出力行にいくつかのメモリ単位が表示されている場合は、 最後に表示されたアドレス値と一致しません。


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自動表示

ある1つの式の値を (それがどのように変化するかを見るために) 頻繁に表示したい場合は、 その式を自動表示リストに加えて、 ユーザ・プログラムが停止するたびに、 GDBがその値を表示するようにするとよいでしょう。 リストに加えられた個々の式には、 それを識別するための番号が割り当てられます。 ある式をリストから削除する際に、 その番号を指定します。 自動表示は、 例えば以下のように表示されます。

2: foo = 38
3: bar[5] = (struct hack *) 0x3804

ここでは、 項目番号、 式、 および、 その式の現在の値が表示されます。 xコマンドやprintコマンドによって手動で表示を要求する場合と同様、 好みの出力フォーマットを指定することができます。 実は、 displayコマンドは、 ユーザのフォーマットの指定の詳細度によって、 printコマンドとxコマンドのいずれを使用するかを決定しています。 単位の大きさが指定された場合や、 xコマンドでしかサポートされていない2つのフォーマット (is) のいずれかが指定された場合には、 xコマンドが使用されます。 それ以外の場合は、 printコマンドが使用されます。

display exp
ユーザ・プログラムが停止するたびに表示される式のリストに、 式expを追加します。 See Expressions

コマンドの実行後に<RET>キーを押しても、 displayコマンドは繰り返し実行されません。

display/fmt exp
fmtの部分に、 大きさや繰り返し回数は指定せず、 出力フォーマットだけを指定した場合は、 式expを自動表示リストに追加して、 出力時のフォーマットが常に、 指定されたフォーマットfmtになるよう調整します。 See Output formats
display/fmt addr
fmtの部分にisを指定した場合、 あるいは、 単位の大きさ、 単位の数を指定した場合は、 ユーザ・プログラムが停止するたびに調べるメモリ・アドレスとして式addrを追加します。 ここで「調べる」というのは、 実際にはx/fmt addrを実行することを意味します。 See Examining memory

例えば、 display/i $pcは、 ユーザ・プログラムが停止するたびに、 次に実行されるマシン命令を見るのに便利です ($pcは、 プログラム・カウンタを指すのに一般に使用される名前です。 see Registers)。

undisplay dnums...
delete display dnums...
表示すべき式のリストから、 項目番号dnumsに対応する要素を削除します。

undisplayコマンドを実行後に<RET>キーを押しても、 コマンドは再実行されません (仮に再実行されてしまうとすると、 No display number ...というエラーになるだけです)。

disable display dnums...
項目番号dnumsの表示を不可にします。 表示不可にされた表示項目は自動的には表示されませんが、 削除されたわけではありません。 後に、 表示可能にすることができます。
enable display dnums...
項目番号dnumsの表示を可能にします。 これにより、 表示不可が指定されるまで、 式の自動表示が再度有効になります。
display
リスト上の式のカレントな値を表示します。 これは、 ユーザ・プログラムが停止したときに実行されるのと同一の処理です。
info display
自動的に表示されるよう設定された式のリストを表示します。 個々の式の項目番号は表示されますが、 値は表示されません。 このリストには、 表示不可になっている式も含まれ、 そのことが分かるようにマーク付けされています。 また、 表示されるリストには、 その時点ではアクセスできない自動変数を参照しているために、 その時点では値を表示することのできない式も含まれます。

表示される式がローカル変数への参照を含む場合、 そのローカル変数がセットアップされているコンテキストの範囲外では、 その式は無意味です。 このような式は、 その中の変数の1つでも定義されないコンテキストが実行開始されると表示不可になります。 例えば、 引数last_charを取る関数の内部でdisplay last_charコマンドを実行すると、 その関数の内部でユーザ・プログラムが実行を停止し続ける間は、 GDBはこの引数を表示します。 ほかの箇所 (last_charという変数が存在しない箇所) で停止したときには、 自動的に表示不可となります。 次にユーザ・プログラムがlast_charが意味を持つ箇所で停止したときには、 再びその式の表示を可能にすることができます。


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表示設定

GDBは、 配列、 構造体、 シンボルをどのように表示するかを制御するための方法を提供しています。

これらの設定は、どのプログラミング言語で記述されたプログラムのデバッグにも便利です。

set print address
set print address on
これによりGDBは、 メモリ・アドレスの内容を表示する場合でも、 スタック・トレース、 構造体の値、 ポインタの値、 ブレイクポイントなどの位置を示すアドレスを表示します。 デフォルトはonです。 例として、 set print address onのときのスタック・フレームの表示結果を示します。
(gdb) f
#0  set_quotes (lq=0x34c78 "<<", rq=0x34c88 ">>")
    at input.c:530
530         if (lquote != def_lquote)

set print address off
アドレスの内容を表示するときには、 そのアドレスを表示しません。 例えば、 set print address offのときに前の例と同一のスタック・フレームを表示すると、 以下のようになります。
(gdb) set print addr off
(gdb) f
#0  set_quotes (lq="<<", rq=">>") at input.c:530
530         if (lquote != def_lquote)

set print address offを使用することで、 GDBのインターフェイスからマシンに依存する表示を取り除くことができます。 例えば、 print address offを指定してあれば、 ポインタ引数の有無にかかわらず、 すべてのマシン上において同一のバックトレース情報を得るはずです。

show print address
アドレスが表示されるか否かを示します。
GDBがシンボリックなアドレスを表示する際には通常、 そのアドレスの前にある最も近い位置のシンボルと、 そのシンボルからのオフセットを表示します。 そのシンボルによってアドレスが一意に決まらない場合 (例えば、 単一のファイル内でのみ有効な名前である場合) には、 確認の必要があるかもしれません。 1つの方法は、 例えばinfo line *0x4537のように、 info lineコマンドを実行することです。 または、 シンボリックなアドレスを表示するときに、 一緒にソース・ファイルや行番号を表示するようGDBを設定する方法もあります。
set print symbol-filename on
シンボリックな形式のアドレスの表示において、 そのシンボルのソース・ファイル名と行番号を表示するようGDBに通知します。
set print symbol-filename off
シンボルのソース・ファイル名と行番号を表示しません。これがデフォルトです。
show print symbol-filename
シンボリックな形式でのアドレス表示において、 GDBがそのシンボルのソース・ファイル名と行番号を表示するか否かを示します。

シンボルのソース・ファイル名と行番号を表示するのが役に立つもう1つの状況として、 コードを逆アセンブルする場合があります。 GDBが、 個々の命令に対応する行番号とソース・ファイルを表示してくれます。

また、 アドレスをシンボリック形式で表示させるのは、 そのアドレスと、 そのアドレスより前にあるシンボルのうち、 そのアドレスに最も近い位置にあるものとの間が適度に接近している場合に限定させたい こともあるもでしょう。

set print max-symbolic-offset max-offset
アドレスと、 そのアドレスより前にある最も近いシンボルの間のオフセットがmax-offset未満のときのみ、 そのアドレスをシンボリックな形式で表示するようGDBに通知します。 デフォルトは0で、 これはGDBに対して、 アドレスより前にシンボルがある場合には、 常にそのアドレスをシンボリックな形式で表示するよう通知します。
show print max-symbolic-offset
GDBがシンボリックなアドレスを表示する上限となる、 最大のオフセット値を問い合わせます。

あるポインタがどこを指しているか定かではない場合には、 set print symbol-filename onを試みてください。 こうすれば、 p/a pointerを使用して、 そのポインタが指している変数の名前とソース・ファイル上の位置が分かります。 これは、 アドレスをシンボリック形式で解釈します。 例えば以下の例では、 ある変数pttがファイルhi2.c内で定義された別の変数tを指していることを、 valueGDBNが教えてくれています。

(gdb) set print symbol-filename on
(gdb) p/a ptt
$4 = 0xe008 <t in hi2.c>
注意: ローカル変数を指すポインタについては、 たとえ適切なset printオプションが有効になっていても、 p/aはそのポインタによって参照される変数のシンボル名やファイル名を表示しません。

異なる種類のオブジェクトについては、 他の設定によって表示方法が制御されます。

set print array
set print array on
配列をきれいに表示します。 このフォーマットは読むのには便利ですが、 より多くのスペースを取ります。 デフォルトはoffです。
set print array off
配列を詰め込み形式で表示します。
show print array
配列の表示方法として、 詰め込み形式ときれいな形式のどちらが選択されているかを示します。
set print elements number-of-elements
GDBによって表示される配列の要素の数に上限を設定します。 GDBが大きな配列を表示している際に、 表示された要素の数がset print elementsコマンドで設定された数に達すると、 そこで表示が停止されます。 この上限は、 文字列の表示にも適用されます。 number-of-elementsに0をセットすると、 要素は無制限に表示されます。
show print elements
大きな配列を表示する際にGDBが表示する要素数を示します。 0の場合、 表示される要素数に制限はありません。
set print null-stop
最初にNULLが検出された時点で、 GDBに文字配列の表示を停止させます。 これは、 大きな配列が実際には短い文字列しか含んでいないときに役に立ちます。
set print pretty on
構造体を表示する際に、 インデントされた形式で1行に1メンバずつGDBに表示させます。 以下に例を示します。
$1 = {
  next = 0x0,
  flags = {
    sweet = 1,
    sour = 1
  },
  meat = 0x54 "Pork"
}

set print pretty off
構造体を詰め込み形式でGDBに表示させます。 以下に例を示します。
$1 = {next = 0x0, flags = {sweet = 1, sour = 1}, \
meat = 0x54 "Pork"}

これがデフォルトの形式です。

show print pretty
GDBが、 構造体を表示するのにどちらの形式を使用しているかを示します。
set print sevenbit-strings on
7ビット文字だけを使用して表示します。 このオプションがセットされていると、 GDBは (文字列内または単一文字内の) 8ビット文字を\nnnという表記法で表示します。 この設定は、英語 (ASCII) 環境において、 文字の最上位ビットをマーカや「メタ」ビットとして使用する場合に最適です。
set print sevenbit-strings off
8ビット文字を表示します。 これにより文字セットの使用が国際的になります。 これがデフォルトです。
show print sevenbit-strings
GDBが7ビット文字だけを表示するか否かを示します。
set print union on
GDBに対して、 構造体の中に含まれている共用体を表示するよう通知します。 これが、 デフォルトの設定です。
set print union off
GDBに対して、 構造体の中に含まれている共用体を表示しないよう通知します。
show print union
GDBに対して、 構造体の中に含まれている共用体を表示するか否かを問い合わせます。

例えば、 以下のように宣言されている場合、

typedef enum {Tree, Bug} Species;
typedef enum {Big_tree, Acorn, Seedling} Tree_forms;
typedef enum {Caterpillar, Cocoon, Butterfly}
              Bug_forms;

struct thing {
  Species it;
  union {
    Tree_forms tree;
    Bug_forms bug;
  } form;
};

struct thing foo = {Tree, {Acorn}};

set print union onが有効な場合、 p fooは以下のような表示を行います。

$1 = {it = Tree, form = {tree = Acorn, bug = Cocoon}}

また、 set print union offが有効な場合、 p fooは以下のような表示を行います。

$1 = {it = Tree, form = {...}}

以下の設定は、 C++プログラムをデバッグしているときに関係があります。

set print demangle
set print demangle on
C++のシンボル名を、 型セーフ(type-safe)なリンクのためにアセンブラ、 リンカに渡されるエンコードされた (mangled) 形式ではなく、 ソースに記述された形式で表示します。 デフォルトはonです。
show print demangle
C++のシンボル名が、 エンコードされた (mangled) 形式、 ソース (demangled) 形式のいずれの形式で表示されるかを示します。
set print asm-demangle
set print asm-demangle on
C++のシンボル名を、 命令の逆アセンブル時のようにアセンブラ・コードで表示しているときにも、 エンコードされた (mangled) 形式ではなく、 ソース形式で表示します。 デフォルトはoffです。
show print asm-demangle
アセンブラ・コードの表示において、 C++シンボル名をエンコードされた (mangled) 形式、 ソース (demangled) 形式のいずれの形式で表示するかを示します。
set demangle-style style
C++シンボル名を表現するために様々なコンパイラによって使用される いくつかのエンコーディング方式の中から1つを選択します。 現在styleとして選択可能であるのは、以下のとおりです。
auto
GDBがユーザ・プログラムを解析してデコーディング方式を決定することを許します。
gnu
GNU C++(g++)エンコーディング・アルゴリズムに基づいてデコードします。 これが、 デフォルトです。
hp
HP ANSI C++(aCC)エンコーディング・アルゴリズムに基づいてデコードします。
lucid
Lucid C++(lcc)エンコーディング・アルゴリズムに基づいてデコードします。
arm
C++ Annotated Reference Manualに記述されているアルゴリズムを使用してデコードします。 注意: この設定だけでは、 cfrontによって生成された実行モジュールをデバッグするのに十分ではありません。 これを可能にするためには、 GDBをさらに拡張する必要があります。
styleを指定しないと、 指定可能なフォーマットの一覧が表示されます。
show demangle-style
C++シンボルをデコードするのに現在使用されているエンコーディング方式を示します。
set print object
set print object on
オブジェクトへのポインタを表示する際に、 仮想関数テーブルを使用して、 宣言された型ではなく、 オブジェクトの実際の (派生された) 型を表示します。
set print object off
仮想関数テーブルは参照せず、 オブジェクトの宣言された型だけを表示します。 これがデフォルトの設定です。
show print object
オブジェクトの実際の型と宣言された型のどちらが表示されるかを示します。
set print static-members
set print static-members on
C++のオブジェクトを表示する際、 静的メンバを表示します。 デフォルトはonです。
set print static-members off
C++のオブジェクトを表示する際、 静的メンバを表示しません。
show print static-members
C++の静的メンバが表示されるか否かを示します。
set print vtbl
set print vtbl on
C++の仮想関数テーブルをきれいな形式で表示します。 デフォルトはoffです。
set print vtbl off
C++の仮想関数テーブルをきれいな形式で表示しません。
show print vtbl
C++の仮想関数テーブルをきれいな形式で表示するか否かを示します。


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値ヒストリ

printコマンドにより表示された値は、 GDBの 値ヒストリに保存されます。 これによりユーザは、 これらの値をほかの式の中で参照することができます。 値は、 シンボル・テーブルが (例えば、 fileコマンドやsymbol-fileコマンドにより) 再読み込みされるか破棄されるまで、 維持されます。 シンボル・テーブルが変更されると、 値ヒストリが破棄されるのは、 その中の値が、 シンボル・テーブル内で定義されている型を参照しているかもしれないからです。

表示される値はヒストリ番号を与えられ、 この番号によって参照することができます。 この番号は1から始まる連続した整数です。 printコマンドは、 値に割り当てられたヒストリ番号を、 値の前に$num = という形で表示します。 ここで、 numがそのヒストリ番号です。

値ヒストリの中の任意の値を参照するには、 $に続けてヒストリ番号を指定します。 printコマンドが出力に付加するラベルは、 ユーザにこのことを知らせるためのものです。 $単体では、 ヒストリ内の最も新しい値を参照し、 $$はその1つ前の値を参照します。 $$nは、 最新のものから数えてn番目の値を参照します。 $$2$$の1つ前の値を参照し、 $$1$$と同一、 $$0$と同一です。

例えば、 ユーザがたった今、 構造体へのポインタを表示し、 今度はその構造体の内容を見たいと考えているとしましょう。 この場合は、

p *$

を実行すれば十分です。

また、 連結された構造体があり、 そのメンバのnextが次の構造体を指すポインタであるとすると、 次の構造体の内容を表示するには、

p *$.next

とします。

このように連結された構造体を次々に表示するには、 このコマンドを繰り返し実行すればよく、 それは<RET>キーによって可能です。

このヒストリは、 式ではなく、 値を記録するという点に注意してください。 xの値が4のときに、 以下のコマンドを実行すると、 printコマンドによって値ヒストリに記録される値は、 xの値が変化したにもかかわらず4のままです。

print x
set x=5
show values
値ヒストリ内の最新の10個の値を、 項目番号付きで表示します。 これは、 p $$9を10回実行するようなものですが、 両者の違いは、 show valuesがヒストリを変更しないという点にあります。
show values n
値ヒストリ内の項目番号nを中心に、 その前後の10個の値を表示します。
show values +
値ヒストリ内の値のうち最後に表示されたものの直後にある10個の値を表示します。 値が存在しない場合には、 何も表示されません。

show values nを繰り返し実行するのに<RET>キーを押すことは、 show values +を実行するのと全く同じ結果をもたらします。


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コンビニエンス変数

GDBのコンビニエンス変数は、 GDBの中にある値を保持しておいて、 それを後に参照するという目的で使用することができます。 これらの変数は、 GDB内部においてのみ存在するものです。 それらはユーザ・プログラムの中に存在するものではなく、 コンビニエンス変数を設定してもユーザ・プログラムの実行には直接影響を与えません。 したがって、 ユーザはこれを自由に使用することができます。

コンビニエンス変数名は、 先頭が$で始まります。 $で始まる名前は、 あらかじめ定義されたマシン固有のレジスタ名 (see Registers) と一致しない限り、 コンビニエンス変数の名前として使用することができます (これに対して、 値ヒストリの参照名では$に続けて番号を記述します。 See Value history)。

ユーザ・プログラムの中で変数に値を設定するのと同じように、 代入式を使用してコンビニエンス変数に値を保存することができます。 例えば、 object_ptrが指すオブジェクトが保持する値を$fooに保存するには、 以下のようにします。

set $foo = *object_ptr

コンビニエンス変数は、 最初に使用されたときに生成されますが、 新しい値を割り当てるまで、 その値は空 (void) です。 値は、 いつでも代入することによって変更可能です。

コンビニエンス変数には決まった型はありません。 コンビニエンス変数には、 既に異なる型のデータが割り当てられている場合でも、 構造体や配列を含めた任意の型のデータを割り当てることができます。 コンビニエンス変数は、 式として使用される場合には、 その時点における値の型を持ちます。

show convenience
それまでに使用されたコンビニエンス変数とその値の一覧を表示します。 省略形は、 show conです。

コンビニエンス変数の1つの使い方に、 インクリメントされるカウンタや先へ進んでいくポインタとしての使い方があります。 例えば、 構造体配列の中の連続する要素のあるフィールドの値を表示したい場合、 以下のコマンドを<RET>キーで繰り返し実行します。

set $i = 0
print bar[$i++]->contents
GDBによって、 いくつかのコンビニエンス変数が自動的に作成され、 役に立ちそうな値が設定されます。
$_
$_変数には、 xコマンドによって最後に調べられたアドレスが自動的に設定されます (see Examining memory)。 xコマンドによって調べられるデフォルトのアドレスを提供する他のコマンドも、 $_にそのアドレスを設定します。 このようなコマンドには、 info lineinfo breakpointがあります。 $_の型は、 xコマンドによって設定された場合は$__の型へのポインタであり、 それ以外の場合はvoid *です。
$__
$__変数には、 xコマンドによって最後に調べられたアドレス位置にある値が自動的に設定されます。 型は、 データが表示されたフォーマットに適合するように選択されます。
$_exitcode
$_exitcode変数には、 デバッグされているプログラムが終了した際の終了コードが自動的に設定されます。


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レジスタ

マシン・レジスタの内容は、 先頭が$で始まる名前を持つ変数として、 式の中で参照することができます。 レジスタの名前は、 マシンによって異なります。 info registersコマンドを使用することで、 そのマシンで使用されているレジスタの名前を知ることができます。

info registers
(選択されたスタック・フレームにおける) 浮動小数点レジスタを除くすべてのレジスタの名前と値を表示します。
info all-registers
浮動小数点レジスタも含めてすべてのレジスタの名前と値を表示します。
info registers regname ...
指定されたレジスタregname相対化された値(relativized value)を表示します。 以下に詳しく述べるように、 レジスタの値は、 通常は、 選択されたスタック・フレームと関係を持つ相対的な値です。 regnameには、 ユーザの使用しているマシン上において有効な任意のレジスタの値が設定可能です。 先頭の$は、 あってもなくてもかまいません。
GDBは、 そのマシン・アーキテクチャが持つレジスタの正規のニーモニックと衝突しない限り、 ほとんどのマシン上 (の式の中) において利用可能な、 4つの「標準的」なレジスタ名を持っています。 レジスタ名$pc$spは、 プログラム・カウンタ・レジスタとスタック・ポインタを指すために使われます。 $fpは、 カレントなスタック・フレームへのポインタを保持するレジスタを指すために使われます。 $psは、 プロセッサの状態を保持するレジスタを指すために使われます。 例えば、 プログラム・カウンタの値を16進数で表示するには、 以下のように実行します。
p/x $pc

また、 次に実行される命令を表示するには、 以下のように実行します。

x/i $pc

さらに、 スタック・ポインタ 2 に4を加えるには、 以下のように実行します。

set $sp += 4

可能な場合にはいつでも、 これら4つの標準的なレジスタ名が使用可能です。 ユーザのマシンが異なる正規のニーモニックを使用している場合でも、 名前の衝突さえ起こらなければ、 使用可能です。 info registersコマンドにより、 正規名を見ることができます。 例えば、 SPARC上で info registersコマンドを実行すると、 プロセッサ・ステータス・レジスタは$psrと表示されますが、 このレジスタを$psとして参照することもできます。

レジスタがこの方法で調べられるとき、 GDBは普通のレジスタの内容を常に整数値とみなします。 マシンによっては、 浮動小数点値以外を保持できないレジスタを持つものがあります。 このようなレジスタは、 浮動小数点値を持つものとみなされます。 普通のレジスタの内容を浮動小数点値として参照する方法はありません (print/f $regnameにより、 浮動小数点値として値を表示することはできます)。

レジスタには、 rawとvirtualの2つの異なるデータ形式を取るものがあります。 これは、 オペレーティング・システムによってレジスタの内容が保存されるときのデータ形式が、 ユーザ・プログラムが通常認識しているものと同じではないことを意味しています。 例えば、 68881浮動小数点コプロセッサのレジスタの値は常にextended (raw)形式で保存されていますが、 C言語によるプログラムは通常double (virtual)形式を想定しています。 このような場合、 GDBは通常 (ユーザ・プログラムにとって意味のある形式である) virtual形式だけを扱いますが、 info registersコマンドはデータを両方の形式で表示してくれます。

通常、 レジスタの値は、 選択されたスタック・フレーム (see Selecting a frame) と関係を持つ相対的な値です。 これは、 ユーザにレジスタの値として見えるものは、 選択されたフレームから呼び出されているすべてのスタック・フレームが終了し、 退避されたレジスタの値が復元されたときに、 そのレジスタが持つであろう値です。 ハードウェア・レジスタの本当の値を知りたければ、 最下位のフレームを (frame 0で) 選択しなければなりません。

しかし、 GDBは、 コンパイラが生成したコードから、 どこにレジスタが保存されているかを推論する必要があります。 退避されていないレジスタがある場合や、 GDBが退避されたレジスタを見つけることができない場合は、 どのスタック・フレームを選択していても結果は同じです。

set rstack_high_address address
AMD 29000ファミリ・プロセッサでは、 レジスタは「レジスタ・スタック」と呼ばれるところに退避されます。 GDBには、 このスタックの大きさを知ることはできません。 通常 GDBは、 スタックは十分に大きいと想定します。 このために、 実際には存在しないメモリ位置を、 GDBが参照してしまうことがありえます。 必要であれば、 set rstack_high_addressコマンドによってレジスタ・スタックの最終アドレスを指定することによって、 この問題を回避することができます。 引数はアドレスでなければなりません。 0xを先頭に記述することで、 アドレスを16進数で指定することができます。
show rstack_high_address
AMD 29000ファミリ・プロセッサにおけるレジスタ・スタックのカレントな上限を表示します。


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浮動小数ハードウェア

構成によっては、 GDBは浮動小数ハードウェアの状態について、 より詳しい情報を提供することができます。

info float
浮動小数ユニットに関するハードウェア依存の情報を表示します。 浮動小数チップの種類によって、 表示内容やレイアウトは変わります。 現在、 info floatはARMマシンとx86マシンにおいてサポートされています。


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異なる言語の使用

異なるプログラミング言語であっても共通点があるのが普通ですが、 その表記法が全く同様であるということはめったにありません。 例えば、 ポインタ pの指す値を取り出す方法は、 ANSI Cでは*pですが、 Modula-2ではp^です。 値の表現方法 (および表示方法) もまた異なります。 16進数は、 Cでは0x1aeのようになりますが、 Modula-2では1AEHのようになります。

いくつかの言語については、 言語固有の情報がGDBに組み込まれており、 これにより、 プログラムを記述した言語を使って上記のような操作を記述したり、 プログラムを記述した言語の構文にしたがってGDBに値を出力させることができます。 式を記述するのに使用される言語を、 作業言語と呼びます。


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ソース言語の切り替え

作業言語を制御する方法は2つあります。 GDBに自動的に設定させる方法と、 ユーザが手作業で選択する方法です。 どちらの目的でも、 set languageコマンドを使用することができます。 起動時のデフォルトでは、 GDBが言語を自動的に設定するようになっています。 作業言語は、 ユーザの入力する式がどのように解釈されるか、 あるいは、 値がどのように表示されるかを決定します。

この作業言語とは別に、 GDBの認識しているすべてのソース・ファイルには、 それ自体の作業言語があります。 オブジェクト・ファイルのフォーマットによっては、 ソース・ファイルの記述言語を示す情報を、 コンパイラが書き込んでいることがあるかもしれません。 しかし、 ほとんどの場合、 GDBはファイル名から言語を推定します。 ソース・ファイルの言語の種類が、 C++シンボル名がデコード (demangle) されるか否かを制御します。 これによりbacktraceは、 個々のフレームを、 その対応する言語にしたがって適切に表示することができます。 GDBの中から、 ソース・ファイルの言語を設定することはできません。

他の言語で記述されたソースからCのソースを生成する、 cfrontf2cのようなプログラムをユーザが使用する場合には、 このことが問題となるでしょう。 このような場合には、 生成されるCの出力に#line指示子を使用するよう、 そのプログラムを設定してください。 こうすることによって、 GDBは、 元になったプログラムのソース・コードが記述された言語を正しく知ることができ、 生成されたCのコードではなく、 元になったソース・コードを表示します。


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ファイル拡張子と言語のリスト

ソース・ファイル名が以下のいずれかの拡張子を持つ場合、 GDBはその言語を以下に示すものと推定します。


.c
Cソース・ファイル
.C
.cc
.cp
.cpp
.cxx
.c++
C++ソース・ファイル
.f
.F
Fortranソース・ファイル
.ch
.c186
.c286
CHILLソース・ファイル
.mod
Modula-2ソース・ファイル
.s
.S
アセンブラ言語のソース・ファイル。 この場合、 実際の動作はほとんどC言語と同様ですが、 ステップ実行時に、 関数呼び出しのための事前処理部をGDBはスキップしません。

さらに、 言語に対してファイル名の拡張子を関連付けすることも可能です。 See Displaying the language


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作業言語の設定

GDBに言語を自動的に設定させる場合、 ユーザのデバッグ・セッションとユーザのプログラムにおいて、 式は同様に解釈されます。

もしそうしたければ、 言語を手作業で設定することもできます。 そのためには、 コマンドset language langを実行します。 ここで、 langは、 cmodula-2 のような言語名です。 サポートされている言語のリストは、 set languageで表示させることができます。

言語を手作業で設定すると、 GDBは、 作業言語を自動的に更新することができなくなります。 このことは、 作業言語がソースの言語と同一ではなく、 かつ、 ある式がどちらの言語でも有効でありながら、 その意味が異なるような状況でプログラムをデバッグしようとしたときに、 混乱をもたらす可能性があります。 例えば、 カレントなソース・ファイルがC言語で記述されていて、 GDBがそれをModula-2として解析している場合に、

print a = b + c

のようなコマンドを実行すると、 その結果は意図したものとは異なるものになるでしょう。 これはC言語では、 bcとを加算して、 その結果をaに入れるということを意味し、 表示される結果は、 aの値となります。 Modula-2では、 これはab+cの結果を比較してBOOLEAN型の値を出力することを意味します。


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GDBによるソース言語の推定

GDBに作業言語を自動的に設定させるには、 set language localまたはset language autoを使用します。 この場合、 GDBは作業言語を推定します。 つまり、 ユーザ・プログラムが (通常はブレイクポイントに達することによって) あるフレーム内部で停止したとき、 GDBは、 そのフレーム内の関数に対して記録されている言語を作業言語として設定します。 フレームの言語が不明の場合 (つまり、 そのフレームに対応する関数またはブロックが、 既知ではない拡張子を持つソース・ファイルにおいて定義されている場合)、 カレントな作業言語は変更されず、 GDBは警告メッセージを出力します。

このようなことは、 全体がただ1つの言語で記述されているほとんどのプログラムにおいては 不要であると思われるでしょう。 しかし、 あるソース言語で記述されたプログラム・モジュールやライブラリは、 他のソース言語で記述されたメイン・プログラムから使用することができます。 このような場合にset language autoを使用することで、 作業言語を手作業で設定する必要がなくなります。


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言語の表示

以下のコマンドは、 作業言語、 および、 ソース・ファイルの記述言語を知りたいときに役に立ちます。

show language
カレントな作業言語を表示します。 printコマンドなどによって ユーザ・プログラム内部の変数を含む式を作成したり評価したりするには、 このコマンドによって示される言語を使用します。
info frame
選択されているフレームのソース言語を表示します。 このフレームの中の識別子を使用すると、 この言語が作業言語になります。 このコマンドにより表示される他の情報について知りたい場合は、 See Information about a frame
info source
選択されているソース・ファイルのソース言語を表示します。 このコマンドにより表示される他の情報のことを知りたい場合は、 See Examining the Symbol Table

普通ではない状況においては、 標準のリストに含まれない拡張子を持つソース・ファイルがあるかもしれません。 この場合には、 その拡張子を特定の言語に明示的に関連付けすることができます。

set extension-language .ext language
拡張子.extを持つソース・ファイルは、 ソース言語language によって記述されているものと想定するよう設定します。
info extensions
すべてのファイル拡張子と、 その拡張子に関連付けされた言語を一覧表示します。


Node:Checks, Next:, Previous:Show, Up:Languages

型と範囲のチェック

注意: 現在のリリースでは、 型チェックと範囲チェックを行うGDBコマンドは組み込まれていますが、 それらは実際には何も実行しません。 このセクションでは、 これらのコマンドが本来持つべく意図されている機能について記述してあります。

いくつかの言語は、 一連のコンパイル時チェック、 実行時チェックによって、 一般によく見られるエラーの発生を防ぐように設計されています。 これらのチェックには、 関数や演算子への引数の型のチェックや、 数学的操作の結果のオーバーフローを実行時に確実に検出することなどが含まれています。 このようなチェックは、 型の不一致を排除したり、 ユーザ・プログラムの実行時に範囲エラーをチェックしたりすることによって、 コンパイル後のプログラムの正しさを確かなものにするのに役に立ちます。 GDBは、 ユーザが望むのであれば、 上記のような条件のチェックを行います。 GDBはユーザ・プログラムの文をチェックすることはしませんが、 例えば、 printコマンドによる評価を目的としてGDBに直接入力された式をチェックすることはできます。 作業言語の場合と同様に、 GDBが自動的にチェックを行うか否かを、 ユーザ・プログラムのソース言語によって決定することもできます。 サポートされている言語のデフォルトの設定については、 See Supported languages


Node:Type Checking, Next:, Previous:Checks, Up:Checks

型チェックの概要

いくつかの言語、 例えばModula-2などは、 強く型付けされています。 これは、 演算子や関数への引数は正しい型でなくてはならず、 そうでない場合にはエラーが発生するということを意味しています。 このようなチェックは、 型の不一致のエラーが実行時に問題を発生させるのを防いでくれます。 例えば、 1+2は

1 + 2 => 3

ですが、1+2.3は
error--> 1 + 2.3

のようにエラーになります。

第2の例がエラーになるのは、 CARDINAL型の1はREAL型の2.3と型の互換性がないからです。 GDBコマンドの中で使われる式については、 ユーザがGDBの型チェック機能に対して、 以下のような指示を出すことができます。

最後の指示が選択された場合、 GDBは上記の第2の(エラー)例のような式でも評価しますが、 その際には警告メッセージを出力します。

型チェックをしないよう指示した場合でも、 型に関係のある原因によってGDBが式の評価ができなくなる場合がありえます。 例えば、 GDBはintの値とstruct fooの値を加算する方法を知りません。 こうした特定の型エラーは、 使用されている言語に起因するものではなく、 この例のように、 そもそも評価することが意味をなさないような式に起因するものです。

個々の言語は、 それが型に関してどの程度厳密であるかを定義しています。 例えば、 Modula-2とCはいずれも、 算術演算子への引数としては数値を要求します。 Cでは、 列挙型とポインタは数値として表わすことができますので、 これらは算術演算子への正当な引数となります。 特定の言語に関する詳細については、 See Supported languages。 GDBは、 型チェック機能を制御するためのコマンドをさらにいくつか提供しています。

set check type auto
カレントな作業言語に応じて、 型チェックを実行する、 または、 実行しないよう設定します。 個々の言語のデフォルトの設定については、 See Supported languages
set check type on
set check type off
カレントな作業言語のデフォルトの設定を無視して、 型チェックを実行する、 または、 実行しないよう設定します。 その設定が言語のデフォルトと一致しない場合は、 警告メッセージが出力されます。 型チェックを実行するよう設定されているときの式の評価において型の不一致が発生した場合には、 GDBはメッセージを出力して式の評価を終了させます。
set check type warn
型チェック機能に警告メッセージを出力させますが、 式の評価自体は常に実行するよう試みさせます。 式の評価は、 他の原因のために不可能になる場合もあります。 例えば、 GDBには数値と構造体の加算はできません。
show type
型チェック機能のカレントな設定と、 GDBがそれを自動的に設定しているか否かを表示します。


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範囲チェックの概要

いくつかの言語 (例えば、 Modula-2) では、 型の上限を超えるとエラーになります。 このチェックは、 実行時に行われます。 このような範囲チェックは、 計算結果がオーバーフローしたり、 配列の要素へのアクセス時に使うインデックスが配列の上限を超えたりすることがないことを確実にすることによって、 プログラムの正しさを確かなものにすることを意図したものです。 GDBコマンドの中で使う式については、 範囲エラーの扱いを以下のいずれかにするよう GDBに指示することができます。

範囲エラーは、 数値がオーバフローした場合、 配列インデックスの上限を超えた場合、 どの型のメンバでもない定数が入力された場合に発生します。 しかし、 言語の中には、 数値のオーバフローをエラーとして扱わないものもあります。 C言語の多くの実装では、 数学的演算によるオーバフローは、 結果の値を「一巡」させて小さな値にします。 例えば、 mが整数値の最大値、 sが整数値の最小値とすると、

m + 1 => s

になります。

これも個々の言語に固有な性質であり、 場合によっては、 個々のコンパイラやマシンに固有な性質であることもあります。 特定の言語に関する詳細については、 See Supported languages。 GDBは、 範囲チェック機能を制御するためのコマンドをさらにいくつか提供しています。

set check range auto
カレントな作業言語に応じて、 範囲チェックを実行する、 または、 実行しないよう設定します。 個々の言語のデフォルトの設定については、 See Supported languages
set check range on
set check range off
カレントな作業言語のデフォルトの設定を無視して、 範囲チェックを実行する、 または、 実行しないよう設定します。 設定が言語のデフォルトとは異なる場合は、 警告メッセージが出力されます。 範囲エラーが発生した場合は、 メッセージが表示され、 式の評価は終了させられます。
set check range warn
GDBの範囲チェック機能が範囲エラーを検出した場合、 メッセージを出力し、 式の評価を試みます。 例えば、 プロセスが、 自分の所有していないメモリをアクセスした場合 (多くのUnixシステムで典型的に見られる例です) など、 他の理由によって式の評価が不可能な場合があります。
show range
範囲チェック機能のカレントな設定と、 それがGDBによって自動的に設定されているのか否かを表示します。


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サポートされる言語

GDBは、 C、 C++、 Fortran、 Chill、 アセンブリ言語、 Modula-2をサポートしています。 いくつかのGDBの機能は、 使用されている言語にかかわらず、 式の中で使用できます。 GDBの@演算子、 ::演算子、 および{type}addr (see Expressions) は、 サポートされている任意の言語において使用することができます。

次節以降で、 個々のソース言語がGDBによってどの程度までサポートされているのかを詳しく説明します。 これらの節は、 言語についてのチュートリアルやリファレンスとなることを意図したものではありません。 むしろ、 GDBの式解析機能が受け付ける式や、 異なる言語における正しい入出力フォーマットのリファレンス・ガイドとしてのみ役に立つものです。 個々の言語については良い書籍が数多く出ています。 言語についてのリファレンスやチュートリアルが必要な場合は、 これらの書籍を参照してください。


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C/C++

CとC++は密接に関連しているので、 GDBの機能の多くは両方の言語に適用できます。このようなものについては、2つの言語を一緒に議論します。

C++のデバッグ機能は、 C++コンパイラとGDBによって協同で実装されています。 したがって、 C++のコードを効率よくデバッグするには、 GNU g++、 HP ANSI C++コンパイラ(aCC)などの、 サポートされているC++コンパイラで、 C++のプログラムをコンパイルする必要があります。

GNU C++を使用する場合、 最高の結果を引き出すには、 stabsデバッグ・フォーマット を使用してください。 g++のコマンドライン・オプション-gstabs、 または、 -gstabs+によって、 このフォーマットを明示的に選択することができます。 詳細については、 Debugging Options の部分を参照してください。


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C/C++演算子

演算子は、 特定の型の値に対して定義されなければなりません。 例えば、 +は数値に対しては定義されていますが、 構造体に対しては定義されていません。 演算子は、 型のグループに対して定義されることがよくあります。

C/C++に対しては、以下の定義が有効です。

以下の演算子がサポートされています。 これらは優先順位の低いものから順に並べられています。

,
カンマ、 あるいは、 順序付けの演算子です。 カンマによって区切られたリストの中の式は、 左から右の順で評価されます。 最後に評価された式の結果が、 式全体の評価結果になります。
=
代入。 代入された値が、 代入式の値になります。 スカラ型に対して定義されています。
op=
a opbという形式の式において使用され、 a = a op bに変換されます。 op==は、 同一の優先順位を持ちます。 opには、 |^&<<>>+-*/%の各演算子が使用できます。
?:
3項演算子です。 a ? b : cは、 aが真であればb、 偽であればcとみなすことができます。 aは整数型でなければなりません。
||
論理ORです。 整数型に対して定義されています。
&&
論理ANDです。 整数型に対して定義されています。
|
ビットごとのORです。 整数型に対して定義されています。
^
ビットごとの排他的ORです。 整数型に対して定義されています。
&
ビットごとのANDです。 整数型に対して定義されています。
==、!=
等価、 および、 不等価です。 スカラ型に対して定義されています。 これらの式の値は、 偽のときはゼロであり、 真のときはゼロ以外の値となります。
<、>、<=、>=
未満、 超過、 以下、 以上です。 スカラ型に対して定義されています。 これらの式の値は、 偽のときはゼロであり、 真のときはゼロ以外の値となります。
<<、>>
左シフト、 右シフトです。 整数型に対して定義されています。
@
GDBの「人工配列」演算子です (see Expressions)。
+、-
加算および減算です。 整数型、 浮動小数点型、 ポインタ型に対して定義されています。
*、/、%
乗算、 除算、 剰余です。 乗算と除算は、 整数型と浮動小数点型に対して定義されています。 剰余は、 整数型に対して定義されています。
++, --
インクリメント、 デクリメントです。 変数の前にある場合は、 式の中でその変数が使用される前に実行されます。 変数の後ろにある場合は、 変数の値が使用された後に実行されます。
*
ポインタの間接参照です。 ポインタ型に対して定義されています。 ++と同一の優先度を持ちます。
&
アドレス参照演算子です。変数に対して定義されています。 ++と同一の優先順位を持ちます。

C++のデバッグでは、 C++言語そのものにおいては許されていないような&の使用法を、 GDBは実装しています。 C++の (&refにより宣言される) 参照変数が格納されているアドレスを調べるのに、 &(&ref) (あるいは、 もしそうしたいのであれば単に&&ref) を使用することができます。

-
マイナス(負)です。 整数型と浮動小数点型に対して定義されています。 ++と同一の優先順位を持ちます。
!
論理NOTです。 整数型に対して定義されています。 ++と同一の優先順位を持ちます。
~
ビットごとのNOT (補数) 演算子です。 整数型に対して定義されています。 ++と同一の優先順位を持ちます。
., ->
構造体のメンバ、 ポインタの指す構造体のメンバをそれぞれ指定する演算子です。 便宜上、 GDBは両者を同一のものとして扱い、 格納されている型情報をもとに、 ポインタによる間接参照の必要性を判断します。 構造体 (struct) および共用体 (union) に対して定義されています。
[]
配列のインデックスです。 a[i]は、 *(a+i)として定義されています。 ->と同一の優先順位を持ちます。
()
関数のパラメータ・リストです。 ->と同一の優先順位を持ちます。
::
C++のスコープ解決演算子です。 構造体(struct)、 共用体(union)、 クラス(class)に対して定義されています。
::
2重コロンはまた、 GDBのスコープ演算子 も 表わします (see Expressions)。 上記の::と同一の優先順位を持ちます。


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C/C++定数

GDBでは、 以下のような方法によって、 C/C++の定数を表わすことができます。


Node:Cplus expressions, Next:, Previous:C Constants, Up:C

C++式

GDBが持っている、 式を処理する機能は、 C++のほとんどの式を解釈することができます。
注意: GDBは、 適切なコンパイラが使用されている場合のみ、 C++のコードをデバッグすることができます。 典型的な例を挙げると、 C++のデバッグでは、 シンボル・テーブルの中の追加的なデバッグ情報に依存するため、 特別なサポートが必要になるということがあります。 使用されるコンパイラが、 a.out、 MIPS ECOFF、 RS/6000 XCOFFELFを、 シンボル・テーブルに対するstabs拡張付きで生成することができるのであれば、 以下に列挙する機能を使用することができます (GNU CCの場合は、 -gstabsオプションを使用して明示的にstabsデバッグ拡張を要求することができます)。 一方、 オブジェクト・コードのフォーマットが、 標準COFFELFDWARFである場合には、 GDBの提供するほとんどのC++サポートは機能しません
  1. メンバ関数の呼び出しが許されます。 以下のような式を使用することができます。
    count = aml->GetOriginal(x, y)
    
  2. メンバ関数が (選択されたスタック・フレームの中で) アクティブな場合、 入力された式は、 そのメンバ関数と同一の名前空間を利用することができます。 すなわち、 GDBは、 C++と同様の規則にしたがって、 クラス・インスタンスへのポインタthisへの暗黙の参照を許します。
  3. オーバーロードされた関数を呼び出すことができます。 GDBは、 正しい定義の関数呼び出しを決定します。 ただし、 制限が一点あります。 実際に呼び出したい関数が要求する型の引数を使用しなければなりません。 GDBは、 コンストラクタやユーザ定義の型演算子を必要とするような変換を実行しません。
  4. GDBは、 C++の参照変数として宣言された変数を理解します。 C++のソース・コードで参照変数を使用するのと同一の方法で、 参照変数を式の中で使用することができます。 参照変数は自動的に間接参照されます。 GDBがフレームを表示する際に表示されるパラメータ一覧の中では、 参照変数の値は (他の変数とは異なり) 表示されません。 これにより、 表示が雑然となることを回避できます。 というのは、 参照変数は大きい構造体に対して使用されることが多いからです。 参照変数の アドレスは、 set print address offを指定しない限り、 常に表示されます。
  5. GDBはC++の名前解決演算子::をサポートしています。 プログラム中と同様に、 式の中でこれを使用することができます。 あるスコープが別のスコープの中で定義されることがありえるため、 必要であれば::を繰り返し使用することができます。 例えば、 scope1::scope2::nameという具合です。 GDBはまた、 CおよびC++のデバッグにおいて、 ソース・ファイルを指定することで名前のスコープを解決することを許します (see Program variables)。


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C/C++のデフォルト

GDBが自動的に型チェックや範囲チェックの設定を行うことを許すと、 作業言語がCやC++に変更されるときにはいつも、 それらの設定はデフォルトでoffになります。 これは、 作業言語を選択したのがユーザであってもGDBであっても同様です。 GDBが自動的に言語の設定を行うことを許すと、 GDBは、 名前が.c.C.ccなどで終わるソース・ファイルを認識していて、 これらのファイルからコンパイルされたコードの実行を開始するときに、 作業言語をCまたはC++に設定します。 詳細については、 See Having GDB infer the source language


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C/C++の型チェックと範囲チェック

デフォルトでは、 GDBがCやC++の式を解析するときには、 型チェックは行われません。 しかし、 ユーザが型チェックを有効にすると、 GDBは以下の条件が成立するときに、 2つの変数の型が一致しているとみなします。

範囲チェックは、 onに設定されている場合、 数学的演算において実行されます。 配列のインデックスは、 それ自体は配列ではないポインタのインデックスとして使用されることが多いため、 チェックされません。


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GDBとC

set print unionコマンドとshow print unionコマンドは共用体型 (union) に適用されます。 onに設定されると、 構造体 (struct) やクラス (class) の内部にある共用体 (union) はすべて表示されます。 onでない場合、 それは{...}と表示されます。

@オペレータは、 ポインタとメモリ割り当て関数によって作られた動的配列のデバッグに役に立ちます。 See Expressions


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C++用のGDB機能

GDBのコマンドの中には、 C++を使用しているときに特に役に立つものがあり、 また、 C++専用に特に設計されたものがあります。 以下に、 その要約を示します。
breakpoint menus
名前がオーバーロードされている関数の内部にブレイクポイントを設定したい場合、 関心のある関数定義を指定するのに、 GDBのブレイクポイント・メニューが役に立ちます。 See Breakpoint menus
rbreak regex
あるオーバーロードされたメンバ関数が、 特別なクラスだけが持つメンバ関数というわけではない場合、 そのメンバ関数にブレイクポイントを設定するのに、 正規表現によるブレイクポイントの設定が役に立ちます。 See Setting breakpoints
catch throw
catch catch
C++の例外処理をデバッグするのに使用します。 See Setting catchpoints
ptype typename
typenameに関して、継承関係などの情報を表示します。 See Examining the Symbol Table
set print demangle
show print demangle
set print asm-demangle
show print asm-demangle
コードをC++のソースとして表示する場合と、 逆アセンブル処理の結果を表示する場合に、 C++のシンボルをソース形式で表示するか否かを制御します。 See Print settings
set print object
show print object
オブジェクトの型を表示する際に、 派生した (実際の) 型と宣言された型のどちらを表示するかを選択します。 See Print settings
set print vtbl
show print vtbl
仮想関数テーブルの表示形式を制御します。 See Print settings
オーバーロードされたシンボル名
オーバーロードされたシンボルを宣言するのに C++において使用されるのと同一の表記法を使用して、 オーバーロードされたシンボル定義のうち、 特定のものを指定することができます。 単にsymbolと入力するのではなく、 symbol(types)と入力してください。 GDBコマンドラインの単語補完機能を使用して、 利用可能な選択肢を一覧表示させたり、 型のリストを完結させたりすることができます。 この機能の使用方法の詳細については、 See Command completion


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Modula-2

Modula-2をサポートするために開発されたGDBの拡張機能は、 (現在開発中の) GNU Modula-2コンパイラによって生成されたコードだけをサポートします。 他のModula-2コンパイラは現在サポートされていません。 他のModula-2コンパイラが生成した実行形式モジュールをデバッグしようとすると、 おそらく、 GDBが実行モジュールのシンボル・テーブルを読み込もうとしたところでエラーになるでしょう。


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Modula-2演算子

演算子は、 特定の型の値に対して定義されなければなりません。 例えば、 +は数値に対して定義され、 構造体に対しては定義されません。 演算子は、 型のグループに対して定義されることがよくあります。 Modula-2においては、 以下の定義が有効です。

以下の演算子がサポートされています。 ここでは、 優先順位の低いものから順に並べています。

,
関数の引数の区切り記号、 または、 配列のインデックスの区切り記号です。
:=
代入です。 var := valueの値は valueです。
<、>
未満、 超過です。 整数型、 浮動小数点型、 列挙型に対して定義されています。
<=、>=
整数型、 浮動小数点型、 列挙型に対しては、 以下、 以上を表わします。 集合型に対しては、 集合の包含関係を表わします。 <と同一の優先順位を持ちます。
=、<>、#
スカラ型に対して定義されている等価および2種類の不等価です。 <と同一の優先順位を持ちます。 GDBスクリプトの中では、 #がスクリプトのコメント記号でもあるため、 不等価としては<>だけが使用可能です。
IN
集合のメンバを表わします。 集合型、 およびそのメンバの型に対して定義されています。 <と同一の優先順位を持ちます。
OR
ブール型のOR (disjunction) です。 ブール型に対して定義されています。
AND、&
ブール型のAND (conjunction) です。 ブール型に対して定義されています。
@
GDBの「人工配列」演算子です (see Expressions)。
+、-
整数型、 浮動小数点型に対しては、 加算、 減算を表わします。 集合型に対しては、 和集合 (union)、 差集合 (difference) を表わします。
*
整数型、 浮動小数点型に対しては、 乗算を表わします。 集合型に対しては、 積集合 (intersection) を表わします。
/
浮動小数点型に対しては、 除算を表わします。 集合型に対しては、 対称的差集合 (symmetric difference) を表わします。 *と同一の優先順位を持ちます。
DIV、MOD
整数型の除算における商と剰余を表わします。 整数型に対して定義されています。 *と同一の優先順位を持ちます。
-
マイナス(負)です。 INTEGERREAL型のデータに対して定義されています。
^
ポインタの間接参照です。 ポインタ型に対して定義されています。
NOT
ブール型のNOTです。 ブール型に対して定義されています。 ^と同一の優先順位を持ちます。
.
RECORDフィールドの区切り記号です。 RECORDデータに対して定義されます。 ^と同一の優先順位を持ちます。
[]
配列のインデックスを指定します。 ARRAY型のデータに対して定義されています。 ^と同一の優先順位を持ちます。
()
プロシージャの引数リストを指定します。 PROCEDUREオブジェクトに対して定義されています。 ^と同一の優先順位を持ちます。
::、.
GDBおよびModula-2のスコープ指定演算子です。
注意: 集合、 および集合に対する操作は、 まだサポートされていません。 このため、 GDBはIN演算子、 あるいは、 集合に対して+-*/=<>#<=>=のいずれかの演算子が使用された場合、 これをエラーとして扱います。


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組み込み関数と組み込みプロシージャ

Modula-2では、 いくつかの組み込みプロシージャ、 組み込み関数が使用できます。 これらの説明にあたり、 以下のメタ変数を使用します。


a
ARRAY型の変数を表わします。
c
CHAR型の定数、 または変数を表わします。
i
整数型の変数、 または定数を表わします。
m
集合に属する識別子を表わします。 通常、 同一関数の中でメタ変数sとともに使用されます。 sの型は、 SET OF mtypeでなければなりません (ここでのmtypemの型です)。
n
整数型または浮動小数点型の、 変数または定数を表わします。
r
浮動小数点型の変数または定数を表わします。
t
型を表わします。
v
変数を表わします。
x
多くの型の中の1つの型の、 変数または定数を表わします。 詳細については、 関数の説明の部分を参照してください。

また、 すべてのModula-2の組み込みプロシージャは、 以下に説明する値を返します。

ABS(n)
nの絶対値を返します。
CAP(c)
cが小文字であれば、 それを大文字にして返します。 cが小文字でなければ、 cをそのまま返します。
CHR(i)
序数がiである文字を返します。
DEC(v)
変数vの値から1を引きます。 新しい値を返します。
DEC(v,i)
変数vの値からiで示される値を引きます。 新しい値を返します。
EXCL(m,s)
集合sから要素mを取り除きます。 新しい集合を返します。
FLOAT(i)
整数値iに等しい浮動小数点値を返します。
HIGH(a)
配列aの最後の要素のインデックスを返します。
INC(v)
変数vの値に1を加えます。 新しい値を返します。
INC(v,i)
変数vの値にiで示される値を加えます。 新しい値を返します。
INCL(m,s)
集合sに要素mが存在しない場合、 要素mを追加します。 新しい集合を返します。
MAX(t)
tの最大値を返します。
MIN(t)
tの最小値を返します。
ODD(i)
iが奇数であればブール型のTRUEを返します。
ORD(x)
引数の序数値を返します。 例えば、 文字の序数値は、 (ASCII文字セットをサポートするマシン上では) そのASCII値です。 ここでxは、 整数型、 文字型、 列挙型のような順序を持つ型でなければなりません。
SIZE(x)
引数のサイズを返します。 xは変数または型のいずれかです。
TRUNC(r)
rの整数部を返します。
VAL(t,i)
tのメンバのうち、 その序数値がiであるものを返します。
注意: 集合、 および集合に対する操作はまだサポートされていません。 したがって、 INCLプロシージャ、 EXCLプロシージャを使用すると、 GDBはエラーとして扱います。


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定数

GDBでは、 Modula-2の定数を以下のような方法で表現することができます。


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Modula-2デフォルト

型チェックと範囲チェックがGDBにより自動的に設定される場合、 作業言語がModula-2に変わるたびに、 それらはデフォルトでonに設定されます。 これは、 作業言語を選択したのがユーザであろうとGDBであろうと同様です。 GDBに自動的に言語を設定させると、 ファイル名の末尾が.modであるファイルからコンパイルされたコードに入るたびに、 作業言語はModula-2に設定されます。 詳細については、 See Having GDB set the language automatically


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標準Modula-2との差異

Modula-2プログラムのデバッグを容易にするために2、 3の修正が施されています。 これは主に、 型に対する厳密性を緩めることによって実現されています。


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Modula-2の型チェックと範囲チェック

注意: GDBは現在のところ、 型チェック、 範囲チェックをまだ実装していません。
GDBは、 以下のいずれかの条件が成立するとき、 2つのModula-2変数の型が等しいとみなします。

型チェックが有効である限り、 等しくない型の変数を組み合わせようとする試みはすべてエラーとなります。

範囲チェックは、 数学的操作、 代入、 配列のインデックス境界、 およびすべての組み込み関数、 組み込みプロシージャにおいて実行されます。


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スコープ演算子::.

Modula-2のスコープ演算子 (.) とGDBのスコープ演算子 (::) との間には2、 3の微妙な相違点があります。 この2つは似た構文を持っています。

module . id
scope :: id

ここで、 scopeはモジュール名またはプロシージャ名、 moduleはモジュール名、 idはユーザ・プログラムの中で宣言された任意の (異なるモジュール以外の) 識別子です。

::演算子を使用すると、 GDBはscopeによって指定されたスコープにおいて識別子idを探します。 指定されたスコープにおいてそれを見つけることができないと、 GDBはscopeによって指定されたスコープを包含するすべてのスコープを探します。

.演算子を使用すると、 GDBはカレントなスコープにおいて、 modueによって指定された定義モジュールから取り込まれた、 idによって指定される識別子を探します。 この演算子では、 識別子idが定義モジュールmoduleから取り込まれていない場合やmoduleにおいてidが識別子でない場合は、 エラーになります。


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GDBとModula-2

GDBコマンドの中には、 Modula-2プログラムのデバッグにはほとんど役に立たないものがいくつかあります。 set printshow printの5つのサブ・コマンドvtbldemangleasm-demangleobjectunionはC/C++にのみ適用されます。 最初の4つはC++に適用され、 最後の1つはCの共用体 (union) に適用されます。 これらは、 Modula-2において直接類似するものが存在しません。

@演算子 (see Expressions) は、 どの言語においても使用することができますが、 Modula-2においてはあまり役に立ちません。 この演算子は、 動的配列のデバッグを支援することを目的とするものですが、 C/C++では作成できる動的配列は、 Modula-2では作成できません。 しかし、 整数値定数によってアドレスを指定することができるので、 {type}adrexpは役に立ちます (see Expressions)。 GDBスクリプトの中では、 Modula-2の不等価演算子#はコメントの開始記号として解釈されます。 代わりに<>を使用してください。


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シンボル・テーブルの検査

ここで説明するコマンドによって、 ユーザ・プログラムの中で定義されているシンボル情報 (変数名、 関数名、 型名) に関する問い合わせを行うことができます。 この情報はユーザ・プログラムのテキストに固有のもので、 プログラムの実行時に変わるものではありません。 GDBはこの情報を、 ユーザ・プログラムのシンボル・テーブルの中、 または、 GDB起動時に指定されたファイル (see Choosing files) の中で見つけるか、 ファイル管理コマンド (see Commands to specify files) の実行によって見つけます。

ときには、 参照する必要のあるシンボルの中に、 GDBが通常は単語の区切り文字として扱う文字が含まれていることがあるかもしれません。 特に多いのが、 他のソース・ファイルの中の静的変数を参照する場合です (see Program variables)。 ファイル名は、 オブジェクト・ファイルの中にデバッグ・シンボルとして記録されていますが、 GDBは通常、 典型的なファイル名、 例えばfoo.cを解析して、 3つの単語 foo.(ピリオド)、 cであるとみなします。 GDBがfoo.cを単一のシンボルであると認識できるようにするには、 それを単一引用符で囲みます。 例えば、

p 'foo.c'::x

は、 xの値をファイルfoo.cのスコープの中で検索します。

info address symbol
symbolで指定されるシンボルのデータがどこに格納されているかを示します。 レジスタ変数の場合は、 それがどのレジスタに入っているかを示します。 レジスタ変数ではないローカル変数の場合は、 その変数が常に格納されている位置の、 スタック・フレーム内におけるオフセット値を表示します。

print &symbolとの相違に注意してください。 print &symbolはレジスタ変数に対しては機能しませんし、 スタック内のローカル変数に対して実行すると、 その変数のカレントなインスタンスの存在するアドレスそのものが表示されます。

whatis exp
expのデータ型を表示します。 expは実際には評価されず、 exp内の副作用を持つ操作 (例えば、代入や関数呼び出し) は実行されません。 See Expressions
whatis
値ヒストリの最後の値である $のデータ型を表示します。
ptype typename
データ型typenameの説明を表示します。 typenameは型の名前です。 Cで記述されたコードの場合は、 class class-namestruct struct-tagunion union-tagenum enum-tagという形式を取ることができます。
ptype exp
ptype
expの型に関する説明を表示します。 単に型の名前を表示するだけではなく、 詳細な説明も表示するという点で、 ptypewhatisと異なります。

例えば、 変数宣言

struct complex {double real; double imag;} v;

に対して、 whatisptypeはそれぞれ以下のような出力をもたらします。

(gdb) whatis v
type = struct complex
(gdb) ptype v
type = struct complex {
    double real;
    double imag;
}

whatisと同様、 引数なしでptypeを使用すると、 値ヒストリの最後の値である$の型を参照することになります。

info types regexp
info types
その名前がregexpで指定される正規表現にマッチするすべての型 (あるいは、 引数を指定しなければ、 ユーザ・プログラム中のすべての型) の簡単な説明を表示します。 個々の型の完全な名前は、 それ自体が1つの完全な行を構成するものとみなして、 マッチされます。 したがって、 i type valueは、 ユーザ・プログラムの中で、 その名前が文字列valueを含むすべての型に関する情報を表示し、 i type ^value$は、 名前がvalueそのものである型に関する情報だけを表示します。

このコマンドはptypeとは2つの点で異なります。 まず第1にwhatisと同様、 詳細な情報を表示しません。 第2に、 型が定義されているすべてのソース・ファイルを一覧表示します。

info source
カレントなソース・ファイル、 すなわち、 カレントな実行箇所を含む関数のソース・ファイルの、 ファイル名とそれが記述された言語の名前を表示します。
info sources
ユーザ・プログラムのソース・ファイルのうち、 デバッグ情報の存在するものすべての名前を、 2つの一覧にして表示します。 2つの一覧とは、 シンボルが既に読み込まれたファイルの一覧と、 後に必要なときにシンボルが読み込まれるファイルの一覧です。
info functions
すべての定義済み関数の名前とデータ型を表示します。
info functions regexp
その名前がregexpで指定される正規表現にマッチする部分を持つすべての定義済み関数の名前とデータ型を表示します。 したがって、 info fun stepは、 その名前が文字列stepを含むすべての関数を見つけ、 info fun ^stepは、 名前が文字列stepで始まるすべての関数を見つけます。
info variables
関数の外部で宣言されているすべての変数 (つまり、 ローカル変数を除く変数) の名前とデータ型を表示します。
info variables regexp
その名前が正規表現regexpにマッチする部分を持つすべての (ローカル変数を除く) 変数の名前とデータ型を表示します。

いくつかのシステムにおいては、 ユーザ・プログラムの停止・再起動を伴うことなく、 そのユーザ・プログラムを構成する個々のオブジェクト・ファイルを更新することができます。 例えば、 VxWorksでは、 欠陥のあるオブジェクト・ファイルを再コンパイルして、 実行を継続することができます。 このようなマシン上でプログラムを実行しているのであれば、 自動的に再リンクされたモジュールのシンボルをGDBに再ロードさせることができます。

set symbol-reloading on
ある特定の名前を持つオブジェクト・ファイルが再検出されたときに、 対応するソース・ファイルのシンボル定義を入れ替えます。
set symbol-reloading off
同じ名前を持つオブジェクト・ファイルを再検出したときに、 シンボル定義を入れ替えません。 これがデフォルトの状態です。 モジュールの自動再リンクを許しているシステム上でプログラムを実行しているのでない場合は、 symbol-reloadingの設定はoffのままにするべきです。 さもないと、 (異なるディレクトリやライブラリの中にある) 同じ名前を持ついくつかのモジュールを含むような大きなプログラムをリンクする際に、 GDB はシンボルを破棄してしまうかもしれません。
show symbol-reloading
symbol-reloadingのカレントな設定 (onまたはoff) を表示します。

maint print symbols filename
maint print psymbols filename
maint print msymbols filename
デバッグ・シンボル・データのダンプをファイルfilenameの中に書き込みます。 これらのコマンドは、 GDBのシンボル読み込みコードをデバッグするのに使われています。 デバッグ・データを持つシンボルだけがダンプに含まれます。 maint print symbolsを使用すると、 GDBは、 完全な詳細情報を入手済みのすべてのシンボルの情報をダンプに含めます。 つまり、 ファイルfilenameには、 GDBがそのシンボルを読み込み済みのファイルに対応するシンボルが反映されます。 info sourcesコマンドを使用することで、 これらのファイルがどれであるかを知ることができます。 代わりにmaint print psymbolsを使用すると、 GDB が部分的にしか知らないシンボルに関する情報もダンプの中に含まれます。 これは、 GDBがざっと読みはしたものの、 まだ完全には読み込んでいないファイルに定義されているシンボルに関する情報です。 最後にmaint print msymbolsでは、 GDBが何らかのシンボル情報を読み込んだオブジェクト・ファイルから、 最小限必要とされるシンボル情報がダンプされます。 GDBがどのようにしてシンボルを読み込むかについては、 Commands to specify files (のsymbol-fileの説明の部分) を参照してください。


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実行の変更

ユーザ・プログラムの中に誤りのある箇所を見つけると、 その明らかな誤りを訂正することで、 その後の実行が正しく行われるかどうかを知りたくなるでしょう。 GDBにはプログラムの実行に変化を与える機能があり、 これを使って実験することで、 その答を知ることができます。

例えば、 変数やメモリ上のある箇所に新しい値を格納すること、 ユーザ・プログラムにシグナルを送ること、 ユーザ・プログラムを異なるアドレスで再起動すること、 関数が完全に終了する前に呼び出し元に戻ることなどが可能です。


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変数への代入

ある変数の値を変更するには、 代入式を評価します。 See Expressions。 例えば、

print x=4

は、 変数xに値4を格納してから、 その代入式の値 (すなわち4) を表示します。 サポートされている言語の演算子の詳細情報については、 See Using GDB with Different Languages

代入の結果を表示させることに関心がなければ、 printコマンドの代わりにsetコマンドを使用してください。 実際のところsetコマンドは、 式の値が表示もされず、 値ヒストリ (see Value history) にも入らないということを除けば、 printコマンドと同等です。 式は、 その結果の入手だけを目的として評価されます。

setコマンドの引数となる文字列の先頭の部分が、 setコマンドのサブ・コマンドの名前と一致してしまうような場合には、 ただのsetコマンドではなくset variableコマンドを使用してください。 このコマンドは、 サブ・コマンドを持たないという点を除けば、 setコマンドと同等です。 例えば、 ユーザ・プログラムにwidthという変数がある場合、 set width=13によってこの変数に値を設定しようとするとエラーになります。 これは、 GDBがset widthというコマンドを持っているためです。

(gdb) whatis width
type = double
(gdb) p width
$4 = 13
(gdb) set width=47
Invalid syntax in expression.

ここで不正な表現となっているのは、 もちろん=47の部分です。 プログラム内の変数widthに値を設定するには、 以下のようにしてください。

(gdb) set var width=47
GDBは、 代入時の暗黙の型変換をC言語よりも多くサポートしています。 整数値を自由にポインタ型変数に格納できますし、 その逆もできます。 また、 任意の構造体を、 同じサイズの別の構造体、 または、 より小さいサイズの別の構造体に変換することができます。

メモリ上の任意の箇所に値を格納するには、 指定されたアドレスにおいて指定された型の値を生成するために、 {...}を使用します (see Expressions)。 例えば{int}0x83040は、 メモリ・アドレス0x83040を整数値として参照します (メモリ上における、 ある特定のサイズと表現を示唆しています)。 また、

set {int}0x83040 = 4

は、 そのメモリ・アドレスに値4を格納します。


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異なるアドレスにおける処理継続

通常、 ユーザ・プログラムを継続実行するには、 continueコマンドを使用して、 停止した箇所から継続実行させます。 以下のコマンドを使用することで、 ユーザが選択したアドレスにおいて実行を継続させることができます。

jump linespec
linespecで指定される行において、 実行を再開します。 その行にブレイクポイントが設定されている場合には、 実行は再びすぐに停止します。 linespecの形式については、 See Printing source lines。 一般的な慣例として、 jumpコマンドは、 tbreakコマンドと組み合わせて使用されます。 See Setting breakpoints

jumpコマンドは、 カレントなスタック・フレーム、 スタック・ポインタ、 メモリ内の任意の箇所の内容、 プログラム・カウンタを除くレジスタの内容を変更しません。 linespecで指定される行が、 現在実行されている関数とは異なる関数の中にある場合、 それら2つの関数が異なるパターンの引数やローカル変数を期待していると、 奇妙な結果が発生するかもしれません。 このため、 指定された行が、 現在実行されている関数の中にない場合、 jumpコマンドは実行の確認を求めてきます。 しかし、 ユーザがプログラムのマシン言語によるコードを熟知していたとしても、 奇妙な結果の発生することが予想されます。

jump *address
addressで指定されるアドレスにある命令から、 実行を再開します。

レジスタ$pcに新しい値を設定することで、 jumpコマンドとほとんど同等の効果を実現することができます。 両者の違いは、 レジスタ$pcに値を設定しただけでは、 ユーザ・プログラムの実行は再開されないという点にあります。 ユーザが実行を継続するときに、 プログラムが実行を再開するアドレスが変更されるだけです。 例えば、

set $pc = 0x485

を実行すると、 次にcontinueコマンドやステップ実行を行うコマンドが実行されるとき、 ユーザ・プログラムが停止したアドレスにある命令ではなく、 アドレス0x485にある命令から実行されることになります。 See Continuing and stepping

jumpコマンドが最も一般的に使用されるのは、 既に実行されたプログラム部分を、 さらに多くのブレイクポイントを設定した状態で再実行する場合でしょう。 これにより、 実行される処理の内容をさらに詳しく調べることができます。


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ユーザ・プログラムへのシグナルの通知

signal signal
実行を停止した箇所からユーザ・プログラムを再開させますが、 すぐにsignalで指定されるシグナルを通知します。 signalには、 シグナルの名前または番号を指定できます。 例えば、 多くのシステムにおいて、 signal 2signal SIGINTはどちらも、 割り込みシグナルを通知する方法です。

一方、 signalが0であれば、 シグナルを通知することなく実行を継続します。 ユーザ・プログラムがシグナルのために停止し、 通常であれば、 continueコマンドによって実行を再開するとそのシグナルを検知してしまうような場合に便利です。 signal 0を実行すると、 プログラムはシグナルを受信することなく実行を再開します。

signalを実行した後、 <RET>キーを押しても、 繰り返し実行は行われません。

signalコマンドを実行することは、 シェルからkillユーティリティを実行するのと同じではありません。 killによってシグナルを送ると、 GDBはシグナル処理テーブルによって何をするべきかを決定します (see Signals)。 一方、 signalコマンドは、 ユーザ・プログラムに直接シグナルを渡します。


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関数からの復帰

return
return expression
returnコマンドによって、 呼び出されている関数の実行をキャンセルすることができます。 式expressionを引数に指定すると、 その値が関数の戻り値として使用されます。

returnを実行すると、 GDBは選択されているスタック・フレーム (および、 その下位にあるすべてのフレーム) を破棄します。 破棄されたフレームは、 実行を完結する前に復帰したのだと考えればよいでしょう。 戻り値を指定したいのであれば、 その値をreturnへの引数として渡してください。

このコマンドは、 選択されているスタック・フレーム (see Selecting a frame)、 および、 その下位にあるすべてのフレームをポップして、 もともと選択されていたフレームを呼び出したフレームを、 最下位のフレームにします。 つまり、 そのフレームが選択されることになります。 指定された値は、 関数から戻り値を返すのに使用されるレジスタに格納されます。

returnコマンドは実行を再開しません。 関数から復帰した直後の状態で、 プログラムを停止したままにします。 これに対して、 finishコマンド (see Continuing and stepping)は、 選択されているスタック・フレームが自然に復帰するまで、 実行を再開、 継続します。


Node:Calling, Next:, Previous:Returning, Up:Altering

プログラム関数の呼び出し

call expr
void型の戻り値を表示することなく、 式exprを評価します。

ユーザ・プログラムの中からある関数を呼び出したいが、 void型の戻り値を出力させたくない場合、 このprintコマンドの変種を使用することができます。 void型でない戻り値は表示され、 値ヒストリに保存されます。

A29Kでは、 ユーザに制御される変数call_scratch_addressによって、 GDBがデバッグ対象の関数を呼び出すときに使用するスクラッチ領域が指定されます。 通常はスクラッチ領域をスタック上に置きますが、 この方法は命令空間とデータ空間を別々に持つシステム上では機能しないため、 これが必要になります。


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プログラムへのパッチ適用

デフォルトでは、 GDBはユーザ・プログラムの実行コードを持つファイル (あるいは、 コア・ファイル) を書き込み不可の状態でオープンします。 これにより、 マシン・コードを誤って変更してしまうことを防ぐことができます。 しかし、 ユーザ・プログラムのバイナリに意図的にパッチを適用することもできなくなってしまいます。

バイナリにパッチを適用したいのであれば、 set writeコマンドによって明示的にそのことを指定することができます。 例えば、 内部的なデバッグ・フラグを立てたり、 緊急の修正を行いたいということがあるでしょう。

set write on
set write off
set write onを指定すると、 GDBは実行ファイル やコア・ファイル を、 読み込み、 書き込みともに可能な状態でオープンします。 set write off (デフォルト) を指定すると、 GDBはこれらのファイルを読み込みしかできない状態でオープンします。

既にファイルをロード済みの場合、 set writeの設定を変更後、 その変更を反映させるためには、 (exec-fileコマンド 、 core-fileコマンド を使用して)、 そのファイルを再ロードしなければなりません。

show write
実行ファイル 、コア・ファイル が、 読み込みだけではなく書き込みもできる状態でオープンされる設定になっているか否かを表示します。


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GDBファイル

GDBはデバッグ対象となるプログラムのファイル名を知っている必要があります。 これは、 プログラムのシンボル・テーブルを読み込むためでもあり、 また、 プログラムを起動するためでもあります。 過去に生成されたコア・ダンプをデバッグするには、 GDBにコア・ダンプ・ファイルの名前を教えてやらなければなりません。


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ファイルを指定するコマンド

実行ファイルやコア・ダンプ・ファイルの名前を指定したい場合があります。 これは通常、 GDBの起動コマンドへの引数を利用して、 起動時に行います (see Getting In and Out of GDB)。

ときには、 GDBのセッション中に、 異なるファイルに切り替える必要がでてくることがあります。 あるいは、 GDBを起動するときに、 使いたいファイルの名前を指定するのを忘れたということもあるかもしれません。 このような場合に、 新しいファイルを指定するGDBコマンドが便利です。

file filename
filenameで指定されるプログラムをデバッグ対象にします。 そのプログラムは、 シンボル情報とメモリ内容を獲得するために読み込まれます。 また、 ユーザがrunコマンドを使用したときに実行されます。 ユーザがディレクトリを指定せず、 そのファイルがGDBの作業ディレクトリに見つからない場合、 シェルが実行すべきファイルを探すときと同様、 GDBは、 ファイルを探すべきディレクトリのリストとして環境変数PATHの値を使用します。 pathコマンドによって、 GDB、 ユーザ・プログラムの両方について、 この変数の値を変更することができます。

ファイルをメモリにマップすることのできるシステムでは、 補助的なファイルfilename.symsに、 ファイルfilenameのシンボル・テーブル情報が格納されることがあります。 このような場合、 GDBは、 filename.symsというファイルからシンボル・テーブルをメモリ上にマップすることで、 起動に要する時間を短くします。 詳細については、 (以下に説明するfileコマンド、 symbol-fileコマンド、 add-symbol-fileコマンドを実行する際にコマンドライン上で使用可能な) ファイル・オプションの-mapped-readnowの説明を参照してください。

file
fileコマンドを引数なしで実行すると、 GDBは実行ファイル、 シンボル・テーブルに関して保持している情報をすべて破棄します。
exec-file [ filename ]
実行するプログラムがfilenameで指定されるファイル内に存在する (ただし、 シンボル・テーブルはそこには存在しない) ということを指定します。 GDBは、 必要であれば、 ユーザ・プログラムの存在場所を見つけるために、 環境変数PATHを使用します。 filenameを指定しないと、 実行ファイルに関して保持している情報を破棄するよう指示したことになります。
symbol-file [ filename ]
filenameで指定されるファイルからシンボル・テーブル情報を読み込みます。 必要な場合にはPATHが検索されます。 同一のファイルから、 シンボル・テーブルと実行プログラムの両方を獲得する場合には、 fileコマンドを使用してください。

symbol-fileを引数なしで実行すると、 GDBがユーザ・プログラムのシンボル・テーブルに関して持っている情報は消去されます。

symbol-fileコマンドが実行されると、 それまでGDBが保持していたコンビニエンス変数、 値ヒストリ、 すべてのブレイクポイント、 自動表示式は破棄されます。 その理由は、 これらの情報の中に、 GDBが破棄した古いシンボル・テーブルのデータの一部である、 シンボルやデータ型を記録する内部データへのポインタが含まれているかもしれないからです。

symbol-fileを一度実行した後に<RET>キーを押しても、 symbol-fileの実行は繰り返されません。 GDBは、 特定の環境用に構成されると、 その環境において生成される標準フォーマットのデバッグ情報を理解するようになります。 GNUコンパイラを使うこともできますし、 ローカルな環境の規約に従う他のコンパイラを使用することもできます。 通常は、 GNUコンパイラを使用しているときに最高の結果を引き出すことができます。 例えばgccを使用すると、 最適化されたコードに対してデバッグ情報を生成することができます。

COFFを使用する古いSVR3システムを除外すれば、 ほとんどの種類のオブジェクト・ファイルでは、 symbol-fileコマンドを実行しても、 通常は、 ただちにシンボル・テーブルの全体が読み込まれるわけではありません。 実際に存在するソース・ファイルとシンボルを知るために、 シンボル・テーブルを素早く調べるだけです。 詳細な情報は、 後にそれが必要になったときに、 一度に1ソース・ファイルずつ読み込まれます。

2段階に分けて読み込むという手法は、 GDBの起動時間の短縮を目的としています。 ほとんどの場合、 このような手法が採用されているということに気付くことはありません。 せいぜい、 特定のソース・ファイルに関するシンボル・テーブルの詳細が読み込まれている間、 たまに停止するくらいです (もしそうしたいのであれば、 set verboseコマンドを使うことによって、 このようにして停止しているときにはメッセージを表示させることもできます。 See Optional warnings and messages)。

COFFについては、 まだこの2段階方式を実装していません。 シンボル・テーブルが COFFフォーマットで格納されている場合、 symbol-fileコマンドはシンボル・テーブル・データの全体をただちに読み込みます。 COFFのstabs拡張フォーマット(stabs-in-COFF)では、 デバッグ情報が実際にはstabsフォーマットの内部に存在するため、 2段階方式が実装されていることに注意してください。

symbol-file filename [ -readnow ] [ -mapped ]
file filename [ -readnow ] [ -mapped ]
GDBが確実にシンボル・テーブル全体を保持しているようにしたいのであれば、 シンボル・テーブル情報を読み込む任意のコマンド実行時に -readnowオプションを使用することで、 2段階によるシンボル・テーブル読み込み方式を使わないようにさせることができます。

mmapシステム・コールによるファイルのメモリへのマッピングがシステム上において有効な場合、 もう1つのオプション -mappedを使って、 GDBに対して、 再利用可能なファイルの中にユーザ・プログラムのシンボルを書き込ませることができます。 後のGDBデバッグ・セッションは、 (プログラムに変更がない場合) 実行プログラムからシンボル・テーブルを読み込むのに時間を費やすことなく、 この補助シンボル・ファイルからシンボル情報をマップします。 -mappedオプションを使用することは、 コマンドライン・オプション-mappedを指定してGDBを起動するのと同じ効果を持ちます。

補助シンボル・ファイルがユーザ・プログラムのシンボル情報をすべて確実に持つように、 両方のオプションを同時に指定することもできます。

myprogという名前のプログラムの補助シンボル・ファイルは、 myprog.symsという名前になります。 このファイルが存在すると、 (それが、 対応する実行ファイルよりも新しい限り) ユーザがmyprogをデバッグしようとすると、 GDBは常にそのファイルを使おうとします。 特別なオプションやコマンドは必要ありません。

.symsファイルは、 GDBを実行したホスト・マシンに固有のものです。 それは、 GDB内部におけるシンボル・テーブルの正確なイメージを保持しています。 複数のホスト・プラットフォーム間で共用することはできません。

core-file [ filename ]
「メモリ上のイメージ」として使用されるコア・ダンプ・ファイルの存在場所を指定します。 伝統的に、 コア・ファイルは、 それを生成したプロセスのアドレス空間の一部だけを保持しています。 GDBは、 実行ファイルそのものにアクセスすることによって、 保持されていない部分を獲得することができます。

core-fileを引数なしで実行すると、 コア・ファイルを一切使用しないことを指定したことになります。

ユーザ・プログラムが実際にGDBの管理下で実行中の場合は、 コア・ファイルは無視されることに注意してください。 したがって、 ある時点までユーザ・プログラムを実行させた後に、 コア・ファイルをデバッグしたくなったような場合、 プログラムを実行しているサブ・プロセスを終了させなければなりません。 サブ・プロセスの終了は、 killコマンドで行います (see Killing the child process)。

add-symbol-file filename address
add-symbol-file filename address [ -readnow ] [ -mapped ]
add-symbol-fileコマンドは、 filenameで指定されるファイルから追加的なシンボル・テーブル情報を読み込みます。 filenameで指定されるファイルが (何か別の方法によって) 実行中のプログラムの中に動的にロードされた場合に、 このコマンドを使用します。 addressは、 ファイルがロードされたメモリ・アドレスでなければなりません。 GDBは独力でこのアドレスを知ることはできません。 addressは式として指定することもできます。

filenameで指定されるファイルのシンボル・テーブルは、 もともとsymbol-fileコマンドによって読み込まれたシンボル・テーブルに追加されます。 add-symbol-fileコマンドは何回でも使用することができます。 新たに読み込まれたシンボル・テーブルのデータは、 古いデータに追加されていきます。 古いシンボル・データをすべて破棄するには、 symbol-fileコマンドを使用してください。

add-symbol-fileコマンドを実行した後に<RET>キーを押しても、 add-symbol-fileコマンドは繰り返し実行されません。

symbol-fileコマンドと同様、 -mappedオプションと-readnowオプション使用して、 filenameで指定されるファイルのシンボル・テーブル情報をGDBがどのように管理するかを変更することができます。

add-shared-symbol-file
add-shared-symbol-fileコマンドは、 Motorola 88k用のHarris' CXUXオペレーティング・システム上でのみ使用することができます。 GDBは自動的に共有ライブラリを探しますが、 GDBがユーザの共有ライブラリを見つけてくれない場合には、 add-shared-symbol-fileコマンドを実行できます。 このコマンドは引数を取りません。
section
sectionコマンドは、 実行ファイルのsectionセクションのベース・アドレスをaddrに変更します。 これは、 (a.outフォーマットのように) 実行ファイルがセクション・アドレスを保持していない場合や、 ファイルの中で指定されているアドレスが誤っている場合に使うことができます。 個々のセクションは、 個別に変更されなければなりません。 info filesコマンドによって、 すべてのセクションとそのアドレスを一覧表示することができます。
info files
info target
info filesinfo targetは同義です。 両方とも、 カレント・ターゲット (see Specifying a Debugging Target) に関する情報を表示します。 表示される情報には、 GDBが現在使用中の 実行ファイルやコア・ダンプ・ファイル の名前、 シンボルがそこからロードされたファイルの名前を含みます。 help targetコマンドは、 カレントなターゲットではなく、 すべての可能なターゲットを一覧表示します。

ファイルを指定するすべてのコマンドは、 引数として、 絶対パスによるファイル名と相対パスによるファイル名のどちらでも受け付けます。 GDBは、 常にファイル名を絶対パス名に変換して、 絶対パスの形で記憶します。 GDBは、 HP-UX、 SunOS、 SVr4、 Irix 5、 IBM RS/6000の共有ライブラリをサポートします。 ユーザがrunコマンドを実行したり、 コア・ファイルを調べようとすると、 GDBは自動的に共有ライブラリからシンボル定義をロードします (ユーザがrunコマンドを発行するまでは、 共有ライブラリ内部の関数への参照があっても、 GDBにはそれを理解することができません。 コア・ファイルをデバッグしている場合は、 この限りではありません)。

info share
info sharedlibrary
現在ロードされている共有ライブラリの名前を表示します。
sharedlibrary regex
share regex
UNIXの正規表現にマッチするファイルに対応する、 共有オブジェクト・ライブラリのシンボルをロードします。 自動的にロードされるファイルと同様、 ユーザ・プログラムによってコア・ファイルのために必要とされる共有ライブラリ、 または runコマンド実行時に必要とされる共有ライブラリだけがロードされます。 regexが省略されると、 ユーザ・プログラムによって必要とされるすべての共有ライブラリがロードされます。


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シンボル・ファイル読み込み時のエラー

シンボル・ファイルの読み込み中に、 GDBはときどき問題にぶつかることがあります。 例えば、 認識できないシンボル・タイプを見つけたり、 コンパイラの出力に既知の問題を発見することがあります。 デフォルトでは、 このようなエラーがあったことを、 GDBはユーザに知らせません。 なぜなら、 このようなエラーは比較的よく見られるものであり、 コンパイラのデバッグをしているような人々だけが関心を持つようなものだからです。 もし、 正しく構築されていないシンボル・テーブルに関する情報を見ることに関心があれば、 set complaintsコマンドを使用することで、 何回問題が発生しようと個々のタイプの問題について1回だけメッセージを出力するよう指示することができますし、 また、 何回問題発生したかを見るためにより多くのメッセージを表示するよう指示することもできます (see Optional warnings and messages)。

現在のバージョンで表示されるメッセージとその意味を以下に記します。

inner block not inside outer block in symbol
シンボル情報は、 シンボルのスコープの先頭と末尾の位置を示します (例えば、 ある関数の先頭、 あるいは、 ブロックの先頭など)。 このエラーは、 内側のスコープのブロックが、 外側のスコープのブロックに完全に包含されていないことを意味しています。 GDBは、 内側のブロックが外側のブロックと同一のスコープを持つものとして扱うことで、 この問題を回避します。 外側のブロックが関数でない場合には、エラー・メッセージの symbolの部分が(don't know)のように表示されることがあります。
block at address out of order
シンボルのスコープとなるブロックに関する情報は、 アドレスの低い方から昇順に並んでいなければなりません。 このエラーは、 そうなっていないということを示しています。 GDBはこの問題を回避することはせず、 読み込もうとしているソース・ファイルのシンボルを見つけるのに支障が出ます (set verbose onを指定することで、 どのソース・ファイルが関係しているかを知ることができます。 See Optional warnings and messages)。
bad block start address patched
シンボルのスコープとなるブロックに関する情報の中の開始アドレスが、 1つ前のソース行のアドレスより小さい値です。 これは、 SunOS 4.1.1 (および、 それ以前のバージョン) のCコンパイラで発生することが分かっています。 GDBは、 シンボルのスコープとなるブロックが1つ前のソース行から始まるものとして扱うことによって、 この問題を回避します。
bad string table offset in symbol n
シンボル番号nのシンボルが持っている文字列テーブルへのポインタが、 文字列テーブルのサイズを超える値です。 GDBは、 このシンボルがfooという名前を持つものとみなすことによって、 この問題を回避します。 この結果、 多くのシンボルがfooという名前を持つことになってしまうと、 他の問題が発生する可能性があります。
unknown symbol type 0xnn
シンボル情報の中に、 どのようにして読み取ればよいのかGDBには分からないような、 新しいデータ型が含まれています。 0xnnは理解できなかったシンボルの型を16進数で表わしたものです。 GDBは、 このようなシンボル情報を無視することによって、 このエラーを回避します。 通常、 プログラムのデバッグを行うことは可能になりますが、 ある特定のシンボルにアクセスすることができなくなります。 このような問題にぶつかり、 それをデバッグしたいのであれば、 gdb自身を使ってgdbをデバッグすることができます。 この場合、 シンボルcomplainにブレイクポイントを設定し、 関数read_dbx_symtabまで実行してから、 *bufpによってシンボルを参照します。
stub type has NULL name
GDBは、 ある構造体 またはクラス に関する完全な定義を見つけることができませんでした。
const/volatile indicator missing (ok if using g++ v1.x), got...
あるC++のメンバ関数に関するシンボル情報に、 より新しいコンパイラを使用した場合には生成されるいくつかの情報が欠けています。
info mismatch between compiler and debugger
GDBは、 コンパイラが生成した型の指定を解析できませんでした。


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デバッグ・ターゲットの指定

ターゲットとは、 ユーザ・プログラムが持つ実行環境を指します。 多くの場合、 GDBはユーザ・プログラムと同一のホスト環境上で実行されます。 この場合には、 fileコマンドやcoreコマンドを実行すると、 その副作用としてデバッグ・ターゲットが指定されます。 例えば、 物理的に離れた位置にあるホスト・マシン上でGDBを実行したい場合や、 シリアル・ポート経由でスタンドアロン・システムを制御したい場合、 または、 TCP/IP接続を利用してリアルタイム・システムを制御したい場合などのように、 より多くの柔軟性が必要とされる場合、 targetコマンドを使うことによって、 GDBに設定されたターゲットの種類の中から1つを指定することができます (see Commands for managing targets)。


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アクティブ・ターゲット

ターゲットには3つのクラスがあります。 プロセス、コア・ファイル、 そして、 実行ファイルです。 GDBは同時に、 1クラスにつき1つ、 全体で最高で3つまでアクティブなターゲットを持つことができます。 これにより、 (例えば) コア・ファイルに対して行ったデバッグ作業を破棄することなく、 プロセスを起動してその動作を調べることができます。

例えば、 gdb a.outを実行すると、 実行ファイルa.outが唯一のアクティブなターゲットになります。 コア・ファイル (おそらくは、 前回実行したときにクラッシュしてコア・ダンプしたもの) を併せて指定すると、 GDBは2つのターゲットを持ち、 メモリ・アドレスを知る必要がある場合には、 それを知るために2つのターゲットを並行して使用します。 この場合、 まずコア・ファイルを参照し、 次に実行ファイルを参照します。 (典型的には、 これら2つのクラスのターゲットは相互に補完的です。 というのも、 コア・ファイルには、 プログラムが持っている変数などの読み書き可能なメモリ域の内容とマシン・ステータスだけがあり、 実行ファイルには、 プログラムのテキストと初期化されたデータだけがあるからです)。

runコマンドを実行すると、 ユーザの実行ファイルはアクティブなプロセス・ターゲットにもなります。 プロセス・ターゲットがアクティブな間は、 メモリ・アドレスを要求するすべてのGDBコマンドは、 プロセス・ターゲットを参照します。 アクティブなコア・ファイル・ターゲットや 実行ファイル・ターゲットの中のアドレスは、 プロセス・ターゲットがアクティブな間は、 隠された状態になります。

新しいコア・ファイル・ターゲットや実行ファイル・ターゲットを選択するには、 core-fileコマンドやexec-fileコマンドを使用します (see Commands to specify files)。 既に実行中のプロセスをターゲットとして指定するには、 attachコマンドを使用します (see Debugging an already-running process)。


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ターゲットを管理するコマンド

target type parameters
GDBのホスト環境をターゲット・マシン またはターゲット・プロセスに接続します。 ターゲットとは、 典型的には、 デバッグ機能と通信するためのプロトコルを指します。 引数typeによって、 ターゲット・マシンの種類またはプロトコルを指定します。

parametersはターゲット・プロトコルによって解釈されるものですが、 典型的には、 接続すべきデバイス名やホスト名、 プロセス番号、 ボーレートなどが含まれます。

targetコマンドを実行した後に<RET>キーを押しても、 targetコマンドは再実行されません。

help target
利用可能なすべてのターゲットの名前を表示します。 現在選択されているターゲットを表示させるには、 info targetコマンドまたはinfo filesコマンドを使用します (see Commands to specify files)。
help target name
ある特定のターゲットに関する説明を表示します。 選択時に必要となるパラメータも表示されます。
set gnutarget args
GDBは、 自分で持っているライブラリBFDを使用してユーザ・ファイルを読み込みます。 GDBは、 実行ファイルコア・ファイル.oファイルのどれを自分が読み込んでいるのかを知っています。 しかし、 set gnutargetコマンドを使用して、 ファイルのフォーマットを指定することもできます。 ほとんどのtargetコマンドとは異なり、 gnutargetにおけるtargetは、 マシンではなくプログラムです。

注意: set gnutargetでファイル・フォーマットを指定するには、 実際のBFD名を知っている必要があります。

See Commands to specify files

show gnutarget
gnutargetがどのようなファイル・フォーマットを読むよう設定されているかを表示させるには、 show gnutargetコマンドを使用します。 gnutargetを設定していない場合、 個々のファイルのフォーマットをGDBが自動的に決定します。 この場合、 show gnutargetを実行すると The current BDF target is "auto" と表示されます。

以下に、 一般的なターゲットをいくつか示します (GDBの構成によって、 利用可能であったり利用不可であったりします)。

target exec program
実行ファイルです。 target exec programexec-file programと同じです。
target core filename
コア・ダンプ・ファイルです。 target core filenamecore-file filenameと同じです。
target remote dev
GDB固有のプロトコルによる、 リモートのシリアル・ターゲットです。 引数devによって、 接続を確立するために使用するシリアル装置 (例えば、 /dev/ttya) を指定します。 See Remote debuggingtarget remoteは、 loadコマンドもサポートするようになりました。 これは、 スタブをターゲット・システム上に持っていく方法が別にあり、 かつ、 ダウンロードが実行されたときに破壊されないようなメモリ域にそれを置くことができる場合にのみ役に立ちます。
target sim
CPUシミュレータです。 See Simulated CPU Target

以下のターゲットはすべて、 特定のCPUに固有のものであり、 特定の構成においてのみ利用可能です。


target abug dev
M68K用のABug ROMモニタです。
target adapt dev
A29K用のAdaptモニタです。
target amd-eb dev speed PROG
シリアル回線により接続されている、 リモートのPCに組み込まれたAMD EB29Kボードです。 target remoteの場合と同様、 devはシリアル装置です。 speedによって回線速度を指定することができます。 PROGは、 デバッグ対象となるプログラムをPC上のDOSから見た場合の名前です。 See The EBMON protocol for AMD29K
target array dev
Array Tech LSI33K RAIDコントローラ・ボードです。
target bug dev
MVME187(m88k)ボード上で動作するBUGモニタです。
target cpu32bug dev
CPU32(M68K)ボード上で動作するCPU32BUGモニタです。
target dbug dev
Motorola ColdFire用のdBUG ROMモニタです。
target ddb dev
Mips Vr4300用のNEC DDBモニタです。
target dink32 dev
PowerPC用のDINK32 ROMモニタです。
target e7000 dev
日立H8、 SH用のE7000エミュレータです。
target es1800 dev
M68K用のES-1800エミュレータです。
target est dev
CPU32(M68K)ボード上で動作するEST-300 ICEモニタです。
target hms dev
ユーザのホストにシリアル回線で接続された日立のSH、 H8/300、 H8/500ボードです。 特別なコマンドであるdevicespeedによって、 使用されるシリアル回線と通信速度を制御します。 See GDB and Hitachi Microprocessors
target lsi dev
Mips用のLSI ROMモニタです。
target m32r dev
三菱M32R/D ROMモニタです。
target mips dev
Mips用のIDT/SIM ROMモニタです。
target mon960 dev
Intel i960用のMON960モニタです。
target nindy devicename
Nindy Monitorにより制御されるIntel 960ボードです。 devicenameは、接続に使用するシリアル装置の名前です。 例えば/dev/ttyaです。 See GDB with a remote i960 (Nindy)
target nrom dev
NetROM ROMエミュレータです。 このターゲットは、 ダウンロードのみサポートしています。
target op50n dev
OKI HPPAボード上で動作するOP50Nモニタです。
target pmon dev
Mips用のPMON ROMモニタです。
target ppcbug dev
target ppcbug1 dev
PowerPC用のPPCBUG ROMモニタです。
target r3900 dev
東芝R3900 Mips用のDensan DVE-R3900 ROMモニタです。
target rdi dev
RDIライブラリ・インターフェイスを経由したARM Angelモニタです。
target rdp dev
ARM Demonモニタです。
target rom68k dev
M68K IDPボード上で動作するROM 68Kモニタです。
target rombug dev
OS/9000用のROMBUG ROMモニタです。
target sds dev
(MotorolaのADSなどの) PowerPCボード上で動作するSDSモニタです。
target sparclite dev
ロードするためだけの目的で使用される、 富士通のsparcliteボードです。 プログラムをデバッグするためには、 さらに別のコマンドを使用しなければなりません。 一例を挙げると、 GDBの標準的なリモート・プロトコルを使用する target remote devです。
target sh3 dev
target sh3e dev
日立SH-3、 SH-3Eターゲット・システムです。
target st2000 dev speed
Tandem STDBUGプロトコルを実行しているTandem ST2000電話交換機です。 devは、 ST2000のシリアル回線に接続されている装置の名前です。 speedは通信回線の速度です。 GDBがST2000にTCPまたはTelnetで接続するよう構成されている場合、 引数は使用されません。 See GDB with a Tandem ST2000
target udi keyword
AMD UDIプロトコルを使用するRemote AMD29Kターゲットです。 引数keywordが、 使用する29Kボードまたはシミュレータを指定します。 See The UDI protocol for AMD29K
target vxworks machinename
TCP/IPで接続されたVxWorksシステムです。 引数machinenameは、 ターゲット・システムのマシン名またはIPアドレスです。 See GDB and VxWorks
target w89k dev
Winbond HPPAボード上で動作するW89Kモニタです。
GDBの構成によって、 利用可能なターゲットも異なるものになります。 構成次第で、 ターゲットの数は多くなったり少なくなったりします。

多くのリモート・ターゲットでは、 接続に成功すると、 実行プログラムのコードをダウンロードすることが必要となります。


load filename
構成によってGDBに組み込まれたリモート・デバッグ機能によっては、 loadコマンドが使用可能になります。 これが利用可能な場合、 実行ファイルfilenameが (例えば、 ダウンロードやダイナミック・リンクによって) リモート・システム上でデバッグできるようになることを意味します。 また、 loadコマンドはadd-symbol-fileコマンドと同様、 ファイルfilenameのシンボル・テーブルをGDB内に記録します。 GDBがloadコマンドを提供していない場合、 それを実行しようとすると 「You can't do that when your target is ...」 というエラー・メッセージが表示されます。

実行ファイルの中で指定されたアドレスに、 ファイルはロードされます。 オブジェクト・ファイルのフォーマットによっては、 プログラムをリンクするときに、 ファイルをロードするアドレスを指定できるものもあります。 これ以外のフォーマット (例えば、 a.out) では、 オブジェクト・ファイルのフォーマットによって固定的にアドレスが指定されます。

VxWorksでloadコマンドを実行すると、 filenameで指定される実行ファイルがカレントなターゲット・システム上で動的にリンクされ、 シンボルがGDBに追加されます。

Intel 960ボードのNindyインターフェイスでは、 loadコマンドはfilenameで指定されるファイルを960側にダウンロードし、 そのシンボルをGDBに追加します。

日立のSH、 H8/300、 H8/500ボード (see GDB and Hitachi Microprocessors) に対するリモート・デバッグを選択すると、 loadコマンドはユーザ・プログラムを日立ボードにダウンロードし、 (fileコマンドと同様) ユーザのホスト・マシン上のGDBのカレントなターゲット実行ファイルとしてオープンします。

loadコマンドを実行した後に<RET>キーを押しても、 loadコマンドは繰り返し実行されません。


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ターゲットのバイト・オーダの選択

MIPS、 PowerPC、 Hitachi SHなどのプロセッサは、 ビッグ・エンディアン、 リトル・エンディアンのどちらのバイト・オーダでも実行することができます。 通常は、 実行ファイルまたはシンボルの中に、 エンディアン種別を指定するビットがあるので、 どちらを使用するかを気にする必要はありません。 しかし、 GDBの認識しているプロセッサのエンディアン種別を手作業で調整することができれば、 便利なこともあるでしょう。

set endian big
GDBに対して、 ターゲットはビッグ・エンディアンであると想定するよう指示します。
set endian little
GDBに対して、 ターゲットはリトル・エンディアンであると想定するよう指示します。
set endian auto
GDBに対して、 実行ファイルに関連付けされているバイト・オーダを使用するよう指示します。
show endian
GDBが認識している、 ターゲットの現在のバイト・オーダ種別を表示します。

これらのコマンドは、 ホスト上でのシンボリック・データの解釈を調整するだけであり、 ターゲット・システムに対しては全く何の影響も持たないということに注意してください。


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リモート・デバッグ

通常の方法でGDBを実行させることのできないマシン上で実行中のプログラムをデバッグするには、 リモート・デバッグ機能を使うのが便利です。 例えば、 オペレーティング・システムのカーネルのデバッグや、 フル機能を持つデバッガを実行するのに十分な機能を持つ汎用的なオペレーティング・システムを持たない小規模なシステムでのデバッグでは、 ユーザはリモート・デバッグ機能を使うことになるかもしれません。 GDBは、 その構成によっては、 特別なシリアル・インターフェイスやTCP/IPインターフェイスを持ち、 これを特定のデバッグ・ターゲット用に使用することができます。 さらに、 GDBには汎用的なシリアル・プロトコルが組み込まれており (GDB固有のもので、 特定のターゲット・システムに固有なものではありません)、 リモート・スタブを作成すれば、 これを使用することができます。 リモート・スタブとは、 GDBと通信するためにリモート・システム上で動作するコードです。 GDBの構成によっては、 他のリモート・ターゲットが利用可能な場合もあります。 利用可能なリモート・ターゲットを一覧表示させるには、 help targetコマンドを使用します。


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GDBリモート・シリアル・プロトコル

他のマシン上で実行中のプログラムをデバッグするには (ターゲット・マシンをデバッグするには)、 そのプログラムを単独で実行するために通常必要となる事前条件をすべて整える必要があります。 例えば、 Cのプログラムの場合、

  1. Cの実行環境をセットアップするためのスタートアップ・ルーチンが必要です。 これは通常crt0のような名前を持っています。 スタートアップ・ルーチンは、 ハードウェアの供給元から提供されることもありますし、 ユーザが自分で書かなければならないこともあります。
  2. ユーザ・プログラムからのサブルーチン呼び出しをサポートするために、 入出力の管理などを行うCのサブルーチン・ライブラリが必要になるかもしれません。
  3. ユーザ・プログラムを他のマシンに持っていく手段、 例えばダウンロード・プログラムが必要です。 これはハードウェアの供給元から提供されることが多いのですが、 ハードウェアのドキュメントをもとにユーザが自分で作成しなければならないこともあります。

次に、ユーザ・プログラムがシリアル・ポートを使って、GDBを実行中のマシン (ホスト・マシン) と通信できるように準備します。 一般的には、以下のような形になります。

ホスト上では:
GDBは既にこのプロトコルの使い方を理解しています。 他の設定がすべて終了した後、 単にtarget remoteコマンドを使用するだけです (see Specifying a Debugging Target)。
ターゲット上では:
ユーザ・プログラムに、 GDBリモート・シリアル・プロトコルを実装した特別なサブルーチンを いくつかリンクする必要があります。 これらのサブルーチンを含むファイルは、 デバッグ・スタブと呼ばれます。

特定のリモート・ターゲットでは、 ユーザ・プログラムにスタブをリンクする代わりに、 gdbserverという補助プログラムを使うこともできます。 詳細については、 See Using the gdbserver program

デバッグ・スタブはリモート・マシンのアーキテクチャに固有のものです。 例えば、 SPARCボード上のプログラムをデバッグするにはsparc-stub.cを使います。

以下に実際に使えるスタブを列挙します。 これらは、 GDBとともに配布されています。


i386-stub.c
Intel 386アーキテクチャ、 およびその互換アーキテクチャ用です。
m68k-stub.c
Motorola 680x0アーキテクチャ用です。
sh-stub.c
日立SHアーキテクチャ用です。
sparc-stub.c
SPARCアーキテクチャ用です。
sparcl-stub.c
富士通SPARCLITEアーキテクチャ用です。
GDBとともに配布されるREADMEファイルには、 新しく追加された他のスタブのことが記されているかもしれません。


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スタブの提供する機能

各アーキテクチャ用のデバッグ・スタブは、 3つのサブルーチンを提供します。

set_debug_traps
このルーチンは、 ユーザ・プログラムが停止したときにhandle_exceptionが実行されるよう設定します。 ユーザ・プログラムは、 その先頭付近でこのサブルーチンを明示的に呼び出さなければなりません。
handle_exception
これが中心的な仕事をする部分ですが、 ユーザ・プログラムはこれを明示的には呼び出しません。 セットアップ・コードによって、 トラップが発生したときに handle_exceptionが実行されるよう設定されます。

ユーザ・プログラムが実行中に (例えば、ブレイクポイントで) 停止すると、 handle_exceptionが制御権を獲得し、 ホスト・マシン上のGDBとの通信を行います。 これが、 通信プロトコルが実装されている部分です。 handle_exceptionは、 ターゲット・マシン上でGDBの代理として機能します。 それはまず、 ユーザ・プログラムの状態に関する情報を要約して送ることから始めます。 次に、 GDBが必要とする情報を入手して転送する処理を継続します。 これは、 ユーザ・プログラムの実行を再開させるようなGDBコマンドが実行されるまで続きます。 そのようなコマンドが実行されると、 handle_exceptionは、 制御をターゲット・マシン上のユーザ・コードに戻します。

breakpoint
ユーザ・プログラムにブレイクポイントを持たせるには、 この補助的なサブルーチンを使います。 特定の状況においては、 これがGDBが制御を獲得する唯一の方法です。 例えば、 ユーザのターゲット・マシンに割り込みを発生させるボタンのようなものがあれば、 このサブルーチンを呼び出す必要はありません。 割り込みボタンを押すことで、 制御はhandle_exceptionに、 つまり事実上GDBに渡されます。 マシンによっては、 シリアル・ポートから文字を受け取るだけでトラップが発生することもあります。 このような場合には、 ユーザ・プログラム自身からbreakpointを呼び出す必要はなく、 ホストのGDBセッションからtarget remoteを実行するだけで制御を得ることができます。

これらのどのケースにも該当しない場合、 あるいは、 デバッグ・セッションの開始箇所としてあらかじめ決めてあるところでユーザ・プログラムが停止することを 単に確実にしたいのであれば、 breakpointを呼び出してください。


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スタブに対する必須作業

GDBとともに配布されるデバッグ用スタブは、 特定のチップのアーキテクチャ用にセットアップされたものですが、 デバッグのターゲット・マシンに関してそれ以外の情報は持っていません。

まず最初に、 どのようにしてシリアル・ポートと通信するかをスタブに教えてやる必要があります。

int getDebugChar()
シリアル・ポートから単一文字を読み込むサブルーチンとしてこれを書きます。 これは、 ターゲット・システム上の getcharと同一かもしれません。 これら2つを区別したい場合を考慮して、 異なる名前が使われています。
void putDebugChar(int)
シリアル・ポートに単一文字を書き込むサブルーチンとしてこれを書きます。 これは、 ターゲット・システム上の putcharと同一かもしれません。 これら2つを区別したい場合を考慮して、 異なる名前が使われています。

実行中のユーザ・プログラムをGDBが停止できるようにしたいのであれば、 割り込み駆動型のシリアル・ドライバを使用して、 ^C (control-C文字、 すなわち\003) を受信したときに停止するよう設定する必要があります。 GDBはこの文字を使って、 リモート・システムに対して停止するよう通知します。

デバッグ・ターゲットが適切なステータス情報をGDBに対して返せるようにするためには、 おそらく標準のスタブを変更する必要があるでしょう。 最も美しくなく、 しかし最も手っ取り早くこれを実現する方法は、 ブレイクポイント命令を実行することです (この方法が「美しくない」のは、 GDBがSIGINTではなくSIGTRAPを報告してくる点にあります)。

ユーザが提供する必要のあるルーチンには、 ほかに以下のようなものがあります。

void exceptionHandler (int exception_number, void *exception_address)
例外処理テーブルにexception_addressを組み込むよう、 この関数を書きます。 ユーザがこれを提供しなければならないのは、 スタブにはターゲット・システム上の例外処理テーブルがどのようなものになるかを知る手段がないからです (例えば、 プロセッサのテーブルはROM上にあり、 その中のエントリがRAM上のテーブルを指す、 という形になっているかもしれません)。 exception_number は例外番号で、 これは変更される必要があります。 例外番号の意味は、 アーキテクチャに依存します (例えば、 0による除算、 境界を無視したメモリ・アクセス等は、 異なる番号によって表わされるかもしれません)。 この例外が発生したとき、 制御は直接exception_addressに渡されなければならず、 また、 プロセッサの状態 (スタック、レジスタなど) はプロセッサ例外が発生したときの状態と同じでなければなりません。 したがって、 exception_addressに到達するのにジャンプ命令を使用したいのであれば、 サブルーチン・ジャンプではなく、 ただのジャンプ命令を使わなければなりません。

386では、 ハンドラが実行されているときに割り込みがマスクされるよう、 exception_addressは割り込みゲートとして組み込まれる必要があります。 そのゲートは特権レベル0 (最も高いレベル) でなければなりません。 SPARC用のスタブや68k用のスタブは、 exceptionHandlerの助けを借りなくても自分で割り込みをマスクすることができます。

void flush_i_cache()
(sparc、 sparcliteのみ) ターゲット・マシンに命令キャッシュがある場合、 それをフラッシュするようこのサブルーチンを書きます。 命令キャッシュがない場合には、 このサブルーチンは何もしないものになるかもしれません。

命令キャッシュを持つターゲット・マシン上のGDBは、 ユーザ・プログラムが安定した状態にあることが この関数によって保証されることを必要とします。

また、次のライブラリ・ルーチンが使用可能であることを確かめなければなりません。

void *memset(void *, int, int)
あるメモリ領域に既知の値を設定する標準ライブラリ関数memsetです。 フリーのlibc.aを持っていれば、 そこにmemsetがあります。 フリーのlibc.aがなければ、 memsetをハードウェアの供給元から入手するか、 自分で作成する必要があります。

GNU Cコンパイラを使っていないのであれば、 他の標準ライブラリ・サブルーチンも必要になるかもしれません。 これは、 スタブによっても異なりますが、 一般的にスタブは、 gccがインライン・コードとして生成する共通ライブラリ・サブルーチンを使用する可能性があります。


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ここまでのまとめ

要約すると、 ユーザ・プログラムをデバッグする準備が整った後、 以下の手順に従わなければなりません。

  1. 下位レベルのサポート・ルーチンがあることを確認します (see What you must do for the stub)。
    getDebugChar, putDebugChar,
    flush_i_cache, memset, exceptionHandler.
    
  2. ユーザ・プログラムの先頭付近に以下の行を挿入します。
    set_debug_traps();
    breakpoint();
    
  3. 680x0のスタブに限り、 exceptionHookという変数を提供する必要があります。 通常は、 以下のように使います。
    void (*exceptionHook)() = 0;
    

    しかし、 set_debug_trapsが呼び出される前に、 ユーザ・プログラム内のある関数を指すようこの変数を設定すると、 トラップ (例えば、 バス・エラー) で停止した後にGDBが処理を継続実行するときに、 その関数が呼び出されます。 exceptionHookによって指される関数は、 1つの引数付きで呼び出されます。 それは、 int型の例外番号です。

  4. ユーザ・プログラム、 ターゲット・アーキテクチャ用のGDBデバッグ・スタブ、 サポート・サブルーチンをコンパイルしリンクします。
  5. ターゲット・マシンとGDBホストとの間がシリアル接続されていることを確認します。 また、 ホスト上のシリアル・ポートの名前を調べます。
  6. ターゲット・マシンにユーザ・プログラムをダウンロードし (あるいは、 製造元の提供する手段によってターゲット・マシンにユーザ・プログラムを持っていき)、 起動します。
  7. リモート・デバッグを開始するには、 ホスト・マシン上でGDBを実行し、 リモート・マシン上で実行中のプログラムを実行ファイルとして指定します。 これにより、 ユーザ・プログラムのシンボルとテキスト域の内容を見つける方法がGDBに通知されます。

    次にtarget remoteコマンドを使って通信を確立します。 引数には、 シリアル回線に接続された装置名または (通常はターゲットと接続されたシリアル回線を持つ端末サーバの) TCPポートを指定することで、 ターゲット・マシンとの通信方法を指定します。 例えば、 /dev/ttybという名前の装置に接続されているシリアル回線を使うには、

    target remote /dev/ttyb
    

    とします。

    TCP接続を使うには、 host:portという形式の引数を使用します。 例えば、 manyfarmsという名前の端末サーバのポート2828に接続するには、

    target remote manyfarms:2828
    

    とします。

ここまでくると、 データの値の調査、 変更、 リモート・プログラムのステップ実行、 継続実行に通常使用するすべてのコマンドを使用することができます。

リモート・プログラムの実行を再開し、 デバッグするのをやめるには、 detachコマンドを使います。 GDBがリモート・プログラムを待っているときにはいつでも、 割り込み文字 (多くの場合 <C-C>) を入力すると、 GDBはそのプログラムを停止しようとします。 これは成功することも失敗することもありますが、 その成否は、 リモート・システムのハードウェアやシリアル・ドライバにも依存します。 割り込み文字を再度入力すると、 GDBは以下のプロンプトを表示します。

Interrupted while waiting for the program.
Give up (and stop debugging it)?  (y or n)

ここでyを入力すると、 GDBはリモート・デバッグ・セッションを破棄します (後になって再実行したくなった場合には、 接続するためにtarget remoteを再度使用します)。 nを入力すると、 GDBは再び待ち状態になります。


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通信プロトコル

GDBとともに提供されるスタブ・ファイルは、 ターゲット側の通信プロトコルを実装します。 そしてGDB側の通信プロトコルは、 GDBのソース・ファイルremote.cに実装されています。 通常は、 これらのサブルーチンに通信処理を任せて、 詳細を無視することができます (独自のスタブ・ファイルを作成するときでも、 詳細については無視して、 既存のスタブ・ファイルをもとにして作成を始めることができます。 sparc-stub.cが最もよく整理されており、 したがって最も読みやすくなっています)。

しかし、 場合によっては、 プロトコルについて何かを知る必要が出てくることもあるでしょう。 例えば、 ターゲット・マシンにシリアル・ポートが1つしかなく、 GDBに対して送られてきたパケットを検出したときに、 ユーザ・プログラムが何か特別なことをするようにしたい場合です。

(単一文字による確認メッセージを除く) すべてのGDBコマンドとそれに対する応答は、 チェックサムを含むパケットとして送信されます。 パケットは、 文字$で始まり、 文字#に2桁のチェックサム値が続いて終わります。

$packet info#checksum

ここで、 checksumpacket infoのすべての文字の値を合計したものを256で割った余りとして計算されます。

ホスト・マシンまたはターゲット・マシンがパケットを受信したとき、 最初に期待される応答は確認メッセージです。 これは単一文字で、 (パッケージが正しく受信されたことを示す) +または (再送要求を示す) -です。

ホスト (GDB) がコマンドを送信し、 ターゲット (ユーザ・プログラムに組み込まれたデバッグ・スタブ) が応答としてデータを送信します。 ターゲットは、ユーザ・プログラムが停止したときにも、 データを送信します。

コマンド・パケットは最初の文字で区別されます。 最初の文字がコマンドの種類を表わします。

以下に、 現在サポートされているコマンドをいくつか列挙します (コマンドの完全なリストについてはgdb/remote.cを参照してください)。

g
CPUレジスタの値を要求します。
G
CPUレジスタの値を設定します。
maddr,count
addrで示される位置からcountで示されるバイト数を読み込みます。
Maddr,count:...
addrで示される位置からcountで示されるバイト数を書き込みます。
c
caddr
カレントなアドレス (addrが指定されているのであれば、 それによって指定されるアドレスから) 実行を再開します。
s
saddr
プログラム・カウンタの指すカレントな箇所から (addrが指定されているのであれば、 それによって指定されるアドレスから) ターゲット・プログラムを1命令だけステップ実行します。
k
ターゲット・プログラムを終了させます。
?
最後に受信したシグナルを報告します。 GDBのシグナル処理コマンドを利用できるように、 デバッグ・スタブの中のある関数が、 CPUトラップを対応するPOSIXシグナル値として報告してきます。
T
リモートのスタブに対して、 GDBがシングル・ステップ処理や条件付きブレイクポイントに関する迅速な決定を下すのに必要となる レジスタの情報だけを送信するようにさせます。 これによって、 ステップ実行中の1命令ごとにすべてのレジスタの情報を入手する必要がなくなります。

現在のGDBは、 レジスタへのライト・スルー・キャッシュを実装していて、 ターゲットが実行された場合のみ、 レジスタを再度読み込みます。

シリアル接続に問題がある場合には、 set remotedebugコマンドを使うことができます。 これによりGDBは、 シリアル回線経由でリモート・マシンとの間で送受信したすべてのパケットを報告するようになります。 パケット・デバッグ用の情報はGDBの標準出力ストリームに表示されます。 set remotedebug offによってこの設定が解除され、 show remotedebugによって現在の設定が表示されます。


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gdbserverプログラムの使用

gdbserverは、 UNIX系システム用の制御プログラムで、 これにより、 通常のデバッグ用スタブをリンクすることなく、 target remoteコマンドによって、 ユーザ・プログラムをリモートのGDBに接続することができます。

gdbserverは、 デバッグ用スタブに完全に取って代わるものではありません。 gdbserverは、 GDBが必要とするのと同様のオペレーティング・システムの機能を基本的には必要とするからです。 実際、 リモートのGDBと接続するためにgdbserverを実行できるシステムであれば、 GDBをローカルに実行することも可能です。 それでも、 gdbserverはGDBと比較するとかなりサイズが小さいので、 便利なことがあります。 また、 gdbserverの移植はGDB全体の移植よりも簡単なので、 gdbserverを使うことで、 新しいシステムでの作業をより早く開始することができます、 最後に、 リアル・タイム・システムの開発をしている場合、 リアル・タイムな操作に関わるトレードオフのために、 例えばクロス・コンパイルなどによって、 他のシステム上で可能な限り多くの開発作業を行ったほうが便利であるということがあるでしょう。 デバッグ作業に関しても、 gdbserverを使うことでこれと同じような選択を行うことができます。 GDBとgdbserverは、 シリアル回線またはTCP接続を経由して、 標準的なGDBリモート・シリアル・プロトコルによって通信します。

ターゲット・マシンでは:
デバッグしたいプログラムのコピーが1つ必要です。 gdbserverはユーザ・プログラムのシンボル・テーブルを必要とはしませんので、 スペースの節約が必要であれば、 プログラムをストリップすることができます。 ホスト・システム上のGDBが、 シンボルに関するすべての処理を実行します。

gdbserverを使うには、 GDBとの通信方法、 ユーザ・プログラムの名前、 ユーザ・プログラムへの引数を教えてやる必要があります。 構文は、 以下のとおりです。

target> gdbserver comm program [ args ... ]

commは (シリアル回線を使うための) 装置名、 あるいは、 TCPのホスト名とポート番号です。 例えば、 foo.txtという引数を指定してEmacsをデバッグし、 シリアル・ポート/dev/com1経由でGDBと通信するには、 以下のように実行します。

target> gdbserver /dev/com1 emacs foo.txt

gdbserverは、 ホスト側のGDBが通信してくるのを受動的に待ちます。

シリアル回線の代わりにTCP接続を使うには、 以下のようにします。

target> gdbserver host:2345 emacs foo.txt

前の例との唯一の違いは第1引数です。 これは、 ホストのGDBとTCPによって接続することを指定しています。 host:2345は、 マシンhostからローカルのTCPポート2345へのTCP接続をgdbserverが期待していることを意味します (現在のバージョンでは、 hostの部分は無視されます)。 ターゲット・システム上で既に使われているTCPポートでなければ、 任意の番号をポート番号として選択できます (例えば、 23telnetに予約されています) 3。 ここで指定したのと同じポート番号を、 ホスト上のGDBのtarget remoteコマンドで使わなければなりません。

GDBのホスト・マシンでは:
GDBはシンボル情報、 デバッグ情報を必要とするので、 ストリップされていないユーザ・プログラムのコピーが必要です。 通常どおり、 第1引数にユーザ・プログラムのローカル・コピーの名前を指定してGDBを起動します (シリアル回線の速度が9600 bps以外であれば、 --baudオプションも必要になります)。 その後、 target remoteコマンドによってgdbserverとの通信を確立します。 引数には、 装置名 (通常は/dev/ttybのようなシリアル装置)、 または、 host:PORTという形式でのTCPポート記述子を指定します。 例えば、
(gdb) target remote /dev/ttyb

では、 シリアル回線/dev/ttybを介してgdbserverと通信します。 また、

(gdb) target remote the-target:2345

では、 ホストthe-target上のポート2345に対するTCP接続によって通信します。 TCP接続を使う場合には、 target remoteコマンドを実行する前に、 gdbserverを起動しておかなければなりません。 そうしないと、エラーになります。 エラー・テキストの内容はホスト・システムによって異なりますが、 通常はConnection refusedのような内容です。


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gdbserve.nlmプログラムの使用

gdbserve.nlmはNetWareシステムでの制御プログラムです。 これによって、 target remoteコマンドでユーザ・プログラムをリモートのGDBに接続することができます。 GDBとgdbserve.nlmは、 標準のGDBリモート・シリアル・プロトコルを使って、 シリアル回線経由で通信します。

ターゲット・マシンでは:
デバッグしたいプログラムのコピーが1つ必要です。 gdbserve.nlmはユーザ・プログラムのシンボル・テーブルを必要とはしませんので、 スペースの節約が必要であれば、 プログラムをストリップすることができます。 ホスト・システム上のGDBが、 シンボルに関わるすべての処理を実行します。

gdbserve.nlmを使うには、 GDBとの通信方法、 ユーザ・プログラムの名前、 ユーザ・プログラムの引数を教えてやる必要があります。 構文は、 以下のとおりです。

load gdbserve [ BOARD=board ] [ PORT=port ]
              [ BAUD=baud ] program [ args ... ]

boardportがシリアル回線を指定します。 baudは接続に使われるボーレートを指定します。 portnodeのデフォルト値は0、 baudのデフォルト値は9600 bpsです。

例えば、 foo.txtという引数を指定してEmacsをデバッグし、 シリアル・ポート番号2、 ボード1を経由して19200 bpsの接続でGDBと通信するには、 以下のように実行します。

load gdbserve BOARD=1 PORT=2 BAUD=19200 emacs foo.txt

GDBのホスト・マシンでは:
GDBはシンボル情報、 デバッグ情報を必要とするので、 ストリップされていないユーザ・プログラムのコピーが必要です。 通常どおり、 第1引数にユーザ・プログラムのローカル・コピーの名前を指定してGDBを起動します (シリアル回線の速度が9600 bps以外であれば、 --baudオプションも必要になります)。 その後、 target remoteコマンドによって gdbserve.nlmとの通信を確立します。 引数には、 装置名 (通常は/dev/ttybのようなシリアル装置) を指定します。 例えば、
(gdb) target remote /dev/ttyb

は、 シリアル回線/dev/ttybを経由してgdbserve.nlmと通信します。


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GDBとリモートi960(Nindy)

Nindyは、 Intel 960ターゲット・システム用のROM Monitorプログラムです。 Nindyを使ってリモートのIntel 960を制御するようGDBが構成されている場合、 いくつかの方法によってGDBに960との接続方法を教えることができます。


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Nindy使用時の起動方法

コマンドライン・オプションを一切使わずにgdbを起動すると、 通常のGDBプロンプトが表示されるに、 使用するシリアル・ポートを指定するよう促されます。

Attach /dev/ttyNN -- specify NN, or "quit" to quit:

このプロンプトに対して、 使いたいシリアル・ポートを示す (/dev/ttyの後ろの) サフィックスを入力します。 もしそうしたいのであれば、 プロンプトに空行で答えることによって、 Nindyとの接続を確立せずに起動することもできます。 この場合、 後にNindyと接続したいときにはtargetコマンドを使います (see Commands for managing targets)。


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Nindy用のオプション

接続されたNindy-960ボードとのGDBセッションを開始するための 起動オプションを以下に示します。

-r port
ターゲット・システムとの接続に使用されるシリアル・インターフェイスのシリアル・ポート名を指定します。 このオプションは、 GDBがIntel 960ターゲット・アーキテクチャ用に構成されているときのみ利用可能です。 portは、 完全なパス名 (例:-r /dev/ttya)、 /dev配下のデバイス名 (例:-r ttya)、 tty固有の一意なサフィックス (例:-r a) のいずれによっても指定することができます。
-O
(ゼロではなく、 英大文字のOです)。 GDBがターゲット・システムと接続する際に、 古いNindyモニタ・プロトコルを使用すべきであることを指定します。 このオプションは、 GDBがIntel 960ターゲット・アーキテクチャ用に構成されているときのみ利用可能です。
注意-Oを指定したにもかかわらず、 実際にはより新しいプロトコルを期待しているターゲット・システムに接続しようとした場合、 接続は失敗します。 この失敗は、 あたかも通信速度の不一致が原因であるかのように見えてしまいます。 GDBは、 異なる回線速度によって再接続を繰り返し試みます。 割り込みによって、 この処理を中断させることができます。

-brk
接続する前にNindyターゲットをリセットするために、 ターゲット・システムに対して最初にBREAK信号を送信するよう、 GDBに対して指定します。
注意:多くのターゲット・システムは、 このオプションが必要とするハードウェアを備えていません。 このオプションは、 少数のボードでしか機能しません。

標準の-bオプションが、 シリアル・ポート上で使用される回線速度を制御します。


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Nindy resetコマンド

reset
ターゲットがNindyである場合、 このコマンドはBREAK信号をリモートのターゲット・システムに送信します。 これは、 BREAK信号を受信したときにハード・リセット (または、 その他の興味深いアクション) を実行する回路がターゲットに備わっている場合にのみ役に立ちます。


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AMD29K用のUDIプロトコル

GDBは、 a29kプロセッサ・ファミリをデバッグするためのAMD UDI (Universal Debugger Interface) プロトコルをサポートしています。 MiniMONモニタを実行するAMDターゲットという構成を使うには、 AMD社から無料で入手可能なMONTIPプログラムが必要になります。 また、 AMD社から入手可能なUDI準拠のa29kシミュレータ・プログラムISSTIPとともにGDBを使うこともできます。
target udi keyword
リモートのa29kボードまたはシミュレータへのUDIインターフェイスを選択します。 keywordは、 AMD構成ファイルudi_soc内のエントリです。 このファイルには、 a29kターゲットに接続するときに使われるパラメータを指定する キーワード・エントリが含まれます。 udi_socファイルが作業ディレクトリにない場合には、 環境変数UDICONFにそのパス名を設定しなければなりません。


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AMD29KのEBMONプロトコル

AMD社は、 PC組み込み用の29K開発ボードを、 DOS上で動作するEBMONというモニタ・プログラムとともに配布しています。 この開発システムは、 省略してEB29Kと呼ばれます。 UNIXシステム上のGDBを使ってEB29Kボード上でプログラムを実行するには、 まず (EB29Kを組み込んだ) PCとUNIXシステムのシリアル・ポートの間をシリアル回線で接続しなければなりません。 以下の節では、 PCのCOM1ポートとUNIXシステムの/dev/ttyaとの間をケーブルで接続してあるものと仮定します。


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通信セットアップ

PC上のDOSで以下のように実行することによって、 PCのポートをセットアップします。

C:\> MODE com1:9600,n,8,1,none

MS DOS 4.0上で実行されているこの例では、 PCポートを通信速度9600 bps、 パリティ・ビットなし、 データ・ビット数8、 ストップ・ビット数1、 リトライなしに設定しています。 UNIX側を設定する際には、 同一の通信パラメータを使わなければなりません。

シリアル回線のUNIX側にPCの制御権を与えるには、 DOSコンソール上で以下のように実行します。

C:\> CTTY com1

(後に、 DOSコンソールに制御を戻したいときには、 CTTY conコマンドを使うことができます。 ただし、 制御権を持っている装置からこのコマンドを送信する必要があります。 ここでの例では、 COM1に接続されているシリアル回線を通して送信することになります)。

UNIXのホストからは、 PCと通信するのにtipcuのような通信プログラムを使います。 以下に例を示します。

cu -s 9600 -l /dev/ttya

ここで示されているcuオプションはそれぞれ、 使用する回線速度とシリアル・ポートを指定しています。 tipコマンドを使った場合は、 コマンドラインは以下のようなものになるでしょう。

tip -9600 /dev/ttya

ここでtipへの引数として指定した/dev/ttyaの部分には、 システムによって異なる名前を指定する必要があるかもしれません。 使用するポートを含む通信パラメータは、 "remote"記述ファイルにおいてtipコマンドへの引数と関連付けられます。 通常このファイルは、 システム・テーブル/etc/remoteです。

tip接続またはcu接続を使用して DOSの作業ディレクトリを29Kプログラムが存在するディレクトリに変更し、 PCプログラムEBMON (AMD社からボードとともに提供されるEB29K制御プログラム) を起動します。 以下に示す例によく似た、 EBMONプロンプト#で終わるEBMONの初期画面が表示されるはずです。

C:\> G:

G:\> CD \usr\joe\work29k

G:\USR\JOE\WORK29K> EBMON
Am29000 PC Coprocessor Board Monitor, version 3.0-18
Copyright 1990 Advanced Micro Devices, Inc.
Written by Gibbons and Associates, Inc.

Enter '?' or 'H' for help

PC Coprocessor Type   = EB29K
I/O Base              = 0x208
Memory Base           = 0xd0000

Data Memory Size      = 2048KB
Available I-RAM Range = 0x8000 to 0x1fffff
Available D-RAM Range = 0x80002000 to 0x801fffff

PageSize              = 0x400
Register Stack Size   = 0x800
Memory Stack Size     = 0x1800

CPU PRL               = 0x3
Am29027 Available     = No
Byte Write Available  = Yes

# ~.

続いて、 cuプログラムまたはtipプログラムを終了させます (上の例では、 EBMONプロンプトにおいて~.を入力することで終了させています)。 EBMONは、 GDBが制御権を獲得できる状態で、 実行を継続します。

この例では、 PCとUNIXシステムの両方に同一の29Kプログラムが確実に存在するようにするのに、 おそらく最も便利であろうと思われる方法を使うことを仮定しました。 それは、 PC/NFSによる接続で、 UNIXホストのファイル・システムの1つをPCのG:ドライブとする方法です。 PC/NFS、 あるいは、 2つのシステム間を接続する類似の方法がない場合、 フロッピ・ディスクによる転送など、 UNIXシステムからPCへ29Kプログラムを転送するための他の手段を準備する必要があります。 GDBは、 シリアル回線経由で29Kプログラムをダウンロードすることはしません


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EB29Kクロス・デバッグ

最後に、 UNIXシステム上の29Kプログラムが存在するディレクトリにcdコマンドによって移動して、 GDBを起動します。 引数には、 29Kプログラムの名前を指定します。

cd /usr/joe/work29k
gdb myfoo

これでtargetコマンドが使えるようになります。

target amd-eb /dev/ttya 9600 MYFOO

この例では、 ユーザ・プログラムはmyfooと呼ばれるファイルであると仮定しています。 target amd-ebに対して最後の引数として指定するファイル名は、 DOS上でのプログラム名でなければならない点に注意してください。 この例では単にMYFOOとなっていますが、 DOSのパス名を含むこともできますし、 転送メカニズムによっては、 UNIX側での名前とは似ても似つかないものになることもあるでしょう。

ここまでくると、 好きなようにブレイクポイントを設定することができます。 29Kボード上でのプログラムの実行を監視する準備が整えば、 GDBのrunコマンドを使います。

リモート・プログラムのデバッグを停止するには、 GDBのdetachコマンドを使います。

PCの制御をPCコンソールに戻すには、GDBセッションが終了した後に、 EBMONにアタッチするために、 もう一度tipまたはcuを使います。 その後、 qコマンドによってEBMONをシャットダウンし、 DOSのコマンドライン・インタープリタに制御を戻します。 CTTY conと入力して、 入力されたコマンドがメインのDOSコンソールによって受け取られるようにし、 ~.を入力してtipまたはcuを終了させます。


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リモート・ログ

target amd-ebコマンドは、 接続に関わる問題のデバッグを支援するため、 カレントな作業ディレクトリにeb.logというファイルを作成します。 eb.logは、 EBMONに送信されたコマンドのエコーを含む、 EBMONからのすべての出力を記録します。 別のウィンドウ内でこのファイルに対してtail -fを実行すると、 EBMONに関わる問題やPC側での予期せぬイベントを理解する助けになることがよくあります。


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GDBとTandem ST2000

ST2000をホスト・システムに接続する方法については、 製造元のマニュアルを参照してください。 ST2000が物理的に接続されれば、 それをデバッグ環境として確立するには、以下を実行します。

target st2000 dev speed

devは通常、 シリアル回線によってST2000と接続される/dev/ttyaのようなシリアル装置の名前です。 代わりに、 hostname:portnumberという構文を使って (例えば、端末多重化装置経由で接続されたシリアル回線への) TCP接続としてdevを指定することもできます。

このターゲットに対して、 loadコマンドとattachコマンドは定義されていません。 通常スタンドアロンで操作している場合と同様、 ST2000にユーザ・プログラムをロードしなければなりません。 GDBは (シンボルのような) デバッグ用の情報を、 ホスト・コンピュータ上にある別のデバッグ・バージョンのプログラムから読みとります。

ST2000での作業を支援するために、 以下の補助的なGDBコマンドが利用可能です。

st2000 command
STDBUGモニタにcommandを送信します。 利用できるコマンドについては、 製造元のマニュアルを参照してください。
connect
STDBUGコマンド・モニタに対して制御端末を接続します。 STDBUGの操作が終了した後、 <RET>~. (Returnキーに続いて、チルダとピリオドを入力)、 または、 <RET>~<C-d> (Returnキーに続いて、チルダとControl-Dを入力) のいずれかを入力することによってGDBコマンド・プロンプトに戻ります。


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GDBとVxWorks

開発者は、 GDBを使用することによって、 ネットワークに接続されたVxWorks端末上のタスクを、 UNIXのホストから起動してデバッグすることができます。 VxWorksシェルから起動され、 既に実行中の状態のタスクをデバッグすることもできます。 GDBは、 UNIXホスト上で実行されるコードとVxWorksターゲット上で実行されるコードの両方を使います。 gdbは、 UNIXホスト上にインストールされて実行されます (ホスト上のプログラムをデバッグするのに使うGDBと区別するために、 vxgdbという名前でインストールされることもあります)。

VxWorks-timeout args
すべてのVxWorksベースのターゲットが、 vxworks-timeoutオプションをサポートするようになりました。 このオプションはユーザによってセットされるもので、 argsは、 GDBがRPCの応答を待つ秒数を表わします。 実際のVxWorksターゲットが速度の遅いソフトウェア・シミュレータであったり、 帯域の小さいネットワーク回線を介して遠距離にある場合などに使うとよいでしょう。

VxWorksとの接続に関する以下の情報は、 このマニュアルの作成時における最新の情報です。 新しくリリースされたVxWorksでは、 手順が変更されているかもしれません。

VxWorks上でGDBを使うためには、 VxWorksカーネルを再構築して、 VxWorksライブラリrdb.aの中のリモート・デバッグ用のインターフェイス・ルーチンを組み込む必要があります。 そのためには、 VxWorksのコンフィギュレーション・ファイルconfigAll.hの中でINCLUDE_RDBを定義して、 VxWorksカーネルを再構築します。 この結果として生成されるカーネルにはrdb.aが組み込まれ、 VxWorksの起動時にソース・デバッグ用のタスクtRdbTaskが起動されます。 VxWorksの構成や再構築に関する詳細については、 製造元のマニュアルを参照してください。

VxWorksシステム・イメージへのrdb.aの組み込みが終わり、 UNIXの実行ファイル・サーチ・パスにGDBの存在するパスを加えれば、 GDBを実行するための準備は完了です。 UNIXホストからgdb (インストールの方法によってはvxgdb) を実行します。 GDBが起動されて、 以下のプロンプトを表示します。

(vxgdb)


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VxWorksへの接続

GDBのtargetコマンドによって、 ネットワーク上のVxWorksターゲットに接続します。 ttというホスト名を持つターゲットに接続するには、 以下のようにします。
(vxgdb) target vxworks tt
GDBは以下のようなメッセージを表示します。
Attaching remote machine across net...
Connected to tt.

続いてGDBは、 最後にVxWorksターゲットが起動されたときより後にロードされた オブジェクト・モジュールのシンボル・テーブルを読み込もうと試みます。 GDBは、 コマンドのサーチ・パスに含まれているディレクトリを探索することによって、 これらのファイルを見つけます (see Your program's environment)。 オブジェクト・ファイルを見つけることができない場合には、 以下のようなメッセージを表示します。

prog.o: No such file or directory.

このような場合には、 GDBのpathコマンドによって適切なディレクトリを検索パスに加えてから、 再度targetコマンドを実行します。


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VxWorksダウンロード

VxWorksターゲットに接続済みの状態で、 まだロードされていないオブジェクトをデバッグしたい場合には、 GDBのloadコマンドを使ってUNIXからVxWorksへ追加的にファイルをダウンロードすることができます。 loadコマンドの引数として指定されたオブジェクト・ファイルは、 実際には2回オープンされます。 まず、 コードをダウンロードするためにVxWorksターゲットによってオープンされ、 次にシンボル・テーブルを読み込むためにGDBによってオープンされます。 2つのシステム上のカレントな作業ディレクトリが異なると、 問題が発生します。 両方のシステムが同一のファイル・システムをNFSマウントしているのであれば、 絶対パスを使うことで問題を回避することができます。 そうでない場合は、 両方のシステム上で、 オブジェクト・ファイルが存在するディレクトリを作業ディレクトリにして、 パスを一切使わずにファイル名だけでファイルを参照するのが、 最も簡単でしょう。 例えば、 プログラムprog.oが、 VxWorksではvxpath/vw/demo/rdbに存在し、 ホストではhostpath/vw/demo/rdbに存在するとしましょう。 このプログラムをロードするには、 VxWorks上で以下のように実行します。

-> cd "vxpath/vw/demo/rdb"
GDB上では、 以下のように実行します。
(vxgdb) cd hostpath/vw/demo/rdb
(vxgdb) load prog.o
GDBは次のような応答を表示します。
Reading symbol data from wherever/vw/demo/rdb/prog.o... done.

ソース・ファイルを編集して再コンパイルした後に、 loadコマンドを使ってオブジェクト・モジュールを再ロードすることもできます。 ただし、 これを行うと、 GDBはその時点で定義されているすべてのブレイクポイント、 自動表示設定、 コンビニエンス変数を削除し、 値ヒストリを初期化してしまいますので、 注意してください (これは、 ターゲット・システムのシンボル・テーブルを参照するデバッガのデータ構造の完全性を保つために必要です)。


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タスクの実行

以下のようにattachコマンドを使うことで、 既存のタスクにアタッチすることも可能です。

(vxgdb) attach task

taskは、 VxWorksの16進数のタスクIDです。 アタッチするときに、 タスクは実行中であってもサスペンドされていても構いません。 実行中であったタスクは、 アタッチされたときにサスペンドされます。


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GDB と Sparclet

開発者は、 GDBを使うことによって、 Sparcletターゲット上で実行中のタスクをUnixホストからデバッグできるようになります。 GDBは、 Unixホスト上で実行されるコードとSparcletターゲット上で実行されるコードの両方を使用します。 gdbは、 Unixホスト上にインストールされて実行されます。

timeout args
GDBはオプションremotetimeoutをサポートするようになりました。 このオプションはユーザによって設定されるもので、 argsはGDBが応答を待つ秒数を表わします。

デバッグ用にコンパイルする際には、 デバッグ情報を得るために"-g"オプションを、 また、 ターゲット上でロードしたい位置にプログラムを再配置するために"-Ttext"オプションを指定します。 各セクションのサイズを小さくするために、 "-n"または"-N"オプションを加えるのも良いでしょう。

sparclet-aout-gcc prog.c -Ttext 0x12010000 -g -o prog -N

アドレスが意図したものと一致しているかどうかを検証するのに、 objdumpを使うことができます。

sparclet-aout-objdump --headers --syms prog
GDBが見つかるようにUnixの実行サーチ・パスを設定すれば、 GDBを実行するための準備は完了です。 Unixホストからgdb (インストールの方法によっては、 sparclet-aout-gdb) を実行します。 GDBが起動されて、 以下のプロンプトを表示します。
(gdbslet)


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デバッグするファイルの選択

GDBのfileコマンドによって、 デバッグするプログラムを選択することができます。
(gdbslet) file prog

このコマンドを実行すると、 GDBはprogのシンボル・テーブルを読み込もうとします。 GDBは、 コマンド・サーチ・パスに含まれるディレクトリを探索することによって、 そのファイルを見つけます。 そのファイルがデバッグ情報付き (オプション"-g") でコンパイルされた場合は、 ソース・ファイルも探します。 GDBは、 ディレクトリ・サーチ・パス (see Your program's environment) に含まれるディレクトリを探索することによって、 そのソース・ファイルを見つけます。 ファイルが見つからない場合には、 次のようなメッセージを表示します。

prog: No such file or directory.

このメッセージが表示された場合には、 GDBのpathコマンドとdirコマンドを使って適切なディレクトリをサーチ・パスに加えてから、 targetコマンドを再実行します。


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Sparcletへの接続

GDBのtargetコマンドによってSparcletターゲットに接続することができます。 シリアル・ポート"ttya"でターゲットに接続するには、 以下のように入力します。
(gdbslet) target sparclet /dev/ttya
Remote target sparclet connected to /dev/ttya
main () at ../prog.c:3
GDBは以下のようなメッセージを表示します。
Connected to ttya.


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Sparcletダウンロード

Sparcletターゲットへの接続が完了すると、 GDBのloadコマンドを使って、 ホストからターゲットへファイルをダウンロードすることができます。 ファイル名とロード・オフセットを、 loadコマンドへの引数として渡さなければなりません。 ファイル形式はaoutですので、 プログラムはその開始アドレスにロードされなければなりません。 開始アドレスの値を知るにはobjdumpを使うことができます。 ロード・オフセットとは、 ファイルの個々のセクションのVMA(仮想メモリ・アドレス)に加算されるオフセットのことです。 例えば、 プログラムprogが、 textセクションのアドレス0x12010000、 dataセクションのアドレス0x12010160、 bssセクションのアドレス0x12010170にリンクされているとすると、 GDBでは以下のように入力します。

(gdbslet) load prog 0x12010000
Loading section .text, size 0xdb0 vma 0x12010000

プログラムがリンクされたアドレスとは異なるアドレスにコードがロードされた場合、 どこにシンボル・テーブルをマップするかをGDBに通知するために、 sectionコマンドとadd-symbol-fileコマンドを使う必要があるかもしれません。


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実行とデバッグ

以上により、 GDBの実行制御コマンドであるbsteprunなどを使ってタスクのデバッグを開始することができます。 コマンドの一覧については、 GDBのマニュアルを参照してください。

(gdbslet) b main
Breakpoint 1 at 0x12010000: file prog.c, line 3.
(gdbslet) run
Starting program: prog
Breakpoint 1, main (argc=1, argv=0xeffff21c) at prog.c:3
3        char *symarg = 0;
(gdbslet) step
4        char *execarg = "hello!";
(gdbslet)


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GDBと日立のマイクロ・プロセッサ

日立のSH、 H8/300、 H8/500と通信するためには、 GDBは以下の情報を知っている必要があります。

  1. ユーザは、 日立マイクロ・プロセッサへのリモート・デバッグ用インターフェイスであるtarget hmsと、 日立SHや日立300Hのインサーキット・エミュレータであるtargete7000のどちらを使用したいかということ (GDBが日立SH、 H8/300、 H8/500用に特に構成されている場合には、 target hmsがデフォルトです)。
  2. ホストと日立ボードを接続しているシリアル装置 (デフォルトは、 ホスト上で利用できる最初のシリアル装置です)
  3. シリアル装置で使用する速度


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日立ボードへの接続

シリアル装置を明示的に指定する必要があれば、 そのための専用コマンドである、 gdbdevice portコマンドを使用します。 portのデフォルトは、 ホスト上で最初に利用可能なポートです。 これはUNIXホスト上でのみ必要であり、 そこでは典型的には/dev/ttyaという名前になります。

gdbには、 通信速度を設定するための専用コマンドspeed bpsがあります。 このコマンドもまた UNIXホストからのみ使用されるものです。 DOSホストでは通常どおり、 GDBからではなくDOSのmodeコマンドによって回線速度を設定します (例えば、 9600 bpsの接続を確立するにはmode com2:9600,n,8,1,pのように実行します)。

deviceコマンドとspeedコマンドは、 日立マイクロ・プロセッサ・プログラムのデバッグにUNIXホストを使う場合のみ利用可能です。 DOSホストを使う場合、 GDBは、 PCのシリアル・ポート経由で開発ボードと通信するのに、 asynctsrと呼ばれる補助的な常駐プログラムに依存します。 DOS側でシリアル・ポートの設定をする場合にも、 DOSのmodeコマンドを使わなければなりません。


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E7000インサーキット・エミュレータの使用

E7000インサーキット・エミュレータを使って、 日立SHまたはH8/300H用のコードを開発することができます。 target e7000コマンドを以下のいずれかの形式で使って、 GDBをE7000に接続します。

target e7000 port speed
E7000がシリアル・ポートに接続されている場合は、 この形式を使ってください。 引数portが、 使用するシリアル・ポートを指定します (例えば、 com2)。 3番目の引数は、 秒あたりのビット数による回線速度です (例えば、 9600)。
target e7000 hostname
E7000がTCP/IPネットワーク上のホストとしてインストールされている場合、 ホスト名だけを指定することもできます。 GDBは接続にtelnetを使います。


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日立マイクロ・プロセッサ用の特別なGDBコマンド

いくつかのGDBコマンドは、 H8/300またはH8/500用に構成された場合にのみ利用可能です。

set machine h8300
set machine h8300h
set machineコマンドによって、 2種類のH8/300アーキテクチャのどちらか一方にあわせてGDBを調整します。 show machineコマンドによって、 現在有効なアーキテクチャを調べることができます。
set memory mod
show memory
set memoryコマンドによって、 使用中のH8/500メモリ・モデル (mod) を指定します。 show memoryコマンドによって、 現在有効なメモリ・モデルを調べます。 modに指定可能な値は、 smallbigmediumcompactのいずれかです。


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GDBとリモートMIPSボード

GDBは、 MIPSのリモート・デバッグ用のプロトコルを使って、 シリアル回線に接続されたMIPSボードと通信することができます。 これは、 GDBを--target=mips-idt-ecoffによって構成することによって、 利用することができます。

ターゲット・ボードとの接続を指定するには、 以下のGDBコマンドを使用します。

target mips port
ボード上でプログラムを実行するには、 引数にユーザ・プログラムの名前を指定してgdbを起動します。 ボードに接続するには、 target mips portコマンドを使用します。 portは、 ボードに接続されているシリアル・ポートの名前です。 プログラムがまだボードにダウンロードされていないのであれば、 loadコマンドを使ってダウンロードすることができます。 その後、 通常利用できるすべてのGDBコマンドを使うことができます。

例えば以下の手順では、 デバッガを使うことによって、 シリアル・ポートを経由してターゲット・ボードに接続した後に、 progと呼ばれるプログラムをロードして実行しています。

host$ gdb prog
GDB is free software and ...
(gdb) target mips /dev/ttyb
(gdb) load prog
(gdb) run

target mips hostname:portnumber
GDBのホスト構成によっては、 hostname:portnumberという構文を使うことで、 シリアル・ポートの代わりに (例えば、 端末多重化装置によって管理されているシリアル回線への) TCP接続を指定することができます。
target pmon port

target ddb port

target lsi port
GDBは、 MIPSターゲットに対して、 以下の特別なコマンドもサポートしています。
set processor args
show processor
プロセッサの種類に固有のレジスタにアクセスしたい場合には、 set processorコマンドを使ってMIPSプロセッサの種類を設定します。 例えば、 set processor r3041は、 3041チップで有効なCPOレジスタを使うよう、 GDBに対して通知します。 GDBが使っているMIPSプロセッサの種類を知るには、 show processorコマンドを使います。 GDBが使っているレジスタを知るには、 info regコマンドを使います。
set mipsfpu double
set mipsfpu single
set mipsfpu none
show mipsfpu
MIPS浮動小数点コプロセッサをサポートしないターゲット・ボードを使う場合は、 set mipsfpu noneコマンドを使う必要があります (このようなことが必要な場合には、 初期化ファイルの中にそのコマンドを入れてしまってもよいでしょう)。 これによって、 浮動小数値を返す関数の戻り値を見つける方法をGDBに知らせます。 またこれにより、 ボード上で関数を呼び出すときに、 GDBは浮動小数点レジスタの内容を退避する必要がなくなります。 R4650プロセッサ上にあるような、 単精度浮動小数だけをサポートする浮動小数点コプロセッサを使っている場合には、 set mipsfpu singleコマンドを使います。 デフォルトの倍精度浮動小数点コプロセッサは、 set mipsfpu doubleによって選択することができます。

以前のバージョンでは、 有効な選択肢は、 倍精度浮動小数コプロセッサを使う設定と浮動小数点コプロセッサを使わない設定だけでした。 したがって、 set mipsfpu onで倍精度浮動小数コプロセッサが選択され、 set mipsfpu offで浮動小数点コプロセッサを使わないという設定が選択されていました。

他の場合と同様、 mipsfpu変数に関する設定は、 show mipsfpuによって問い合わせることができます。

set remotedebug n
show remotedebug
remotedebug変数を設定することによって、 ボードとの通信に関するいくつかのデバッグ用の情報を見ることができます。 set remotedebug 1によって値1を設定すると、 すべてのパケットが表示されます。 値を2に設定すると、 すべての文字が表示されます。 show remotedebugコマンドによって、 いつでも現在の設定値を調べることができます。
set timeout seconds
set retransmit-timeout seconds
show timeout
show retransmit-timeout
MIPSリモート・プロトコルにおけるパケット待ちの状態でのタイムアウト時間を、 set timeout secondsコマンドで制御することができます。 デフォルトは5秒です。 同様に、 パケットに対する確認 (ACK) を待っている状態でのタイムアウト時間を、 set retransmit-timeout secondsコマンドで制御することができます。 デフォルトは3秒です。 それぞれの値をshow timeoutshow retransmit-timeoutで調べることができます (どちらのコマンドも、 GDBが--target=mips-idt-ecoff用に構成されている場合のみ使用可能です)。

set timeoutで設定されたタイムアウト時間は、 ユーザ・プログラムが停止するのをGDBが待っている間は適用されません。 この場合には、 GDBは永遠に待ち続けます。 これは、 停止するまでにプログラムがどの程度長く実行を継続するのかを知る方法がないからです。


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シミュレートされたCPUターゲット

構成によっては、 ユーザ・プログラムをデバッグする際にハードウェアCPUの代わりに使うことのできるCPUシミュレータが、 GDBの中に組み込まれています。 現在のところ、 ARM、D10V、D30V、FR30、H8/300、H8/500、 i960、M32R、MIPS、MN10200、MN10300、 PowerPC、SH、Sparc、V850、W65、Z8000 用のシミュレータが利用できます。

Z8000系については、 target simによって、 Z8002 (Z8000アーキテクチャの、 セグメントを持たない変種) またはZ8001 (セグメントを持つ変種) をシミュレートします。 シミュレータは、 オブジェクト・コードを調べることで、 どちらのアーキテクチャが適切であるかを認識します。

target sim args
シミュレートされたCPU上でプログラムをデバッグします。 シミュレータがセットアップ・オプションをサポートしている場合は、 それをargsの部分に指定します。

このターゲットを指定した後には、 ホスト・コンピュータ上のプログラムをデバッグするのと同様の方法で、 シミュレートされたCPU用のプログラムをデバッグすることができます。 新しいプログラムのイメージをロードするには fileコマンドを使い、 ユーザ・プログラムを実行するにはrunコマンドを使う、 という具合です。

Z8000シミュレータでは、 通常のマシン・レジスタ (info reg を参照) がすべて利用可能であるだけでなく、 特別な名前を持つレジスタとして、 3つの追加情報が提供されています。

cycles
シミュレータ内のクロック・ティックをカウントします。
insts
シミュレータ内で実行された命令をカウントします。
time
1/60秒を単位とする実行時間を示します。

これらの変数は、 GDBの式の中で普通に参照することができます。 例えば、 b fputc if $cycles>5000は、 シミュレートされたクロック・ティックが最低5,000回発生した後に停止するような、 条件付きブレイクポイントを設定します。


Node:Controlling GDB

GDBの制御

setコマンドによってGDBの操作方法を変更することができます。 GDBによるデータの表示方法を変更するコマンドについては、 see Print settings。 この章では、 その他の設定について説明します。


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プロンプト

GDBは、 プロンプトと呼ばれる文字列を表示することで、 コマンドを受け付ける用意ができたことを示します。 通常、 この文字列は(gdb)です。 set promptコマンドによって、 プロンプトの文字列を変更することができます。 例えば、 GDBを使ってGDB自体をデバッグしているときには、 どちらか一方のGDBセッションのプロンプトを変更して、 どちらのGDBとやりとりしているのか区別できるようにすると便利です。

注: 以前のバージョンとは異なり、 現在のset promptは、 ユーザが設定したプロンプトの後ろに空白を追加しません。 ユーザは、 空白で終わるプロンプト、 空白で終わらないプロンプトのいずれでも設定することができます。

set prompt newprompt
今後はnewpromptをプロンプトとして使用するよう、 GDBに指示します
show prompt
Gdb's prompt is: your-prompt という形式の1行を表示します


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コマンド編集

GDBは入力コマンドをreadlineインターフェイスによって読み込みます。 このGNUライブラリを使うことで、 ユーザに対してコマンドライン・インターフェイスを提供するプログラムは、 統一された振る舞いをするようになります。 これを使うことの利点としては、 GNU Emacsスタイルまたはviスタイルによるコマンドのインライン編集、 cshスタイルのヒストリ代替、 複数のデバッグ・セッションにまたがるコマンド・ヒストリの保存と呼び出しができるようになることが挙げられます。

setコマンドによって、 GDBにおけるコマンドライン編集の振る舞いを制御することができます。

set editing
set editing on
コマンドライン編集を使用可能にします (コマンドライン編集は、 デフォルトの状態で使用可能です)。
set editing off
コマンドライン編集を使用不可にします。
show editing
コマンドライン編集が使用可能かどうかを示します。


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コマンド・ヒストリ

デバッグ・セッション中にユーザが入力したコマンドをGDBに記録させることができるため、 ユーザは実際に何が実行されたかを確実に知ることができます。 以下のコマンドを使って、 GDBのコマンド・ヒストリ機能を管理します。

set history filename fname
GDBコマンド・ヒストリ・ファイルの名前をfnameに設定します。 GDBは、 最初にこのファイルからコマンド・ヒストリ・リストの初期値を読み込み、 終了時には、 このファイルにセッション中のコマンド・ヒストリを書き込みます。 コマンド・ヒストリ・リストには、 ヒストリ展開機能、 あるいは、 後に列挙するヒストリ・コマンド編集文字によってアクセスすることができます。 このファイル名は、 デフォルトでは環境変数GDBHISTFILEの値になりますが、 この変数が設定されていない場合には./.gdb_historyになります。
set history save
set history save on
コマンド・ヒストリをファイルの中に記録します。 ファイルの名前はset history filenameコマンドで指定可能です。 デフォルトでは、 このオプションは使用不可の状態になっています。
set history save off
コマンド・ヒストリをファイルの中に記録するのを停止します。
set history size size
GDBがヒストリ・リストの中に記録するコマンドの数を設定します。 デフォルトでは、 この値は環境変数HISTSIZEの値に設定されますが、 この変数が設定されていない場合は256になります。

ヒストリ展開機能により、 文字!には特別な意味が割り当てられます。

!は、 C言語における論理NOTの演算子でもあるので、 ヒストリ展開機能はデフォルトではoffになっています。 set history expansion onコマンドによってヒストリ展開を利用できるようにした場合には、 (!を式の中で論理NOTとして使うのであれば) !の後ろに空白かタブを入れることによって、 それが展開されないようにする必要のある場合があります。 ヒストリ展開が有効になっている場合でも、 readlineのヒストリ機能は、 !=!(という文字列を置き換えようとはしません。

ヒストリ展開を制御するコマンドには、 以下のようなものがあります。

set history expansion on
set history expansion
ヒストリ展開を使用可能にします。 ヒストリ展開はデフォルトでは使用不可です。
set history expansion off
ヒストリ展開を使用不可にします。

readlineのコードには、 ヒストリ編集機能やヒストリ展開機能に関する、 より完全なドキュメントが付属しています。 GNU Emacsやviのことをよく知らない人は、 このドキュメントを読むとよいでしょう。

show history
show history filename
show history save
show history size
show history expansion
これらのコマンドは、 GDBのヒストリ・パラメータの状態を表示します。 単にshow historyを実行すると、 4つのパラメータの状態がすべて表示されます。
show commands
コマンド・ヒストリ中の最後の10個のコマンドを表示します。
show commands n
コマンド番号nのコマンドを中心に、 その前後の10個のコマンドを表示します。
show commands +
最後に表示されたコマンドに続く10個のコマンドを表示します。


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画面サイズ

GDBのコマンドは、 大量の情報を画面上に出力することがあります。 大量の情報をすべて読むのを支援するために、 GDBは1ページ分の情報を出力するたびに、 出力を停止してユーザからの入力を求めます。 出力を継続したい場合は <RET>キーを押し、 残りの出力を破棄したい場合はqを入力します。 また、 画面幅の設定によって、 どこで行を折り返すかが決まります。 GDBは、 単純に次の行に折り返すのではなく、 出力の内容に応じて読みやすいところで折り返すよう試みます。

通常GDBは、 termcapデータベースとTERM環境変数の値、 さらに、 stty rowsstty colsの設定から、 画面の大きさを知っています。 この結果が正しくない場合、 set heightコマンドとset widthコマンドで画面の大きさの設定を変更することができます。

set height lpp
show height
set width cpl
show width
これらのsetコマンドは、 画面の高さをlpp行に、 幅をcpl桁に指定します。 関連するshowコマンドが、 現在の設定を表示します。

ゼロ行の高さを指定すると、 GDBは出力がどんなに長くても、 出力途中で一時停止することをしません。 これは、 出力先がファイルやエディタのバッファである場合に便利です。

同様に、 set width 0を指定することによって、 GDBに行の折り返しを行わせないようにすることもできます。


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数値

GDBに対して8進、 10進、 16進の数値を慣例にしたがって入力することはいつでも可能です。 8進数は0で始まります。 10進数は.で終わります。 16進数は0xで始まります。 このどれにも該当しないものは、 デフォルトで10進数として入力されます。 同様に、 数値を表示するときも、 特定のフォーマットが指定されていなければ、 デフォルトで10進数として表示されます。 set radixコマンドによって、 入力、 出力の両方のデフォルトを変更することができます。
set input-radix base
数値入力のデフォルトの基数を設定します。 サポートされる選択肢は10進数の8、 10、 16です。 base自身はあいまいにならないように指定するか、 あるいは、 現在のデフォルトの基数を使用して指定します。 例えば、
set radix 012
set radix 10.
set radix 0xa

は基数を10進数に設定します。 一方、 set radix 10は、 現在の基数を (それがどれであれ) 変更しません。

set output-radix base
数値の表示に使うデフォルトの基数を設定します。 サポートされるbaseの選択肢は 10進数の8、 10、 16です。 base自身はあいまいにならないように指定するか、 あるいは、 現在のデフォルトの基数を使用して指定します。
show input-radix
数値の入力に現在使われているデフォルトの基数を表示します。
show output-radix
数値の表示に現在使われているデフォルトの基数を表示します。


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オプションの警告およびメッセージ

デフォルトでは、 GDBは内部の動作に関する情報を表示しません。 性能の遅いマシンで実行している場合には、 set verboseコマンドを使うとよいでしょう。 これによって、 GDBは、 長い内部処理を実行するときにメッセージを出力することで、 クラッシュと勘違いされないようにします。

現在のところ、 set verboseコマンドによって制御されるメッセージは、 ソース・ファイルのシンボル・テーブルを読み込み中であることを知らせるメッセージです。 Commands to specify filessymbol-fileを参照してください。

set verbose on
GDBが特定の情報メッセージを出力するようにします。
set verbose off
GDBが特定の情報メッセージを出力しないようにします。
show verbose
set verboseがon、 offのどちらの状態であるかを表示します。

デフォルトでは、 オブジェクト・ファイルのシンボル・テーブルに問題を検出しても、 GDBはメッセージを出力しません。 しかし、 コンパイラをデバッグしているようなときには、 このような情報があると便利かもしれません (see Errors reading symbol files)。

set complaints limit
異常な型のシンボルを検出するたびにGDBが出力するメッセージの総数をlimit個とします。 limit個のメッセージを表示すると、 その後は問題を検出してもメッセージを表示しないようになります。 メッセージを1つも出力させないようにするには、 limitにゼロを指定してください。 メッセージの出力が抑止されないようにするには、 limitに大きな値を設定してください。
show complaints
GDBが何個までシンボル異常に関するメッセージを出力できるよう設定されているかを表示します。

デフォルトでは、 GDBは慎重に動作し、 コマンドを本当に実行するのか確認するために、 ときには馬鹿げているとさえ思えるような質問を多く尋ねてきます。 例えば、 既に実行中のプログラムを実行しようとすると、 次のように質問してきます。

(gdb) run
The program being debugged has been started already.
Start it from the beginning? (y or n)

ユーザが、 実行したコマンドの結果を何がなんでも見てみたいのであれば、 この「機能」を抑止することができます。

set confirm off
確認要求を行わないようにします。
set confirm on
確認要求を行うようにします (デフォルト)。
show confirm
確認要求の現在の設定を表示します。


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一連のコマンドのグループ化

ブレイクポイント・コマンド (see Breakpoint command lists) とは別に、 一連のコマンドを一括して実行するために保存する2つの方法を、 GDBは提供しています。 ユーザ定義コマンドとコマンド・ファイルがそれです。


Node:Define, Next:, Previous:Sequences, Up:Sequences

ユーザ定義コマンド

ユーザ定義コマンドとは、 一連のGDBコマンドに単一コマンドとしての名前を新たに割り当てたものです。 これは、 defineコマンドによって行われます。 ユーザ・コマンドは、 空白で区切られた引数を最高で10個まで受け取ることができます。 引数は、 ユーザ・コマンドの中で、 $arg0...$arg9としてアクセスすることができます。 簡単な例を以下に示します。

define adder
  print $arg0 + $arg1 + $arg2

このコマンドを実行するには、以下のようにします。

adder 1 2 3

上の例では、 adderというコマンドを定義しています。 このコマンドは、 3つの引数の合計を表示します。 引数は文字列で代用されますので、 変数を参照することもできますし、 複雑な式を使うこともできます。 また、 下位関数の呼び出しを行うこともできます。

define commandname
commandnameという名前のコマンドを定義します。 同じ名前のコマンドが既に存在する場合は、 再定義の確認を求められます。

コマンドの定義は、 defineコマンドに続いて与えられる、 他のGDBコマンド行から構成されます。 これらのコマンドの末尾は、 endを含む行によって示されます。

if
引数として、 評価の対象となる式を1つだけ取ります。 その後に一連のコマンドが続きますが、 これらのコマンドは、 式の評価結果が真 (ゼロ以外の値) である場合にだけ実行されます。 さらに、 else行が続くことがあり、 この場合は、 else行の後に、 式の評価結果が偽であった場合にだけ実行される一連のコマンドが続きます。 末尾は、 endを含む行によって示されます。
while
構文はifと似ています。 引数として、 評価の対象となる式を1つだけ取ります。 その後には、 実行されるべきコマンドが1行に1つずつ続き、 最後にendがなければなりません。 コマンドは、 式の評価結果が真である限り、 繰り返し実行されます。
document commandname
ユーザ定義コマンドcommandnameのドキュメントを記述します。 このドキュメントはhelpコマンドによってアクセスできます。 コマンドcommandnameは既に定義済みでなければなりません。 このコマンドは、 defineコマンドが一連のコマンド定義を読み込むのと同様に、 endで終わる一連のドキュメントを読み込みます。 documentコマンドの実行が完了すると、 コマンドcommandnameに対してhelpコマンドを実行すると、 ユーザの記述したドキュメントが表示されます。

documentコマンドを再度実行することによって、 コマンドのドキュメントを変更することができます。 defineコマンドによってコマンドを再定義しても、 ドキュメントは変更されません。

help user-defined
すべてのユーザ定義コマンドを一覧表示します。 個々のコマンドにドキュメントがあれば、 その1行目が表示されます。
show user
show user commandname
commandnameで指定されるコマンドを定義するのに使われたGDBコマンドを表示します (ドキュメントは表示されません)。 commandnameを指定しないと、 すべてのユーザ定義コマンドの定義が表示されます。

ユーザ定義コマンドが実行されるときに、 定義内のコマンドは表示されません。 定義内のコマンドがどれか1つでもエラーになると、 ユーザ定義コマンドの実行が停止されます。

対話的に使われている場合には確認を求めてくるようなコマンドも、 ユーザ定義コマンドの内部で使われている場合には確認を求めることなく処理を継続します。 通常は実行中の処理に関してメッセージを表示するGDBコマンドの多くが、 ユーザ定義コマンドの中から呼び出されている場合にはメッセージを表示しません。


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ユーザ定義コマンド・フック

特別な種類のユーザ定義コマンドである、 フックを定義することができます。 hook-fooというユーザ定義コマンドが存在すると、 fooというコマンドを実行するときにはいつも、 fooコマンドが実行される前に (引数のない) hook-fooが実行されます。

また、 仮想コマンドであるstopが存在します。 (hook-stopを) 定義すると、 ユーザ・プログラムの実行が停止するたびに、 その定義内のコマンドが実行されます。 実行タイミングは、 ブレイクポイント・コマンドの実行、 自動表示対象の表示、 および、 スタック・フレームの表示の直前です。

例えば、 シングル・ステップ実行をしている際にはSIGALRMシグナルを無視し、 通常の実行時には通常どおり処理したい場合には、 以下のように定義します。

define hook-stop
handle SIGALRM nopass
end

define hook-run
handle SIGALRM pass
end

define hook-continue
handle SIGLARM pass
end
GDBのコマンドのうち、 その名前が1つの単語から成るものには、 フックを定義することができます。 ただし、 コマンド・エイリアスにフックを定義することはできません。 フックは、 コマンドの基本名に対して定義しなければなりません。 例えば、 btではなくbacktraceを使います。 フックの実行中にエラーが発生すると、 GDBコマンドは停止します。 (ユーザが実際に入力したコマンドが実行する機会を与えられる前に) GDBはプロンプトを表示します。

既知のコマンドのいずれにも対応しないフックを定義しようとすると、 defineコマンドは警告メッセージを表示します。


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コマンド・ファイル

GDBのコマンド・ファイルとは、 各行がGDBコマンドとなっているファイルのことです。 (行の先頭が#の) コメントも含めることができます。 コマンド・ファイル内の空行は何も実行しません。 それは、 端末上での実行の場合とは異なり、 最後に実行されたコマンドの繰り返しを意味しません。 GDBを起動すると、 自動的に初期化ファイルからコマンドを読み込んで実行します。 これは、 Unix上では.gdbinitという名前のファイルであり、 DOS/Windows上ではgdb.iniという名前のファイルです。 GDBは、 ユーザのホーム・ディレクトリに初期化ファイルがあればまずそれを読み込み、 続いてコマンンドライン・オプションとオペランドを処理した後、 カレントな作業ディレクトリに初期化ファイルがあればそれを読み込みます。 このように動くのは、 ユーザのホーム・ディレクトリに初期化ファイルを置くことで、 コマンドライン上のオプションやオペランドの処理に影響を与える (set complaintsのような) オプションを設定することができるようにするためです。 -nxオプションを使用すると、 初期化ファイルは実行されません。 see Choosing modes。 GDBのいくつかの構成では、 初期化ファイルは異なる名前で知られています (このような環境では、 特別な形式のGDBが他の形式のGDBと共存する必要があり、 そのために特別なバージョンのGDBの初期化ファイルには異なる名前が付けられます)。 特別な名前の初期化ファイルを持つ環境には、 以下のようなものがあります。

また、 sourceコマンドによって、 コマンド・ファイルの実行を要求することもできます。

source filename
コマンド・ファイルfilenameを実行します。

コマンド・ファイルの各行は順番に実行されます。 コマンドの実行時に、 そのコマンドは表示されません。 どれか1つでもコマンドがエラーになると、 コマンド・ファイルの実行は停止されます。

対話的に使われている場合には確認を求めてくるようなコマンドも、 コマンド・ファイル内で使われている場合は確認を求めることなく処理を継続します。 通常は実行中の処理についてメッセージを表示するGDBコマンドの多くが、 コマンド・ファイルの中から呼び出されている場合にはメッセージを表示しません。


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制御された出力を得るためのコマンド

コマンド・ファイルやユーザ定義コマンドの実行中には、 通常のGDBの出力は抑止されます。 唯一出力されるのは、 定義内のコマンドが明示的に表示するメッセージだけです。 ここでは、 ユーザが希望するとおりの出力を生成するのに役に立つ、 3つのコマンドについて説明します。

echo text
textを表示します。 通常は表示されない文字も、 Cのエスケープ・シーケンスを使うことでtextの中に含めることができます。 例えば、 改行コードを表示するには\nを使います。 明示的に指定しない限り、 改行コードは表示されません。 標準的なCのエスケープ・シーケンスに加えて、 バックスラッシュの後ろに空白を置くことで、 空白が表わされます。 これは、 先頭や末尾に空白のある文字列を表示するのに便利です。 というのは、 こうしないと、 引数の先頭や末尾の空白は削除されるからです。  and foo = を表示するには、 echo \ and foo = \ を実行してください。

Cと同様、 textの末尾にバックスラッシュを置くことで、 コマンドを次の行以降に継続することができます。 例えば、

echo This is some text\n\
which is continued\n\
onto several lines.\n

echo This is some text\n
echo which is continued\n
echo onto several lines.\n

と同じ出力をもたらします。

output expression
expressionの値を表示し、 それ以外には何も表示しません。 改行コードも、 $nn = も表示されません。 expressionの値は値ヒストリには入りません。 式の詳細については、 See Expressions
output/fmt expression
expressionの値を、 fmtで指定されるフォーマットで表示します。 printコマンドと同じフォーマットを指定することができます。 詳細については、 See Output formats
printf string, expressions...
stringで指定された文字列にしたがってexpressionsの値を表示します。 複数のexpressionsはカンマで区切られ、 数値かポインタのいずれかを指定できます。 これらの値は、 ユーザ・プログラムからCのサブルーチン
printf (string, expressions...);

を実行した場合と同様に、 stringの指定にしたがって表示されます。

例えば、 次のようにして2つの値を16進数で表示することができます。

printf "foo, bar-foo = 0x%x, 0x%x\n", foo, bar-foo

フォーマットを指定する文字列の中で使えるバックスラッシュ・エスケープ・シーケンスは、 バックスラッシュとそれに続く単一文字から構成される簡単なものだけです。


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GNU Emacsの中でのGDBの使用

GDBでデバッグ中のプログラムのソース・ファイルをGNU Emacsを使って参照(および編集)するための、 特別なインターフェイスが提供されています。

このインターフェイスを使うには、 Emacsの中でM-x gdbコマンドを使います。 デバッグしたい実行ファイルを引数として指定してください。 このコマンドは、 GDBをEmacsのサブプロセスとして起動し、 新しく作成したEmacsバッファを通じて入出力を行います。

Emacsの中でのGDBの使い方は、 通常のGDBの使い方とほぼ同様ですが、 2つ相違点があります。

これは、 GDBコマンドとその出力、 および、 デバッグ対象のユーザ・プログラムによる入出力の両方に適用されます。

以前に実行したコマンド・テキストをコピーして再入力することができるので便利です。 出力された部分に関しても同様のことができます。

EmacsのShellモードで利用可能なすべての機能を、 ユーザ・プログラムとのやりとりで使うことができます。 特に、 通常どおりにシグナルを送信することができます。 例えば、 C-c C-cで割り込みシグナルを、 C-c C-zでストップ・シグナルを発生させることができます。

GDBがスタック・フレームを表示するときにはいつでも、 Emacsがそのフレームのソース・ファイルを自動的に見つけて、 カレント行の左側の余白に矢印 (=>) を表示します。 Emacsはソース・コードを別バッファに表示し、 スクリーンを2つに分けて、 GDBセッションとソースをともに表示します。 GDBのlistコマンドやsearchコマンドを明示的に使えば、 通常どおりの出力を生成することもできますが、 これらをEmacsから使う理由はおそらくないでしょう。
注意: ユーザ・プログラムの存在するディレクトリがユーザのカレント・ディレクトリでない場合、 ソース・ファイルの存在場所についてEmacsは簡単に混乱に陥ります。 このような場合、 ソースを表示するための追加のディスプレイ・バッファは表示されません。 GDBは、 ユーザの環境変数PATHのリストの中にあるディレクトリを探索してプログラムを見つけ出しますので、 GDBの入出力セッションは通常どおり進行します。 しかしEmacsは、 このような状況においてソース・ファイルを見つけ出すのに十分な情報をGDBから受け取っていません。 この問題を回避するには、 ユーザ・プログラムの存在するディレクトリからGDBモードを開始するか、 M-x gdbの引数の入力を求められたときに、 絶対パスでファイル名を指定します。

Emacsの既存のGDBバッファから、 デバッグ対象をどこかほかの場所にあるプログラムに変更する目的でGDBのfileコマンドを使うと、 同様の混乱の発生することがあります。

デフォルトでは、 M-x gdbgdbという名前のプログラムを呼び出します。 別の名前でGDBを呼び出す必要がある場合 (例えば、 異なる構成のGDBを別の名前で持っているような場合) は、 Emacsのgdb-command-nameという変数を設定します。 例えば

(setq gdb-command-name "mygdb")

(をESC ESCに続けて入力するか、 あるいは、 *scratch*バッファまたは.emacsファイルに入力することで) Emacsはgdbの代わりに「mygdb」という名前のプログラムを呼び出します。 GDBのI/Oバッファでは、 標準的なShellモードのコマンドに加えて、 以下のような特別なEmacsコマンドを使うことができます。

C-h m
EmacsのGDBモードの機能に関する説明を表示します。
M-s
GDBのstepコマンドのように、 ソース行を1行実行します。 さらに、 カレントなファイルとその中における位置を示すために、 表示ウィンドウを更新します。
M-n
GDBのnextコマンドのように、 関数呼び出しをすべてスキップして、 現在の関数内の次のソース行まで実行を進めます。 さらに、 カレントなファイルとその中における位置を示すために、 表示ウィンドウを更新します。
M-i
GDBのstepiコマンドのように、 1命令を実行します。 必要に応じて表示ウィンドウを更新します。
M-x gdb-nexti
GDBのnextiコマンドを使って、 次の命令まで実行します。 必要に応じて表示ウィンドウを更新します。
C-c C-f
GDBのfinishコマンドのように、 選択されたスタック・フレームを終了するまで実行を継続します。
M-c
GDBのcontinueコマンドのように、 ユーザ・プログラムの実行を継続します。

注意: Emacs v19では、 このコマンドはC-c C-pです。

M-u
GDBのupコマンドのように、 数値引数によって示される数だけ上位のフレームに移動します (see Arguments 4)。

注意: Emacs v19では、 このコマンドはC-c C-uです。

M-d
GDBのdownコマンドのように、 数値引数によって示される数だけ下位のフレームに移動します。

注意: Emacs v19では、 このコマンドはC-c C-dです。

C-x &
カーソルの位置にある数値を読み取り、 GDBのI/Oバッファの末尾に挿入します。 例えば、 以前に表示されたアドレスの前後のコードを逆アセンブルしたいとしましょう。 この場合、 まずdisassembleと入力し、 次に表示されたアドレスのところにカーソルを移動し、 disassembleへの引数をC-x &で読み取ります。

gdb-print-commandリストの要素を定義することによって、 これをさらにカスタマイズすることができます。 これが定義されていると、 C-x &で入手した数値が挿入される前に、 それをフォーマットしたり、 処理したりすることができるようになります。 C-x &に数値引数を指定すると、 特別なフォーマット処理を必要としているという意味になり、 その数値がリストの要素を取得するためのインデックスとなります。 リストの要素が文字列の場合は、 挿入される数値はEmacsのformat関数によってフォーマットされます。 リストの要素が文字列以外の場合は、 その数値が、 対応するリスト要素への引数として渡されます。

どのソース・ファイルが表示されている場合でも、 EmacsのC-x SPCgdb-break)コマンドは、 ポイントの置かれているソース行にブレイクポイントを設定するようGDBに対して指示します。

ソースを表示中のバッファを誤って削除してしまった場合に、 それを再表示させる簡単な方法は、 GDBバッファの中でfコマンドを入力して、 フレーム表示を要求することです。 Emacs配下では、 カレント・フレームのコンテキストを表示するために必要であれば、 ソース・バッファが再作成されます。

Emacsによって表示されるソース・ファイルは、 通常どおりの方法でソース・ファイルにアクセスする、 普通のEmacsバッファによって表示されます。 そうしたいのであれば、 これらのバッファの中でファイルの編集を行うこともできますが、 GDBとEmacsの間で行番号に関する情報が交換されていることを頭に入れておいてください。 テキストに行を挿入したり、 削除したりすると、 GDBの認識しているソース行番号は、 実際のコードと正しく対応しなくなってしまいます。


Node:GDB Bugs

GDBのバグ報告

ユーザからのバグ報告は、 GDBの信頼性を向上させるのに重要な役割を果たしています。

バグを報告することで、 その問題の解決につながり、 結果として報告者自ら利益を得ることができるかもしれません。 もちろん、 何の解決にもつながらないこともあります。 しかし、 いずれにしても、 バグ報告の主要な意義は、 次のバージョンのGDBをより良いものにすることで、 コミュニティ全体の役に立つという点にあります。 バグ報告は、 GDBの保守作業へのユーザからの貢献です。

バグ報告がその目的とするところを首尾よく達成できるようにするためには、 バグを修正することを可能にするような情報が提供されなければなりません。


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本当にバグを見つけたのかどうかを知る方法

発見した現象がバグかどうかよく分からない場合には、 以下のガイドラインを参照してください。


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バグの報告方法

いくつかの企業や個人がGNUのソフトウェアをサポートしています。 こうしたサポート組織からGDBを入手したのであれば、 まずその組織に連絡することをお勧めします。

サポートを提供している多くの企業、 個人の連絡先情報が、 GNU Emacsディストリビューションのetc/SERVICEファイルに記載されています。

どのような場合でも、 GDBのバグ報告を (英語で) 以下のアドレスに送ることをお勧めします。 6

bug-gdb@prep.ai.mit.edu

info-gdbhelp-gdb、 および、 いかなるニュースグループにもバグ報告を送ることはしないでください。 GDBユーザのほとんどは、 バグ報告を受け取りたいと考えてはいません。 バグ報告を受け取りたいと思っている人は、 bug-gdbの配信を受けるようにしているはずです。

メーリング・リストbug-gdbには、 リピータとして機能するgnu.gdb.bugというニュースグループがあります。 このメーリング・リストとニュースグループは、 全く同一のメッセージを配信しています。 メーリング・リストではなくニュースグループにバグ報告を流そうと考える人がよくいます。 これはうまく機能するように見えますが、 1つ重大な問題があります。 ニュースグループへの投稿では、 送信者へのメール・パスが分からないことがよくあります。 したがって、 もっと多くの情報が必要になったときに、 バグの報告者と連絡を取ることができない可能性があります。 こういうことがあるので、 メーリング・リストへのバグ報告の方が望ましいのです。

最後の手段として、 バグ報告を(英語で)紙に書いて下記に郵送するという方法があります。

GNU Debugger Bugs
Free Software Foundation Inc.
59 Temple Place - Suite 330
Boston, MA 02111-1307
USA

役に立つバグ報告を行うための最も根本的な原則は、 すべての事実を報告することです。 ある事実を書くべきか省くべきかよく分からない場合は、 書くようにしてください。

事実が省略されてしまうことがよくありますが、 これはバグ報告者が、 自分には問題の原因は既に分かっていると考え、 いくつかの細かい点は関係がないと仮定してしまうからです。 したがって、 例の中で使った変数の名前などは重要ではないと、 報告者は考えます。 おそらくそうかもしれません。 しかし、 完全にそうであるとも言い切れません。 メモリの参照がデタラメな場所を指しているというバグで、 それがたまたまメモリ上においてその名前が置かれている箇所から値を取り出しているということがあるかもしれません。 名前が異なれば、 そこの内容は、 バグが存在するにもかかわらずデバッガが正しく動作してしまうような値になるかもしれません。 このようなことがないよう、 特定の完全な実例を提供してください。 バグの報告者にとっては、 このようにするのが最も簡単なはずであり、 かつ、 それが最も役に立つのです。

バグ報告の目的は、 そのバグを修正することができるようにすることにある、 という点を頭に入れておいてください。 そのバグが、 以前に報告されたものと同じであるという可能性もありますが、 バグ報告が完全なもので、 必要な情報がすべて含まれたものでなければ、 バグの報告者にも私たちにもそのことを知ることができません。

ときどき、 2、3の大雑把な事実だけを記述して、 「何か思い当たることはありますか?」と聞いてくる人がいます。 このようなバグ報告は役に立ちません。 このような報告には、 より適切なバグ報告を送るよう報告者に注意する場合を除いて、 返事をすることを拒否するよう強くお願いします。

バグを修正できるようにするためには、 報告者は以下の情報をすべて含めるべきです。

以下に、 バグ報告に必要ではない情報をいくつか列挙します。


Node:Command Line Editing

コマンドライン編集

この章では、 GNUのコマンドライン編集インターフェイスの基本的な特徴について説明します。


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行編集入門

以下のパラグラフでは、 キー・ストロークを表わすために使用される表記法について説明します。

<C-k>は、 Control-Kという意味です。 これは、 コントロール・キーが押されたままの状態でキー<k>が押されたときに生成される文字を表わします。

<M-k>は、 Meta-Kという意味です。 これは、 メタ・キー (があるものとして、それ) が押されたままの状態でキー<k>が押されたときに生成される文字を表わします。 メタ・キーがない場合、 最初に<ESC>キーを押し、 次にキー<k>を押すことで、 同等のキー・ストロークを生成することができます。 どちらの手順も、 キー<k>をメタ化する、 といいます。

<M-C-k>は、 Meta-Control-Kという意味です。 これは、 <C-k>をメタ化することにより生成される文字を指します。

さらに、 いくつかのキーには名前があります。 <DEL>、 <ESC>、 <LFD>、 <SPC>、 <RET>、 <TAB>は、 この文章の中でも、 初期化ファイルの中でも、 各々のキーを表わします (see Readline Init File)。


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Readlineの操作

対話的なセッションにおいて、 長いテキストを1行に記述した後で、 その行の先頭の単語のスペルが間違っていたことに気が付くことがよくあります。 Readlineライブラリは、 入力したテキストを操作するための一連のコマンドを提供しており、 これによって、 その行の大部分を入力し直すことなく、 タイプ・ミスしたところだけを修正することができます。 これらの編集コマンドを使って、 修正が必要なところにカーソルを移動させ、 テキストを削除したり、 修正テキストを挿入したりします。 その行の修正が終われば、 単に<RETURN>を押します。 <RETURN>を押すのに、 行末にいる必要はありません。 カーソルが行内のどこにあろうと、 その行全体が入力として受け付けられます。


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Readlineの基本

行内に文字を入力するには、 単にその文字をタイプします。 タイプされた文字はカーソルの位置に表示され、 カーソルは1桁分右へ移動します。 1文字打ち間違えた場合は、 削除文字(erase character)を使って、 後退しながら打ち間違えた文字を削除することができます。

ときには、 本当は入力したかった文字を入力せず、 その誤りに気が付くことなく、 さらに数文字を入力してしまうということがあります。 このような場合には、 <C-b>によってカーソルを左に移動し、 誤りを訂正することができます。 訂正後、 <C-f>によってカーソルを右に移動することができます。

行の途中にテキストを追加すると、 挿入されたテキストのためのスペースを空けるために、 カーソルの右側にある文字が右方向に押しやられることに気がつくでしょう。 同様に、 カーソル位置にあるテキストを削除すると、 文字が削除されたために生じる空白を埋めるために、 カーソルの右側にある文字が左方向に引き戻されます。 入力行のテキストを編集するための最も基本的な操作の一覧を以下に示します。

<C-b>
1文字戻ります。
<C-f>
1文字進みます。
<DEL>
カーソルの左にある文字を削除します。
<C-d>
カーソル位置にある文字を削除します。
表示可能な文字
行内のカーソル位置にその文字を挿入します。
<C-_>
最後の編集コマンドを取り消して元に戻します。 行内に文字が無くなるまで取り消しを繰り返すことが可能です。


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Readline移動コマンド

上記の一覧は、 ユーザが入力行を編集するのに必要な、 最も基本的なキー・ストロークを説明したものです。 ユーザの利便を考慮して、 <C-b>、 <C-f>、 <C-d>、 <DEL>に加えて多くのコマンドが追加されてきました。 以下に、 行内をより迅速に動きまわるためのコマンドをいくつか示します。

<C-a>
行の先頭に移動します。
<C-e>
行の末尾に移動します。
<M-f>
1単語分先に進みます。 単語は、 文字と数字から構成されます。
<M-b>
1単語分前に戻ります。
<C-l>
画面上の情報を消去し、 カレント行が画面の一番上にくるようにして再表示します。

<C-f>が1文字分先に進むのに対して、 <M-f>が1単語分先に進む点に注意してください。 大まかな慣例として、 コントロール・キーを使うと文字単位の操作になり、 メタ・キーを使うと単語単位の操作になります。


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Readlineキル(kill)コマンド

テキストをキル(kill)するとは、 行からテキストを削除し、 その際に、 そのテキストを後に引き出して行内に再挿入(yank)することができるように退避しておくことを指します。 あるコマンドの説明に「テキストをキル(kill)する」という記述があれば、 後に別の箇所 (あるいは同じ箇所) において、 そのテキストを再入手することができると考えて間違いありません。

キル(kill)コマンドを使うと、 テキストはキル・リング(kill-ring)に退避されます。 キル(kill)コマンドを任意の回数連続して実行すると、 キル(kill)されたテキストはすべて連結されて退避されます。 したがって、 再挿入(yank)を行うと、 そのすべてを入手することができます。 キル・リング(kill-ring)は個々の行に固有のものではありません。 以前入力した行においてキル(kill)したテキストを、 後になって別の行を入力しているときに再挿入(yank)することができます。

以下に、テキストをキル(kill)するためのコマンドを一覧で示します。

<C-k>
カレントなカーソル位置から行末までのテキストをキル(kill)します。
<M-d>
カーソル位置から、 カーソルの置かれている単語の末尾までをキル(kill)します。 カーソルが2つの単語の間にあるときは、 次の単語の末尾までをキル(kill)します。
<M-DEL>
カーソル位置から、 カーソルの置かれている単語の先頭までをキル(kill)します。 カーソルが2つの単語の間にあるときは、 前の単語の先頭までをキル(kill)します。
<C-w>
カーソル位置から、 それより前にある最初の空白までをキル(kill)します。 単語間の境界が異なるので、 これは<M-DEL>とは異なります。

キル(kill)されたテキストを引き出して行内へ再挿入(yank)する方法を、 以下に示します。 再挿入(yank)とは、 最後にキルされたテキストを、 キル・バッファからコピーすることを意味しています。

<C-y>
バッファ内のカーソル位置に、 最後にキル(kill)されたテキストを再挿入(yank)します。
<M-y>
キル・リング(kill-ring)を回転させ、 新たに一番上にきたテキストを再挿入(yank)します。 このコマンドを実行できるのは、 1つ前に実行したコマンドが<C-y>または<M-y>の場合だけです。


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Readlineの引数

Readlineコマンドには数値引数を渡すことができます。 数値引数は、 繰り返し回数として使われたり、 引数の符号として使われたりします。 通常は先に進むようなコマンドに負の数を引数として指定すると、 前に戻るようになります。 例えば、 行の先頭までのテキストをキル(kill)するには、 M-- C-kとしてもよいでしょう。

コマンドに数値引数を渡す通常の方法は、 コマンドの前にメタ化された数字を入力することです。 入力された最初の「数字」がマイナス記号(<->)の場合、 引数の符号は負になります。 引数を開始するためには、 メタ化された数字を1つだけ入力すればよく、 残りの数字はそのまま入力することができます。 そして最後にコマンドを入力します。 例えば、 <C-d>コマンドに引数として10を渡すためには、 M-1 0 C-dと入力します。


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ヒストリ中のコマンドの検索

readlineは、 コマンド・ヒストリ の中から、 指定された文字列を含む行を検索するコマンドを提供しています。 インクリメンタル(incremental)と 非インクリメンタル(non-incremental)の2つの検索モードがあります。

インクリメンタル(incremental)・モードでは、 ユーザが検索文字列を入力し終わる前から検索が始まります。 検索文字列の中の文字が1つ入力されるたびに、 readlineは、 それまで入力された文字列にマッチする、 ヒストリの中の次のエントリを表示します。 インクリメンタル・モードの検索では、 検索したいヒストリ・エントリを見つけるのに本当に必要となる文字だけを入力するだけで済みます。 インクリメンタル・モードの検索を中止するのには、 <ESC>文字を使います。 <C-j>でも、 検索は中止されます。 <C-g>は、 インクリメンタル・モードの検索を終了させて、 元の行を表示します。 検索が中止されると、 検索文字列を含むヒストリ・エントリがカレント行となります。 検索文字列にマッチする他のエントリをヒストリ・リストから見つけるためには、 必要に応じて<C-s>または<C-r>を入力します。 これによって、 それまでに入力された検索文字列にマッチする次のエントリをヒストリから見つけるために、 下の方向、 または、 上の方向に検索が行われます。 Readlineコマンドにバインドされているキー・シーケンスのうち上記以外のものを入力すると、 検索は中止され、 そのコマンドが実行されます。 例えば <RET>が入力されると、 検索は中止され、 そのときの行が受け入れられたことになります。 したがって、 ヒストリ・リストの中のそのコマンドが実行されます。

非インクリメンタル(non-incremental)・モードでは、 マッチするヒストリ行の検索を開始する前に、 検索文字列全体を読み込みます。 検索文字列は、 ユーザによって入力されたものでも構いませんし、 カレント行の内容の一部であっても構いません。


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Readline初期化ファイル

Readlineライブラリには、 emacsスタイルのキー・バインディングがデフォルトで組み込まれていますが、 異なるキー・バインディングを使うこともできます。 ホーム・ディレクトリ内のファイルinputrcにコマンドを記述することで、 誰でもReadlineを使うプログラムをカスタマイズすることができます。 このファイルの名前は、 環境変数INPUTRCの値から取られます。 この変数に値がセットされていない場合のデフォルトは、 ~/.inputrcです。

Readlineライブラリを使うプログラムが起動されると、 初期化ファイルが読み込まれ、 キー・バインディングが設定されます。

さらに、 C-x C-rコマンドを実行すると、 この初期化ファイルが再読み込みされます。 初期化ファイルに変更が加えられていれば、 その変更が反映されます。


Node:Readline Init File Syntax, Next:, Up:Readline Init File

Readline初期化ファイルの構文

Readline初期化ファイルの中では、 ほんの少数の基本的な構文だけが使用できます。 空行は無視されます。 #で始まる行はコメントです。 $で始まる行は、 条件構文を表わします (see Conditional Init Constructs)。 その他の行は、 変数設定とキー・バインディングを示します。

変数設定
初期化ファイルの中でsetコマンドを使用してReadlineの変数の値を変更することによって、 Readlineの実行時の振る舞いを変更することができます。 デフォルトのEmacsスタイルのキー・バインディングを変更して、 viの行編集コマンドを使用できるようにするには、 以下のようにします。
set editing-mode vi

以下の変数によって、 実行時の振る舞いのかなりの部分が変更可能です。


bell-style
Readlineが端末のベル音を鳴らしたいと判断した場合に、 何が起こるかを制御します。 noneがセットされると、 Readlineはベル音を鳴らしません。 visibleがセットされると、 視覚的なベル7 が利用可能であれば、 それを使います。 audible(デフォルト)がセットされると、 Readlineは、 端末のベル音を鳴らそうと試みます。
comment-begin
insert-commentコマンドが実行されたときに、 行の先頭に挿入される文字列です。 デフォルトの値は"#"です。
completion-ignore-case
onがセットされると、 Readlineは、 大文字・小文字を区別せずに、 ファイル名のマッチングや補完を行います。 デフォルトの値はoffです。
completion-query-items
ユーザに対して補完候補の一覧を見たいかどうか問い合わせるタイミングを決定する、 補完候補の数です。 補完候補の数がこの値よりも多いと、 Readlineは、 補完候補の一覧を見たいかどうかをユーザに対して問い合わせることになります。 この値よりも少ない場合は、 問い合わせを行うことなく一覧を表示します。 デフォルトの境界は100です。
convert-meta
onがセットされると、 Readlineは、 第8ビットがセットされている文字をASCIIのキー・シーケンスに変換します。 これは、 該当文字の第8ビットを落として、 その前に<ESC>文字を付加することで、 メタ・プレフィックス・キー・シーケンス(meta-prefixed key sequence) に変換することによって行われます。 デフォルトの値はonです。
disable-completion
Onがセットされると、 Readlineは単語補完を抑制します。 補完文字(completion character)は、 あたかもself-insertにマップされたかのように、 行内に挿入されます。 デフォルトはoffです。
editing-mode
editing-mode変数は、 デフォルトで使用するキー・バインディングの種類を制御します。 Readlineは、 デフォルトの状態では、 Emacs編集モードで起動します。 このモードは、 キー・ストロークがEmacsに非常に良く似ています。 この変数は、 emacsviのどちらかに設定することができます。
enable-keypad
onがセットされると、 Readlineは、 呼び出されたときに、 アプリケーション・キーパッド(application keypad)を有効にすることを試みます。 システムによっては、 矢印キーを使用できるようにするために、 これが必要となります。 デフォルトはoffです。
expand-tilde
onがセットされると、 Readlineが単語補完を試みる際に、 チルダの展開が行われます。 デフォルトはoffです。
horizontal-scroll-mode
この変数は、 onoffのどちらかに設定することができます。 これをonに設定すると、 1行のテキストの長さがスクリーン幅よりも長い場合に、 編集中の行のテキストが次の行に折り返すことなく、 同じ行の上で水平方向にスクロールするようになります。 デフォルトでは、 この変数にはoffがセットされています。
keymap
Readlineが認識している、 キー・バインディング・コマンドのカレントなキーマップをセットします。 セットすることのできるkeymap名は、 emacsemacs-standardemacs-metaemacs-ctlxvivi-commandvi-insertです。 vivi-commandと同等です。 また、 emacsemacs-standardと同等です。 デフォルトの値は、 emacsです。 editing-mode変数の値も、 デフォルトのキーマップに影響を及ぼします。
mark-directories
onがセットされると、 補完されたディレクトリ名の後ろにスラッシュが付加されます。 デフォルトはonです。
mark-modified-lines
この変数にonがセットされると、 Readlineは、 変更されたヒストリ行の先頭にアスタリスク(*)を表示します。 この変数は、 デフォルトではoffです。
input-meta
onがセットされると、 Readlineは、 8ビット入力に対する端末側のサポートがどうであれ、 8ビット入力を有効にします (読み込まれた文字の第8ビットを落としません)。 デフォルト値はoffです。 meta-flagは、 この変数の別名です。
output-meta
onがセットされると、 Readlineは、 第8ビットがセットされている文字を、 メタ・プレフィックス・エスケープ・シーケンス (meta-prefixed escape sequence) としてではなく、 直接表示します。 デフォルトはoffです。
print-completions-horizontally
onがセットされると、 Readlineは、 マッチする補完候補をアルファベット順にソートして、 画面の下向きにではなく、 水平方向に並べて表示します。 デフォルトはoffです。
show-all-if-ambiguous
補完関数のデフォルトの振る舞いを変更します。 onがセットされると、 複数の補完候補を持つ単語は、 ベル音を鳴らすことなく、 直ちに補完候補を一覧表示させます。 デフォルト値はoffです。
visible-stats
onがセットされると、 補完候補を一覧表示する際に、 ファイル・タイプを示す文字がファイル名の後ろに付加されます。 デフォルトはoffです。

キー・バインディング
初期化ファイルの中でキー・バインディングを制御するための構文は単純です。 まず、 キー・バインディングを変更したいコマンドの名前を知っている必要があります。 以下のセクションにおいて、 コマンドの名前、 そのコマンドにデフォルトのキー・バインディングがある場合はそのバインディング、 および、 そのコマンドが何をするものであるかについての簡単な説明を、 一覧にして示します。

コマンドの名前を知っていれば、 初期化ファイルの中で、 コマンドにバインドしたいキーの名前、 コロン、 そして最後にコマンドの名前を、 1行にして記述するだけです。 キーの名前は、 好みに応じて異なる方法で表現することができます。

keynamefunction-name or macro
keynameは、 英語で記述されたキーの名前です。 例えば、 以下のようになります。
Control-u: universal-argument
Meta-Rubout: backward-kill-word
Control-o: "> output"

上の例では、 <C-u>が関数universal-argumentにバインドされ、 <C-o>がその右側に記述されたマクロ (行内に> outputというテキストを挿入するマクロ) を実行するようバインドされます。

"keyseq": function-name or macro
前の例のkeynameとは異なり、 keyseqには、 キー・シーケンス全体を示す文字列を指定することができます。 これは、 キー・シーケンスを二重引用符で囲むことによって実現されます。 以下の例に示すように、 いくつかのGNU Emacsスタイルのキー・エスケープを使うことができますが、 特殊文字の名前は認識されません。
"\C-u": universal-argument
"\C-x\C-r": re-read-init-file
"\e[11~": "Function Key 1"

上の例では、 <C-u>が (最初の例と同様) 関数universal-argumentに、 <C-x> <C-r>が関数re-read-init-fileに、 <ESC> <[> <1> <1> <~>Function Key 1というテキストを挿入するよう、 それぞれバインドされています。

キー・シーケンスを指定する際には、 以下のGNU Emacsスタイルのエスケープ・シーケンスが利用できます。

\C-
コントロール・プレフィックス
\M-
メタ・プレフィックス
\e
エスケープ文字
\\
バックスラッシュ
\"
<">
\'
<'>

GNU Emacsスタイルのエスケープ・シーケンスに加えて、 別のバックスラッシュ・エスケープ群が利用できます。

\a
警告(ベル)
\b
バックスペース
\d
削除
\f
フォーム・フィード
\n
改行
\r
復帰(carriage return)
\t
水平タブ
\v
垂直タブ
\nnn
ASCIIコードが8進数値のnnn (1個以上3個以下の数字) に相当する文字
\xnnn
ASCIIコードが16進数値のnnn (1個以上3個以下の数字) に相当する文字

マクロのテキストを入力する際には、 マクロ定義であることを示すために、 単一引用符または二重引用符を使わなければなりません。 引用符に囲まれないテキストは、 関数名であると見なされます。 マクロ本体においては、 上記のバックスラッシュ・エスケープは展開されます。 バックスラッシュとそれに続く文字の組み合わせがバックスラッシュ・エスケープに該当しない場合、 マクロのテキストの中のバックスラッシュは、 "'も含めて、 直後にある文字を引用します。 例えば、 以下のバインディングによって、 C-x \は、 行内に\を1つ挿入することになります。

"\C-x\\": "\\"


Node:Conditional Init Constructs, Next:, Previous:Readline Init File Syntax, Up:Readline Init File

条件初期化構文

Readlineは、 Cのプリプロセッサにおける条件コンパイル機能と質的に類似した機能を実装しています。 これによって、 あるテストの結果に応じてキー・バインディングや変数設定が実行されるようにすることができます。 4種類のパーサ指示子が使われます。

$if
$ifは、 編集モード、 使用されている端末、 あるいは、 Readlineを使用しているアプリケーションに応じてバインディングが行われるようにすることを可能にします。 $ifの後ろに、 テストされる内容が行末まで続きます。 テストされる内容をほかのものと分離するために特別に文字を使う必要はありません。
mode
Readlineがemacsモードとviモードのどちらで動作しているかをテストするために、 $if指示子の一形式であるmode=が使用されます。 例えば、 Readlineがemacsモードで開始されている場合にのみ、 emacs-standardemacs-ctlxのキーマップでバインディングをセットするようにするために、 これをset keymapコマンドと組み合わせて使用することができます。
term
term=という形式は、 端末のファンクション・キーによって特定のキー・シーケンスが出力されるようなバインディングを行うなどの目的で、 端末固有のキー・バインディングを組み込むために使用することができます。 =の右側の単語は、 端末の完全名と、 端末の名前のうち最初の-までの部分の両方に対してテストされます。 これにより、 例えばsunは、 sunsun-cmdの両方にマッチすることになります。
application
applicationは、 アプリケーション固有の設定を組み込むために使用されます。 Readlineライブラリを使用する個々のプログラムがセットするapplication name (アプリケーション名) をテストすることができます。 特定のプログラムにとって役に立つ関数に対してキー・シーケンスをバインドするために、 これを使用することができます。 例えば以下のコマンドは、 Bashにおいて、 カレントな単語、 または、 1つ前の単語を引用符で囲むキー・シーケンスを追加します。
$if Bash
# カレントな単語、または、1つ前の単語を引用符で囲む
"\C-xq": "\eb\"\ef\""
$endif

$endif
このコマンドは、 前の例が示すように、 $ifコマンドを終わらせます。
$else
$if指示子から枝分かれしたこの部分に記述されたコマンドは、 テスト結果が偽であった場合に実行されます。
$include
この指示子は、 引数としてファイル名を1つ取り、 そのファイルからコマンドとバインディングを読み込みます。
$include /etc/inputrc


Node:Sample Init File, Previous:Conditional Init Constructs, Up:Readline Init File

初期化ファイルのサンプル

以下に、 inputrcファイルの実例を示します。 この中では、 キー・バインディング、 変数割り当て、 条件構文の例が示されています。

# このファイルは、Gnu Readlineライブラリを使うプログラムの行入力編集
# の振る舞いを制御する。Gnu Readlineライブラリを使うプログラムには、
# FTP、Bash、Gdbなどがある。
#
# inputrcファイルは、C-x C-rによって再読み込みすることができる。
# '#'で始まる行は、コメントである。
#
# 最初に、/etc/Inputrcからシステム全体のバインディングと変数割り当て
# を取り込む。
$include /etc/Inputrc

#
# emacsモードにおける種々のバインディングをセットする。

set editing-mode emacs

$if mode=emacs

Meta-Control-h:	backward-kill-word	関数名の後ろのテキストは無視される。

#
# キーパッド・モードにおける矢印キー
#
#"\M-OD":        backward-char
#"\M-OC":        forward-char
#"\M-OA":        previous-history
#"\M-OB":        next-history
#
# ANSIモードにおける矢印キー
#
"\M-[D":        backward-char
"\M-[C":        forward-char
"\M-[A":        previous-history
"\M-[B":        next-history
#
# 8ビット・キーパッド・モードにおける矢印キー
#
#"\M-\C-OD":       backward-char
#"\M-\C-OC":       forward-char
#"\M-\C-OA":       previous-history
#"\M-\C-OB":       next-history
#
# 8ビットANSIモードにおける矢印キー
#
#"\M-\C-[D":       backward-char
#"\M-\C-[C":       forward-char
#"\M-\C-[A":       previous-history
#"\M-\C-[B":       next-history

C-q: quoted-insert

$endif

# 旧スタイルのバインディング。これがたまたまデフォルトでもある。
TAB: complete

# シェルとのやりとりにおいて便利なマクロ
$if Bash
# パス(PATH)の編集
"\C-xp": "PATH=${PATH}\e\C-e\C-a\ef\C-f"
# 引用符で囲まれた単語を入力するための準備 -- 先頭と末尾の二重引用符
# を挿入して、先頭の引用符の直後に移動
"\C-x\"": "\"\"\C-b"
# バックスラッシュを挿入
# (シーケンスやマクロにおいて、バックスラッシュ・エスケープをテストする)
"\C-x\\": "\\"
# カレントな単語、または、1つ前の単語を引用符で囲む
"\C-xq": "\eb\"\ef\""
# バインドされていない行再表示コマンドにバインディングを追加
"\C-xr": redraw-current-line
# カレント行において変数を編集
"\M-\C-v": "\C-a\C-k$\C-y\M-\C-e\C-a\C-y="
$endif

# 視覚的なベルが利用可能であれば、それを使う
set bell-style visible

# 読み込みの際に、文字の第8ビットを落とさない
set input-meta on

# iso-latin1文字は、プレフィックス・メタ・シーケンスに変換せず、
# そのまま挿入する
set convert-meta off

# 第8ビットがセットされている文字を、メタ・プレフィックス文字として
# ではなく、直接表示する
set output-meta on

# ある単語について、150を超える補完候補が存在する場合、ユーザに対して
# すべてを表示させたいかどうかを問い合わせる
set completion-query-items 150

# FTP用
$if Ftp
"\C-xg": "get \M-?"
"\C-xt": "put \M-?"
"\M-.": yank-last-arg
$endif


Node:Bindable Readline Commands, Next:, Previous:Readline Init File, Up:Command Line Editing

バインド可能なReadlineコマンド

このセクションでは、 キー・シーケンスにバインドすることが可能なReadlineコマンドについて説明します。


Node:Commands For Moving, Next:, Up:Bindable Readline Commands

移動のためのコマンド

beginning-of-line (C-a)
カレント行の先頭に移動します。
end-of-line (C-e)
行の末尾に移動します。
forward-char (C-f)
1文字分先に進みます。
backward-char (C-b)
1文字分後へ戻ります。
forward-word (M-f)
次の単語の末尾へ移動します。 単語は、 文字と数字により構成されます。
backward-word (M-b)
現在カーソルが指している単語、 または、 1つ前の単語の先頭に移動します。 単語は、 文字と数字により構成されます。
clear-screen (C-l)
画面を消去し、 カレント行を再表示します。 その際、 カレント行が画面の一番上になるようにします。
redraw-current-line ()
カレント行を再表示します。 デフォルトでは、 このコマンドはバインドされていません。


Node:Commands For History, Next:, Previous:Commands For Moving, Up:Bindable Readline Commands

ヒストリを操作するためのコマンド

accept-line (Newline, Return)
カーソルの位置がどこにあっても、 その行を受け取ります。 この行が空行ではない場合、 それをヒストリ・リストに追加します。 この行がヒストリ行である場合は、 そのヒストリ行を最初の状態に復元します。
previous-history (C-p)
ヒストリ・リストを1つ上に移動します。
next-history (C-n)
ヒストリ・リストを1つ下に移動します。
beginning-of-history (M-<)
ヒストリの最初の行に移動します。
end-of-history (M->)
入力ヒストリの最後の行、 すなわち、 現在入力中の行に移動します。
reverse-search-history (C-r)
カレント行から始めて上の方向へ検索を行います。 必要に応じてヒストリの上の方へ移動します。 インクリメンタルな検索を行います。
forward-search-history (C-s)
カレント行から始めて下の方向へ検索を行います。 必要に応じてヒストリの下の方へ移動します。 インクリメンタルな検索を行います。
non-incremental-reverse-search-history (M-p)
カレント行から始めて、 必要に応じてヒストリの上の方へ移動しつつ、 非インクリメンタルな検索を使って、 ユーザによって提供された文字列を上の方向へ検索します。
non-incremental-forward-search-history (M-n)
カレント行から始めて、 必要に応じてヒストリの下の方へ移動しつつ、 非インクリメンタルな検索を使って、 ユーザによって提供された文字列を下の方向へ検索します。
history-search-forward ()
カレント行の先頭からカレントなカーソル位置 (ポイント) までの間の文字列を、 ヒストリの中で下の方向へ検索します。 これは、 非インクリメンタルな検索です。 デフォルトでは、 このコマンドはバインドされていません。
history-search-backward ()
カレント行の先頭からポイントまでの間の文字列を、 ヒストリの中で上の方向へ検索します。 これは、 非インクリメンタルな検索です。 デフォルトでは、 このコマンドはバインドされていません。
yank-nth-arg (M-C-y)
1つ前に実行されたコマンドの最初の引数 (通常は、 1つ前の行の2つめの単語) を挿入します。 引数nを指定すると、 1つ前に実行されたコマンドのn番目の単語を挿入します (1つ前に実行されたコマンドの中の最初の単語を、 0番目の単語とします)。 負の値を引数に指定すると、 1つ前に実行されたコマンドの後ろから数えてn番目の単語を挿入します
yank-last-arg (M-., M-_)
1つ前に実行されたコマンドの最後の引数 (1つ前のヒストリ・エントリの最後の単語) を挿入します。 引数を指定すると、 yank-nth-argと同じように動作します。 yank-last-argを連続して実行すると、 ヒストリ・リストを遡って移動していきます。 したがって、 各行の最後の引数が順番に挿入されていきます。


Node:Commands For Text, Next:, Previous:Commands For History, Up:Bindable Readline Commands

テキストを変更するためのコマンド

delete-char (C-d)
カーソル位置にある文字を削除します。 カーソルが空行の先頭にあり、 最後に入力された文字がdelete-charにバインドされていない場合は、 EOFを返します。
backward-delete-char (Rubout)
カーソル位置の前にある文字を削除します。 数値引数を指定すると、 文字を削除するのではなくキル(kill)するよう指示したことになります。
quoted-insert (C-q, C-v)
このコマンドに続けて入力する文字をそのまま行に追加します。 これが、 例えば<C-q>のようなキー・シーケンスを挿入する方法です。
tab-insert (M-TAB)
タブを挿入します。
self-insert (a, b, A, 1, !, ...)
その文字自身を挿入します。
transpose-chars (C-t)
カーソルの前にある文字をドラッグして、 カーソル位置にある文字の後ろに持っていきます。 カーソル自身も同様に前進させます。 挿入ポイントが行末にある場合には、 行の最後の2文字を入れ替えます。 負の引数を与えても機能しません。
transpose-words (M-t)
カーソルの前にある単語をドラッグして、 カーソルの後ろにある単語の後ろに持っていきます。 カーソル自身も、 カーソルの後ろにある単語の後ろに移動します。
upcase-word (M-u)
カレントな (あるいは、 その1つ後ろの) 単語の中のすべての文字を大文字に変換します。 負の引数を指定すると、 1つ前の単語の中のすべての文字を大文字に変換しますが、 カーソルは移動しません。
downcase-word (M-l)
カレントな (あるいは、 その1つ後ろの) 単語の中のすべての文字を小文字に変換します。 負の引数を指定すると、 1つ前の単語の中のすべての文字を小文字に変換しますが、 カーソルは移動しません。
capitalize-word (M-c)
カレントな (あるいは、 その1つ後ろの) 単語の先頭文字を大文字に、 それ以外の位置にある文字を小文字に変換します。 負の引数を指定すると、 1つ前の単語に対して同様の変換を行いますが、 カーソルは移動しません。


Node:Commands For Killing, Next:, Previous:Commands For Text, Up:Bindable Readline Commands

キル(kill)と再挿入(yank)


kill-line (C-k)
カレントなカーソル位置から行末までのテキストをキル(kill)します。
backward-kill-line (C-x Rubout)
行の先頭までのテキストをキルします。
unix-line-discard (C-u)
カーソル位置から逆方向にカレント行の先頭までをキルします。 キルされたテキストは、 キル・リング(kill-ring)に退避されます。
kill-whole-line ()
カーソルの位置にかかわらず、 カレント行のすべての文字をキルします。 デフォルトでは、 バインドされていません。
kill-word (M-d)
カーソル位置からカレントな単語の末尾までをキルします。 カーソルが単語の間にある場合は、 次の単語の末尾までをキルします。 単語の境界は、 forward-wordの場合と同様です。
backward-kill-word (M-DEL)
カーソルの前にある単語をキルします。 単語の境界は、 backward-wordの場合と同様です。
unix-word-rubout (C-w)
空白類8を単語の境界として、 カーソルの前にある単語をキルします。 キルされた単語は、 キル・リングに退避されます。
delete-horizontal-space ()
ポイントの前後にある、 すべての空白(スペース)とタブを削除します。 デフォルトでは、 バインドされていません。
kill-region ()
ポイントとマーク (待避されたカーソル位置) の間のテキストをキルします。 このテキストは、 領域(region)と呼ばれます。 デフォルトでは、 このコマンドはバインドされていません。
copy-region-as-kill ()
領域(region)内のテキストを、 直ちに再挿入(yank)できるよう、 キル・バッファ(kill buffer)にコピーします。 デフォルトでは、 このコマンドはバインドされていません。
copy-backward-word ()
ポイントの前にある単語をキル・バッファにコピーします。 単語の境界は、 backward-wordの場合と同様です。 デフォルトでは、 このコマンドはバインドされていません。
copy-forward-word ()
ポイントの後ろにある単語をキル・バッファにコピーします。 単語の境界は、 forward-wordの場合と同様です。 デフォルトでは、 このコマンドはバインドされていません。
yank (C-y)
キル・リングの一番上の位置にあるテキストを、 バッファ内のカレントなカーソル位置に再挿入(yank)します。
yank-pop (M-y)
キル・リングを回転させ、 新しく一番上の位置にきたテキストを再挿入(yank)します。 1つ前に実行したコマンドが、 yankまたはyank-popであった場合のみ、 このコマンドを実行することができます。


Node:Numeric Arguments, Next:, Previous:Commands For Killing, Up:Bindable Readline Commands

数値引数の指定


digit-argument (M-0, M-1, ... M--)
既に蓄積済みの引数にこの数字を追加するか、 または、 この数字によって新しい引数を開始します。 負の引数を指定するには、 先頭を<M->とします。
universal-argument ()
これは、 引数を指定する別の方法です。 このコマンドの後に、 場合によって先頭にマイナス記号の付く、 1つ以上の数字が続く場合には、 それらの数字が引数を定義します。 このコマンドの後ろに数字が続く場合には、 universal-argumentを再実行することによって、 その数字引数を終わらせることができます。 しかし、 このコマンドの後ろに数字が続かない場合の再実行は、 無視されます。 特殊なケースとして、 このコマンドの直後に数字でもマイナス記号でもない文字が続く場合、 次に実行されるコマンドの引数カウントは4倍されます。 引数カウントの初期値は1です。 したがって、 この関数を最初に実行した後には、 引数カウントは4になり、 2回目に実行した後には16になります。 以下、 同様です。 デフォルトでは、 キーへのバインドはされていません。


Node:Commands For Completion, Next:, Previous:Numeric Arguments, Up:Bindable Readline Commands

Readlineによる入力補完

complete (TAB)
カーソルの前にあるテキストの補完を試みます。 これは、 アプリケーション固有の動作をします。 通常、 引数としてファイル名を入力しているときには、 ファイル名を補完することができます。 コマンド名を入力しているときには、 コマンド名を補完することができます。 GDBに対してシンボル名を入力しているときには、 シンボル名を補完することができます。 Bashに対して変数名を入力しているときには、 変数名を補完することができます。
possible-completions (M-?)
カーソルの前にあるテキストの補完候補を一覧表示します。
insert-completions (M-*)
possible-completionsを実行すれば生成されたであろうテキストの補完候補をすべて、 ポイントの前に挿入します。
menu-complete ()
completeに似ていますが、 補完されるべき単語を、 補完候補の一覧の中の1つと置き換えます。 menu-completeを繰り返し実行すると、 補完候補の一覧から順番に1つずつ補完候補が挿入されていきます。 候補一覧の終端に達すると、 ベル音が鳴らされ、 補完前のテキストが復元されます。 引数nを指定すると、 補完候補の一覧の中でn個先に移動します。 一覧を逆方向に戻るために、 負の引数を指定することができます。 このコマンドは、 TABにバインドすることを意図したものですが、 デフォルトではバインドされていません。


Node:Keyboard Macros, Next:, Previous:Commands For Completion, Up:Bindable Readline Commands

キーボード・マクロ


start-kbd-macro (C-x ()
カレントなキーボード・マクロの構成要素として入力される文字の保存を開始します。
end-kbd-macro (C-x ))
カレントなキーボード・マクロの構成要素として入力された文字の保存を終了して、 そのキーボード・マクロの定義を保存します。
call-last-kbd-macro (C-x e)
最後に定義されたキーボード・マクロを再実行します。 マクロの中の文字群が、 あたかもキーボードから入力されたかのように、 現われます。


Node:Miscellaneous Commands, Previous:Keyboard Macros, Up:Bindable Readline Commands

その他のコマンド


re-read-init-file (C-x C-r)
inputrcファイルの内容を読み込み、 その中にあるバインディングや変数割り当てをすべて組み込みます。
abort (C-g)
カレントな編集コマンドの実行を停止し、 (bell-styleの設定次第では) 端末のベル音を鳴らします。
do-uppercase-version (M-a, M-b, M-x, ...)
メタ化された文字xが小文字である場合、 対応する大文字にバインドされているコマンドを実行します。
prefix-meta (ESC)
次に入力される文字をメタ化します。 これは、 メタ・キーのないキーボード用のコマンドです。 ESC fを入力するのは、 M-fを入力するのと同じことです。
undo (C-_, C-x C-u)
インクリメンタルな取り消し処理を実行します。 取り消す内容は、 各行ごとに別々に記憶されています。
revert-line (M-r)
行に加えられたすべての変更を取り消します。 これは、 undoコマンドを、 行を元の状態に戻すのに必要な回数繰り返して実行するようなものです。
tilde-expand (M-~)
カレントな単語に対して、 チルダ展開を実行します。
set-mark (C-@)
カレントなポイントにマークをセットします。 数値引数があれば、 その位置にマークがセットされます。
exchange-point-and-mark (C-x C-x)
ポイントとマークを交換します。 待避されていた位置がカレントなカーソル位置としてセットされ、 元のカーソル位置はマークとして待避されます。
character-search (C-])
文字を1つ読み込み、 その文字が次に現われるところにポイントを移動します。 負の数を指定すると、 その文字が以前に現われたところを探します。
character-search-backward (M-C-])
文字を1つ読み込み、 その文字が前に現われたところにポイントを移動します。 負の数を指定すると、 その文字が次に現われるところを探します。
insert-comment (M-#)
カレント行の先頭にcomment-begin変数の値が挿入され、 挿入後の行が、 あたかも改行が入力されたかのように、 受け付けられます。
dump-functions ()
Readlineの出力ストリームに、 すべての関数とそのキー・バインディングを出力します。 数値引数が指定されると、 inputrcファイルの一部として使用することのできる形式に、 出力がフォーマットされます。 このコマンドは、 デフォルトではバインドされていません。
dump-variables ()
Readlineの出力ストリームに、 値をセットすることのできるすべての変数とその値を出力します。 数値引数が指定されると、 inputrcファイルの一部として使用することのできる形式に、 出力がフォーマットされます。 このコマンドは、 デフォルトではバインドされていません。
dump-macros ()
マクロにバインドされているすべてのReadlineキー・シーケンスと、 そのキー・シーケンスが出力する文字列を出力します。 数値引数が指定されると、 inputrcファイルの一部として使用することのできる形式に、 出力がフォーマットされます。 このコマンドは、 デフォルトではバインドされていません。


Node:Readline vi Mode, Previous:Bindable Readline Commands, Up:Command Line Editing

Readlineのviモード

Readlineライブラリは、 viの編集機能のフルセットを提供してはいませんが、 簡単な行編集を行うのに十分な機能は備えています。 Readlineのviモードは、 POSIX 1003.2標準にしたがって動作します。

emacs編集モードとvi編集モードを対話的に切り替えるには、 コマンドM-C-j(toggle-editing-mode)を使用してください。 Readlineのデフォルトはemacsモードです。

viモードで行入力を行うときには、 あたかもiを入力したかのように、 最初から「挿入」モードになっています。 <ESC>を押すと「コマンド」モードになり、 標準的なviの移動キーによって行のテキストを編集することができます。 すなわち、 kにより前のヒストリ行に移動すること、 jによって後ろのヒストリ行に移動すること、 などが可能です。


Node:Using History Interactively

ヒストリの対話的な使用

ここでは、 ユーザの見地に立って、 GNUヒストリ・ライブラリの対話的な使い方を説明します。


Node:History Interaction, Up:Using History Interactively

ヒストリの操作

ヒストリ・ライブラリは、 cshのヒストリ展開機能に似た機能を提供します。 以下において、 ヒストリ情報を操作するための構文を説明します。

ヒストリ展開は2つの部分から構成されます。 第1の部分で、 過去のヒストリのどの行が代替処理に使用されるかが決まります。 この行をイベントと呼びます。 第2の部分で、 この行のうちどの部分がカレント行に挿入されるかが決まります。 この部分のことをワードと呼びます。 GDBは、 Bashシェルと同様の方法によって行をワードに分割します。 したがって、 引用符によって囲まれた複数の英単語(あるいはUNIX用語)は1つのワードとみなされます。


Node:Event Designators, Next:, Up:History Interaction

イベント指定子

イベント指定子とは、 ヒストリ・リスト内のコマンド行エントリへの参照です。


!
ヒストリ代替を開始します。 ただし次に続く文字が、 空白、 タブ、 行末、 <=>、 <(>である場合は例外です。
!!
1つ前のコマンドを参照します。 これは、 !-1と同義です。
!n
コマンド行番号nのコマンド行を参照します。
!-n
n行前のコマンド行を参照します。
!string
コマンドの最初の部分が文字列stringで始まるコマンドのうち、 最後に実行されたものを参照します。
!?string[?]
文字列stringを含むコマンドのうち、 最後に実行されたものを参照します。


Node:Word Designators, Next:, Previous:Event Designators, Up:History Interaction

ワード指定子

コロン(<:>)が、 イベント指定子とワード指定子の区切り文字になります。 ワード指定子が<^>、 <$>、 <*>、 <%>で始まる場合は、 この区切り文字は省略することができます。 ワードは行の先頭から番号が付与され、 最初のワードは0(ゼロ)番になります。


0 (zero)
ゼロ番目のワードです。 多くのアプリケーションにおいて、 これはコマンド・ワードです。
n
n番目のワードです。
^
最初の引数、 すなわち1番目のワードです。
$
最後の引数です。
%
最後に実行された?string?検索にマッチしたワードです。
x-y
ある範囲のワードを指します。 -yは、 0-yの省略形です。
*
ゼロ番目のワードを除く、 すべてのワードです。 これは、 1-$と同義です。 イベントの内部にワードが1つしかなくても、 <*>の使用はエラーにはなりません。 この場合には、 空の文字列が返されます。


Node:Modifiers, Previous:Word Designators, Up:History Interaction

修飾子

必須ではないワード指定子に続けて、 以下の修飾子を1つ以上連続して追加することができます。 個々の修飾子の前にコロン(<:>)を付けます。


#
それまで入力されたコマンド行全体です。 これは、 1つ前のコマンドではなく、 カレントなコマンドを意味します。
h
パス名の末尾の部分を削除したヘッド部です。
r
.suffix形式の拡張子を削除したベース名です。
e
拡張子以外のすべての部分を削除します。
t
パス名の末尾の部分を残し、 それより前にある部分をすべて削除します。
p
新しいコマンドを表示するだけで実行しません。


Node:Formatting Documentation

ドキュメントのフォーマット

GDB 4には、 PostScriptまたはGhostScriptでそのまま印刷できる、 フォーマット済みのリファレンス・カードが含まれています。 9 これは、 メインのソース・ディレクトリの下のgdbサブディレクトリにあります。 PostScriptまたはGhostscriptを使えるプリンタがあれば、 refcard.psを使ってすぐにリファレンス・カードを印刷することができます。 GDB 4には、 リファレンス・カードのソースも含まれています。 TeXを使えば、 以下のようにしてこれをフォーマットすることができます。
make refcard.dvi
GDBのリファレンス・カードは、 米国のレター・サイズの用紙にランドスケープ・モードで印刷するようにデザインされています。 レター・サイズは、 横幅が11インチ、 高さが8.5インチです。 DVI出力プログラムへのオプションとして、 この印刷形式を指定する必要があります。

すべてのGDBドキュメントは、 マシン上で読むことのできるディストリビューションの一部として提供されます。 ドキュメントはTexinfoフォーマットで記述されています。 これは、 単一のソースからオンライン・マニュアルとハードコピー・マニュアルの両方を生成するドキュメント・システムです。 Infoフォーマット・コマンドの1つを使ってオンライン・ドキュメントを作成することができ、 TeX (またはtexi2roff) を使ってハード・コピーの組版ができます。 GDBには、 このマニュアルのフォーマット済みのオンラインInfoバージョンも含まれています。 これは、 gdbサブディレクトリにあります。 メインのInfoファイルはgdb-4.18/gdb/gdb.infoで、 同じディレクトリにあるgdb.info*にマッチする従属ファイルを参照します。 必要であれば、 これらのファイルを印刷したり、 任意のエディタで表示して読むこともできます。 しかし、 これらのファイルは、 GNU Emacsのinfoサブシステムや GNU Texinfoの一部として配布されるスタンドアロンのinfoプログラムを使った方が読みやすいでしょう。

これらのInfoファイルを自分でフォーマットしたいのであれば、 texinfo-format-buffermakeinfoのようなInfoフォーマット・プログラムが必要になります。

makeinfoがインストールされていて、 GDBソース・ディレクトリのトップ・レベル (バージョン4.18ではgdb-4.18) にいる場合は、 以下のようにしてInfoファイルを作成することができます。

cd gdb
make gdb.info

このマニュアルのコピーの組版を行って印刷するには、 TeX、 TeXのDVI出力ファイルを印刷するプログラム、 および、 Texinfo定義ファイルtexinfo.texが必要です。

TeXは組版プログラムです。 TeXは直接ファイルを印刷しませんが、 DVIファイルと呼ばれるものを生成します。 組版されたドキュメントを印刷するには、 DVIファイルを印刷するプログラムが必要です。 システム上にTeXがインストールされていれば、 DVIファイルを印刷するプログラムも入っている可能性があります。 印刷に使われるコマンドの正確な名前はシステムにより異なります。 lpr -dが一般によく使われます。 また (PostScriptプリンタでは) dvipsがよく使われます。 DVIプリント・コマンドを使う際には、 ファイル名に拡張子を付けないか、 あるいは、 .dviという拡張子を付ける必要があるかもしれません。

また、 TeXはtexinfo.texという名のマクロ定義ファイルを必要とします。 このファイルはTeXに対して、 Texinfoフォーマットで記述されたドキュメントをどのようにして組版するかを教えます。 TeXは自分自身では、 Texinfoファイルを読むことも組版することもできません。 texinfo.texはGDBととともに配布されていて、 gdb-version-number/texinfoディレクトリにあります。

TeXとDVI印刷プログラムがインストールされていれば、 このマニュアルを組版して、 印刷することができます。 メインのソース・ディレクトリの下のgdbサブディレクトリ (例えば、 gdb-4.18/gdb) に移動して、 以下のように実行します。

make gdb.dvi

その後、 gdb.dviDVI印刷プログラムに渡します。


Node:Installing GDB, Next:, Previous:Using History Interactively, Up:Top

GDBのインストール

GDBには、 インストールのための準備作業を自動化するconfigureスクリプトが付属しています。 configureを実行した後にmakeを実行することで、 gdbをビルドすることができます。 GDBディストリビューションには、 GDBをビルドするのに必要なすべてのソース・コードが、 単一のディレクトリの下に収められています。 このディレクトリの名前は通常、 gdbの後ろにバージョン番号を付加したものです。

例えば、 バージョン4.18のGDBディストリビューションは、 gdb-4.18というディレクトリに収められています。 このディレクトリには、 以下のものが含まれます。

gdb-4.18/configure (およびサポート・ファイル)
GDB、 および、 GDBが必要とするすべてのライブラリの構成を行うためのスクリプト
gdb-4.18/gdb
GDB自身に固有のソース
gdb-4.18/bfd
Binary File Descriptorライブラリのソース
gdb-4.18/include
GNUインクルード・ファイル
gdb-4.18/libiberty
-libertyフリー・ソフトウェア・ライブラリのソース
gdb-4.18/opcodes
opcodeテーブルおよび逆アセンブラのライブラリのソース
gdb-4.18/readline
GNUコマンドライン・インターフェイスのソース
gdb-4.18/glob
GNUファイル名パターン・マッチング・サブルーチンのソース
gdb-4.18/mmalloc
メモリにマップされるGNU mallocパッケージのソース
GDBの構成とビルドを行う最も簡単な方法は、 gdb-version-numberソース・ディレクトリからconfigureを実行することです。 ここでの例では、 このディレクトリはgdb-4.18です。

もしまだgdb-version-numberソース・ディレクトリにいないのであれば、 まずそこに移動してください。 続いてconfigureを実行します。 GDBが実行されるプラットフォームの識別子を引数として渡します。

例えば、 以下のようにします。

cd gdb-4.18
./configure host
make

hostは、 GDBが実行されるプラットフォームを識別する識別子です。 例えばsun4decstationなどです (多くの場合hostは省略することができます。 この場合configureは、 ユーザのシステムを調べることによって正しい値を推定しようとします)。

configure hostを実行した後にmakeを実行することで、 bfdreadlinemmalloclibibertyの各ライブラリがビルドされ、 最後にgdb自体がビルドされます。 構成されたソース・ファイルやバイナリは、 対応するソース・ディレクトリに残されます。

configureはBourneシェル (/bin/sh) のスクリプトです。 ユーザが別のシェルを実行していて、 システムがこのことを自動的に認識してくれない場合は、 明示的にshにスクリプトを実行させる必要があるかもしれません。

sh configure host

バージョン4.18のソース・ディレクトリであるgdb-4.18のように、 配下に複数のライブラリやプログラムのソース・ディレクトリを含むディレクトリからconfigureを実行すると、 configureは配下にあるそれぞれのディレクトリのための構成ファイルを作成します (--norecursionオプションによって、 そうしないよう指定した場合は別です)。 GDBディストリビューションの中の特定のサブディレクトリを構成したいだけの場合には、 そのサブディレクトリからconfigureスクリプトを実行することができます。 ただし、 configureスクリプトへのパスを必ず指定してください。

例えば、 バージョン4.18では、 bfdサブディレクトリだけを構成するには以下のようにします。

cd gdb-4.18/bfd
../configure host

gdbはどこにでもインストールできます。 あらかじめ固定されたパスは1つもありません。 ただし、 ユーザのパスにある (SHELL環境変数により指定される) シェルが誰にでも読み込み可能であることを確かめる必要があります。 GDBはシェルを使ってユーザ・プログラムを起動するということを憶えておいてください。 子プロセスが読み込み不可のプログラムである場合、 システムによっては、 GDBがそれをデバッグするのを拒否します。


Node:Separate Objdir, Next:, Previous:Installing GDB, Up:Installing GDB

異なるディレクトリでのGDBのコンパイル

いくつかのホスト・マシンおよびターゲット・マシン用のGDBを実行したい場合、 ホストとターゲットの個々の組み合わせ用にコンパイルされた異なるgdbが必要になります。 configureには、 個々の構成をソース・ディレクトリにではなく個別のサブディレクトリに生成する機能があり、 このようなことが簡単にできるように設計されています。 ユーザの使っているmakeプログラムにVPATH機能があれば (GNU makeにはあります)、 これら個々のディレクトリにおいてmakeを実行することで、 そこで指定されているgdbプログラムをビルドすることができます。

個別のディレクトリにおいてgdbをビルドするには、 ソースの置かれている場所を指定するために、 --srcdirオプションを使ってconfigureを実行します (同時に、 ユーザの作業ディレクトリからconfigureを見つけるためのパスも指定する必要があります。 もし、 configureへのパスが--srcdirへの引数として指定するものと同じであれば、 --srcdirオプションは指定しなくてもかまいません。 指定されなければ、 同じであると仮定されます)。

例えば、 バージョン4.18でSun 4用のGDBを別のディレクトリにおいて構築するには、 以下のようにします。

cd gdb-4.18
mkdir ../gdb-sun4
cd ../gdb-sun4
../gdb-4.18/configure sun4
make

configureが、 別の場所にあるソース・ディレクトリを使って、 ある構成を作成する際には、 ソース・ディレクトリ配下のディレクトリ・ツリーと同じ構造のディレクトリ・ツリーを (同じ名前で) バイナリ用に作成します。 この例では、 Sun 4用のライブラリlibiberty.agdb-sun4/libibertyディレクトリに、 GDB自身はgdb-sun4/gdbディレクトリにそれぞれ作成されます。

いくつかのGDBの構成を別々のディレクトリにおいてビルドする理由としてよくあるのが、 クロス・コンパイル (GDBはホストと呼ばれるあるマシン上で動作し、 ターゲットと呼ばれる別のマシンで実行されているプログラムをデバッグする) 環境用にGDBを構成する場合です。 クロス・デバッグのターゲットは、 configureに対する--target=targetオプションを使って指定します。

プログラムやライブラリをビルドするためにmakeを実行するときには、 構成されたディレクトリにいなければなりません。 これは、 configureを実行したときにいたディレクトリ (または、 そのサブディレクトリの1つ) です。

configureが個別のソース・ディレクトリに生成したMakefileは再帰的に呼び出されます。 gdb-4.18 (あるいは、 --srcdir=dirname/gdb-4.18により構成された別のディレクトリ) などのソース・ディレクトリにおいてmakeを実行すると、 必要とされるすべてのライブラリがビルドされ、 その後にGDBがビルドされることになります。

複数のホストまたはターゲットの構成が、 異なる複数のディレクトリに存在する場合、 (例えば、 それらが個々のホスト上にNFSマウントされている場合) 並行してmakeを実行することができます。 複数の構成が互いに干渉し合うということはありません。


Node:Config Names, Next:, Previous:Separate Objdir, Up:Installing GDB

ホストとターゲットの名前の指定

configureスクリプトにおけるホストおよびターゲットの指定方法は、 3つの名称部分を持ちますが、 あらかじめ定義された短い別名もいくつかサポートされています。 完全名は、 以下のようなパターンの3つの情報部分を持ちます。

architecture-vendor-os

例えば、 ホストを指定する引数hostとして、 あるいは、 --target=targetオプションのtargetの部分に、 sun4という別名を使うことができます。 これと同等の完全名はsparc-sun-sunos4です。 GDBに付属しているconfigureスクリプトには、 サポートされているすべてのホスト名、 ターゲット名、 および、 別名を問い合わせするための機能はありません。 configureは、 Bourneシェル・スクリプトのconfig.subを呼び出すことによって、 省略名を完全名に対応付けします。 このスクリプトを使って、 省略名の意味が推測と合っているかどうかをテストすることもできます。 以下に例を示します。

% sh config.sub i386-linux
i386-pc-linux-gnu
% sh config.sub alpha-linux
alpha-unknown-linux-gnu
% sh config.sub hp9k700
hppa1.1-hp-hpux
% sh config.sub sun4
sparc-sun-sunos4.1.1
% sh config.sub sun3
m68k-sun-sunos4.1.1
% sh config.sub i986v
Invalid configuration `i986v': machine `i986v' not recognized

config.subも、 GDBディストリビューションの一部としてソース・ディレクトリ (バージョン4.18では、gdb-4.18) に入っています。


Node:Configure Options, Previous:Config Names, Up:Installing GDB

configureオプション

以下に、 GDBをビルドする上でほとんどの場合に役に立つ configureのオプションと引数の要約を示します。 configureには、 ここには挙げられていないオプションもいくつかあります。 configureに関する完全な説明については、 see

configure [--help]
          [--prefix=dir]
          [--exec-prefix=dir]
          [--srcdir=dirname]
          [--norecursion] [--rm]
          [--target=target]
          host

そうしたいのであれば、 --ではなく単一の-でオプションを始めることもできますが、 --を使うとオプション名を省略することができます。

--help
configureの実行方法の簡単な要約を表示します。
--prefix=dir
プログラムおよびファイルをディレクトリdirにインストールするよう ソースを構成します。
--exec-prefix=dir
プログラムをディレクトリdirにインストールするよう ソースを構成します。
--srcdir=dirname
注意: このオプションを使うには、 GNU make、 あるいは、 VPATH機能を持つ他のmakeを使用する必要があります。
GDBソース・ディレクトリとは別のディレクトリに構成を作成する場合に、 このオプションを使用します。 特に、 いくつかの構成を別々のディレクトリにおいて同時に作成(かつ維持)する場合に、 このオプションを使うことができます。 configureは、 構成に固有のファイルをカレント・ディレクトリに書き込みますが、 dirnameディレクトリにあるソースを使うように、 それらのファイルを調整します。 configureは、 dirnameディレクトリ配下のソース・ディレクトリ・ツリーと同じ構造を持つディレクトリ・ツリーを、 作業ディレクトリの下に作成します。
--norecursion
configureが実行されたディレクトリ・レベルだけを構成します。 サブディレクトリまで含めて構成することはしません。
--target=target
指定されたターゲットtargetで実行するプログラムをクロス・デバッグするために、 GDBを構成します。 このオプションを指定しないと、 GDBと同じマシン (ホスト) で実行されるプログラムをデバッグするよう、 GDBは構成されます。

利用可能なすべてのターゲットの一覧を生成する、 便利な方法はありません。

host ...
指定されたホストhost上で実行されるようGDBを構成します。

利用可能なすべてのホストの一覧を生成する、 便利な方法はありません。

ほかにも利用可能な多くのオプションがありますが、 これは通常、 特殊な目的にのみ必要とされるものです。


Node:Index, Previous:Installing GDB, Up:Top

インデックス

Table of Contents


Footnotes

  1. 原注:フォーマット文字bは使用できません。 フォーマット文字はxコマンドでも共通して使用されますが、 xコマンドでは、 bはbyteの省略形として使用されているためです。 See Examining memory

  2. 原注:これは、 スタックがメモリの下位方向に伸長するマシン (最近のほとんどのマシンがそうです) 上において、 スタックから1ワードを取り除く方法です。 これは、 最下位のスタック・フレームが選択されていることを想定しています。 これ以外のスタック・フレームが選択されているときには、 $spに値を設定することは許されません。 マシン・アーキテクチャに依存することなくスタックからフレーム全体を取り除くには、 returnを使用します。 See Returning from a function

  3. 原注:他のサービスによって使用されているポート番号を選択すると、 gdbserverはエラー・メッセージを出力して終了します。

  4. 訳注:GNU Emacs 19 マニュアル(星雲社)の「ニューメリック引数」、 GNU Emacs マニュアル(共立出版)の「数引数」に、 日本語訳があります。

  5. 訳注:この日本語の翻訳マニュアルへの改善提案は、 ki@home.email.ne.jpに送ってください。

  6. 訳注:この日本語の翻訳マニュアルのバグは、 日本語(か英語)で、 ki@home.email.ne.jpに報告してください。

  7. 訳注: ベル音を鳴らす代わりに、 画面表示をフラッシュさせることを表わしています。

  8. 訳注:空白(スペース)、 水平タブ、 改行、 垂直タブ、 フォーム・フィード

  9. 原注:バージョン4.18ではgdb-4.18/gdb/refcard.psです。